「卒業させること」が、僕の仕事じゃないんです。- ECC学園高校京都学習センター教員 小林純

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D×Pが通信制高校で行っているプログラム「クレッシェンド」。
 
「クレッシェンドをうちの生徒たちに受けさせたい!」と、その高校の先生が思って下さり、様々な学内調整を行うことで、授業が成立します。
 
どうして、先生方はクレッシェンドを
高校生に受けさせたいと思ってくださるんだろう?
 
先生は、ふだんどんな思いで
通信制高校に通う生徒たちと関わっているんだろう?
 
今回は、D×Pが任意団体だったころから、「クレッシェンド」を導入し続けてくださっている、ECC学園高校京都学習センターの小林先生に、お話をうかがいました。
 
 
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※クレッシェンドの様子を見守る、小林先生 (写真右奥)
 
 
 
「ここ(通信制高校)は特別な世界やな」って思いました。
 
 
 
— 今日はよろしくお願いします ! 
 
小林 : 
ECC学園高校京都学習センターの小林純児です。よろしくお願いします。
 
 
 
 — いつもありがとうございます ! いろいろお聞きしたいことがあるんですけど・・・まず、よかったら、「なんで先生になったのか?」ということを教えていただけませんか?
 
小林 : 
・・・えっ ! 僕の話していいんですかね?わかりました !
 
 
小林 : 
僕は、はじめから教員を目指していたわけではなくて、大学卒業後、企業に就職して営業の仕事をしていました。仕事は休みがなくて大変だったけど、それはそれでやりがいがあったし、人にも恵まれて楽しかったです。
 
でも、何年か勤めるうちに、「ずっとこのままでええんかな?」と思い始めて。
僕は幼稚園から高校まで野球に明け暮れていたことがあったので、「高校野球の指導者になって、今度は指導者として、甲子園を目指す」のも良いんじゃないかなと、思うようになりまして、会社を辞めて、先生になることを決めました。教員免許は持っていなかったのでほんまにゼロから教職課程を取りに、出身大学に戻りました。それが26歳のときです。
 
その頃、たまたま僕の高校時代の野球部のキャプテンが、ECC高等学院(のちのECC学園高校)で、常勤講師として働いてたんです。その人から「お前いま先生目指してんのやったら、アルバイトで(ECC高等学院に)こーへんか?」って、連絡があったんです。
「ECC高等学院にはいろんな子たちが居てるから、いい勉強になると思うで」って言われて。「何したらええの?」って聞いたら、「ただ生徒と関わるだけや」って言ってて。「あーそうなんや、それなら自分にも出来そうかなーほな行くわ。」と、ECC高等学院に行くことにしたんです。
 
 
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— ECC学園高校の生徒との出会いは、どんな感じだったんですか?
 
小林 : 
………ガツーンと頭を撃たれたようなイメージですかね…。
今まで僕が生きて来た世界っていうのは、「フツーの世界」なんですよね。幼稚園から高校までは野球に明け暮れて、大学では遊びほうけて…。でも、このECCに来た時に「特別な世界」やなと思いました。いろんな子がいてて、自分が今まで体験することのなかった世界で、で、どういう風に接して行ったら良いのか、どういう風に喋って行ったらいいか分からなくて・・・。
 
でも、ハマってしまったんですよ !
 
しんどい子とか、不登校の子とか、発達障がい抱えている子とか、そういう高校生を間近で見ていると、彼らの成長をすごく感じるんですよね。高校生と会うたびに、「この、しんどい子たちのサポートを、ずっとしていければなぁ…」って思ったんです。「あーもう、僕、この仕事続けて行きたい ! 」って。「野球の指導者になる」っていう夢は、だんだんクールダウンしていきました。
そのあと、教員免許を取得して、社員として正式にECCに入社しました。今に至ります。
 
 
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頑張れないことは、幸せじゃない。
 
 
 
 
 — 高校生とかかわるなかで、小林先生が大切にしていることってなんですか?
 
小林 : 
うーん…「頑張れる力を付けさせる」ことですかね。
4〜5年前くらいまでは生徒が「しんどいしんどい」って言ったり「そんなん出来ひん」と言ってても、「大丈夫か?休んどけー」って感じで、甘やかすような関わりをしていたんですよ。
僕は段階があると思っていて、1年生のときはここ(ECC)が居場所になったらいいと思うんですよ。いろいろ抱えて来てて、しんどい思いをしてる。その中で、ゆっくり力をつけていけるような場所になったらいいなって。
2年生はチャレンジの年やと思うんです。バイトするとか、課題に取り組んでボランティアするとか、資格取るとかね。
3年生になったら、やっぱり進路をしっかり考える段階だと思うんです。
 
でも、僕は4〜5年前までずっと、3年生に対しても、1年生みたいな関わりをしてたんですよね。僕はそういうことが「(生徒に)寄り添う」っていうことだと思っていたんです。
 
生徒からしたらそういう関わりをする先生と接するのは楽やし、その時は「あーよく理解してくれる先生」って思うかもしれへん。でもやっぱり、それだと頑張る力を身につけていけない気がするんですよね。
 
生徒たちが通信制高校を卒業して進学して、その後を見ていると、その子たちが、「頑張れない」ことに気づいたんです。なんか嫌なことがあったら逃げてしまう、しんどいことあったらもう嫌やってなってしまう、自分の思い通りにならんかったら、もう学校行かんくなってしまう…とかね。
結局、壁を乗り越えられずに、また引きこもってしまったり、不登校になってしまう。僕、そういう子たちを、何人も見て来たんですよね。ほんまに、そういう卒業生を、もう見たくなくて。
 
僕は「頑張れないことは、幸せじゃない」って思うんです。高校は卒業できたけど、次のところで頑張れないっていうことは幸せじゃないって思ってる。そういう風に考えが変わったんです。
 
 
 
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卒業させることが、僕の仕事じゃないんです。 
 
 
 
 
小林 : 
卒業生に対して申し訳ない気持ちがいっぱいあります。「なんでもっとちゃんとした指導をしてあげられんかったんやろ」って、今もすごい後悔して、反省してて。だから、無責任に卒業させるのはしてはいけないなと思っています。
 
通信制高校は「卒業するのが目的」ではあるんやけども、「次のステップアップ先とか、進路先で継続して頑張って行く力をここで身につけなければ意味がないな」って思っています。
だから、いまは3年生の子たちには、厳しめのことを言ったりとか、課題に取り組ませたりとかしていて、それが出来ない子たちには、推薦書(大学入試に必要)を発行しなかったりとか、ね。
 
卒業させることが、僕の仕事じゃないんです。
生徒からしたら、「同世代の子たちと一緒に卒業したい」という気持ちがあるかも知れんけど、社会に出たら歳なんか関係ないし。
僕が1番大切やなって思ってることは、「自分が好きって思える仕事、やりがいのある仕事に就けるかどうか」だと思ってるんです。それは、何年かかってもいいと思うんです。僕がそうであったように。
僕はいまこの仕事が出来てほんまに幸せやし、良かったなぁって思ってる。
周りからしたら、「遠回りしたな」とか言われるけど、僕はそうやって1回社会に出たからこそ、自分のやりたいことに気づけたし、価値観も変わった。僕は転職を何回してもいいと思ってる。そのなかで、自分のやりたい仕事が見つかったらいいと思うんで。
 
 
 
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※クレッシェンドの様子を教室の入り口から見守る (!?) 小林先生。
 
 
 
はじめ、僕はD×Pに嫉妬したんですよ(笑) 
 
 
 
 
 — ECC学園高校でのクレッシェンドも、今年で5年目 (D×Pが任意団体だった頃も含めて) になりますね!小林先生はずっと「クレッシェンド」をそばで見ていてくださっていますが…、ぶっちゃけ、「クレッシェンド」は小林先生の目からみてどうですか?
 
小林 : 
いやぁ・・・もう、僕は、D×Pのクレッシェンドを一生続けていきたいです。
 
生徒からしたら、「年代的に、お兄さんお姉さんみたいな人と話が出来る」っていうのが1つ、大きなポイントじゃないですか。なんでも相談聞いてくれる人と出会える。
だからはじめ、僕はD×Pに嫉妬したんですよ(笑) 先生にはしないような話を、高校生がD×Pのコンポーザーに喋ってたりとかする姿を見て。最初は「俺ら先生たちの方がすごいし ! 」って思ったりもしました。でもそれは違う。生徒からしたら、先生だからこそ、知られたくないこともあるやろし。
 
生徒が自分の悩みを相談出来る人は、誰って決めつけなくていいのかなって思うんです。生徒が元気になる場所は、どこの場所でも良い。「ECC学園高校の中だけで、元気にしたい ! 」ってこだわってた時もあったけど、そうじゃなくて、バイト先でも、クレッシェンドでも、どこでも良いじゃないかって思えるようになって。
あとは、クレッシェンドでコンポーザーの失敗体験談を聞けるのが良いなぁって思ってます。生徒がコンポーザーの過去の話を聞いて、「いま元気そうにやってる人でも、昔こんなことがあってんや。僕より辛いやん ! 」みたいな気付きをしていると思うんです。「失敗しても良いんだよ、失敗なんて当たり前 ! 」っていうのが、しっかり子どもたちに伝わってると思います。
 
 
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叱っていいのは、信頼関係が出来てから。
だから、それは「先生の役割」だと思う。
 
 
 
 
 — ちょっと、悩み相談しても良いですか?クレッシェンドで高校生と関わっていて、「ここはちょっと強く言うべきなのかな?」と思うことがあるんですけど、それって、私たちの役割なのか、迷うことがあるんです。
 
小林 :
あーなるほど ! これって、難しいよね。
僕らも、入学して来てすぐの子たちは叱らへんねやんか。それはやっぱり、信頼関係が出来てないから。
で、叱っていいのは、信頼関係が出来てから。だから、それは「先生の役割」だと思う。
でも、素直に思ったことを伝えてあげていいと思う。クレッシェンドは、叱るんじゃなくて、「でも俺はこう思う」みたいな感じで伝える、対話の場やと思ってる。
 
 
 
 — D×Pのスタッフやコンポーザーにとっては、クレッシェンドの全4回の授業が終わったあと「あの子にとってこのクレッシェンドってどうやったんやろう?」とか、分からなくて不安になることがあります。先生から見て、クレッシェンドを受ける前と受けたあとで、「あの子変わったなぁ〜」とか思うことって、ありますか?
 
小林 : 
あるある ! めっちゃある。 
生徒がクレッシェンドに1回1回行くたびに、顔が変わったなぁとか、発言が増えたなぁとか、感じることはよくありますよ。僕はすごい感謝してるし、ありがたいなぁと思ってます。
 
本当は、そういった生徒の変化をまとめた報告書を作って、D×Pのみなさんにお渡ししたいくらいなんですけど、僕、そういうの作るのがすごく苦手なんです。なんとなく分かるでしょ?(笑)
 
だから、もしコンポーザーのみなさんのお時間が空いてるんやったら、
クレッシェンド終わったあと、いつでもECC学園高校に来てほしいなと思います。僕、時間つくるんで、ぜひ直接お話させてください! 
 
 
 
 
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高校生に対しても、私たちD×Pスタッフに対しても、とても気さくに接してくださる小林先生。これからも、こうした先生方と協力して、私たちは私たちの役割を果たしていきたいなぁと思います。
 
 
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高校生と関わる大学生・社会人ボランティア「コンポーザー」については、こちらから !
あわせてお読みいただけるとうれしいです♪

 

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