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D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×スタッフ

安心は食事から。「手づくり」に込めた思い

D×Pでは2023年6月から大阪ミナミの繁華街、グリ下と呼ばれる付近に、ユースセンターを開設しています。グリ下には、家や学校に居づらい若者たちが居場所を求めて集まっています。なぜユースセンターをつくることになったのかは、以下の記事をご一読ください。

D×Pでは「子どもたちにはごはんを食べる寝るなど生きる上で当たり前に行なわれること、文化的な経験があることが重要だ。そして自分の意見・権利が尊重される経験も必要だ」と考えています。

このような経験ができるユースセンターで、食事のメニューを決めているスタッフがそうしさんです。そうしさんには過去に食糧支援、ユキサキ便のスタッフインタビューもしています。

現在そうしさんはユースセンターでどのような思いで若者たちと関わり、食事をつくっているのでしょうか。お聞きしました。

さまざまな仕事を経てD×Pへ

──D×Pと関わり始めたのはいつですか

4年ぐらい前、ユキサキ便(全国の生活困窮する若者に送る食糧支援)の業務委託のお話がありました。今井さん(D×Pの理事長)のお話をウェブで見て活動内容を知って、興味を持ちました。それまではNPOって全然関わりがなかったのですけど、今井さんの言っていることにすごく共感できて。必要なことをやっているなと思ったのでお手伝いしたいと思いました。

──その時はどのような生活をされていたんですか

D×Pで働く前は大阪で写真と動画の仕事を2年間くらいやっていました。もともとは大阪芸大の写真学科を経て、写真家の方について東京に住んでいたこともあります。何でもないような日常の風景とか、スナップ写真を撮っていました。その後、映画の大道具をやっていたこともあって。映画をつくるために地方に泊まり込みで、1、2ヶ月行くんです。朝から夜まででめちゃくちゃ大変でした。

大阪の前は京都にいました。その時は古物商をしていました。骨董商の師匠さんがいるんです。その人と一緒に空き家をリノベーションして、半年以上かかってお店を開いたんです。オープンして1年で潰れちゃいましたけど。

以前そうしさんが京都の桂川で撮影した写真

──面白い経歴ですが、D×Pに参加したきっかけは

D×Pの業務が拡大していた時期、スタッフが足りないと、一緒に映像をつくっていた友達のみっちーくんに紹介されて。最初は週1回、D×Pの食糧発送の仕事をやっていました。そのうち、大阪ミナミの若年層が集まる場所でフリーカフェ事業が始まったんです。その時はテントや荷物を運ぶ仕事をしていました。また、準備と片付けに加えて警備の仕事もをしていました。

来ている子たちの揉め事とか喧嘩とかというよりも、酔っ払いの人が「何してんだ」みたいな感じで来るんです。トラブル対応です。そのうちユースセンターでも仕事をするようになりました。

フリーカフェはD×Pが2022年8月から開始した活動。大阪ミナミには、家庭に居場所がない若者が集まる通称グリ下(グリコ看板の下)がある。スタッフが若年層が集まる場所にテントを立て、お菓子や飲み物、生理用品やコンドーム等の無料配布を行ないながら、若者と対話し、つながりをつくった。ユースセンターの前身となる活動。

ご飯を手づくりする理由

今はユースセンターで出しているご飯のメニューを決めてます。あとは紙コップや持ち帰り用のレトルト食品などの備品の購入とかチェックも。最初はレトルトのカレーを中心に、簡単なものを20人くらいに提供しようっていう想定だったんです。でもせっかくカレーにするなら手づくりがよいなと思って、つくるようになりました。

ユースセンターで提供しているカレー

今ユースセンターは週2日開けてますけど、そのうちの1日はカレーに決めてます。曜日感覚的なもので、土曜日だからカレーだ。カレー食べたいから行こうかな、ぐらいの感じで来てくれたらうれしいなと思って。もう1日はカレーじゃないものにしています。

やっぱり食べ物を知らない子が多いんです。例えばタコライスを出したことがあるんですけど、「タコライスって何?」っていうことになったり。いろんなご飯があることを知ってもらいたいと思って、提案しました。

──レトルトを出すのではなく、手づくりすることになったのはどうしてですか

以前、福岡にいた時に台湾料理屋さんで働いていた経験があったので、レトルトじゃなくてちゃんとつくったものを出したいなと思ったんです。ちっちゃいお店だったんですけど、台湾人のおばちゃんと2人でタピオカとかルーロウハン、肉まんもつくっていました。タピオカは栄養もあるしカロリーもあるから、センターで出してもいいかなって思っています。僕が食品衛生士の資格を持っていたので、料理をつくってもらえるなら衛生管理のこともやってほしいということで、今はそれもやっています。

また、今はリクエストを聞いてつくっています。麻婆茄子が食べたいっていうことだったら、苦手な子もいるので豆腐とナスを準備して両方出せるようにします。リクエストはスタッフから聞いたり、キッチンに遊びにくる若者から僕が直接聞いたりしていて。できるだけ取り入れたいと思っています。

ユースセンターで働いて改めて気づく、食事の大切さ

ユースセンターで働いていると、やっぱり食事の大切さを感じます。食べてないことがすごく悲しいなって。

ある時すごい揉めてる男の子たちがいたんです。言い合いをしているなかで、一方の男の子がスタッフに「俺のカレーまだ来てないやんけ」って言ってたんです。その時、気が立っている背景にはお腹が空いていることもあるんじゃないかと思いました。それでカレーを出したら、ちゃんと落ち着いて食べてたんですよね。やっぱりご飯を食べないと気持ちも下がるし、元気がなくなりますよね。

ユースセンターでギターを弾くそうしさん

実際ユースセンターでは、食べた後に寝ている子や踊っている子もいます。食べたことで元気になっているのを見るのは、うれしいですよね。何も食べてないっていう子もいますけど、タバコやお酒を買うお金はあったりする。食事よりタバコやお酒を優先するに至った、本当にさまざまな背景があるんです。そのなかで、できるだけ美味しいものを提供していっぱい食べてもらうことが、僕のできることかなと思っています。

私たちが出会う若者は、たとえば親に食事を出してもらえなかったり、大人や周囲に否定されてきたり、誰かから大切にされた経験をしてこなかったなど、さまざまな背景があります。誰かから必要とされたい、自分を認めてほしいと、周囲となじむためにタバコを吸ったり、お酒を飲む若者もいます。

──ユースセンターでびっくりしたのが、「ごちそうさまでした」って言ってる人がとても多いことでした

そうなんですよね。「ありがとうございます、美味しかったです」とか、お店ではなかなか言わないことを言ったりもします。それと食事の時って子どもに戻ってる感じなんです。「今日のご飯何?」「ご飯ちょうだい」とか、甘えるように来てくれたり。

やっぱり食事は家庭の記憶も強いでしょうから、その時に怒られた思い出とかトラウマが、そのままご飯の好き嫌いにも関係してくるんじゃないかと思っています。最初に美味しくないものに当たったらもう食べられなくなったりするように、気まずい雰囲気のなかで食べたものはもう食べたくなくなったりします。

反対に、今まで嫌いだと思っていたものを楽しい雰囲気で食べたことで、「あ、食べれた」っていうこともあったりして。 昨日もピーマンが入っていた料理があって「私、ピーマンは食べれない」って言ってた子が、料理を出したら「これだったら食べられるわ」って言っていました。こちらとしては、「別に嫌いなら横に避けといて無理することはないよ」って言うんですけどね。

それと「玉ねぎ嫌いだけど、私、頑張って食べるよ」みたいに言ったり、わざわざ目の前で食べる子もいたりして、「そんなに無理しなくていいよ」とは思うんでですけど、そういうところが見られるのは、やっぱり食事は大事だなと思いますね。

──確かにシチュエーションと食事って結びついていますよね

そこに関するトラウマがある人って結構多いと思うんです。便所飯ってよく聞きますけど、美味しく食べれるわけないじゃないですか。でもあの環境じゃないと食べられないっていう子がいるということは、居場所がなかったり、環境的なトラウマが原因なんじゃないかって思います。お金がないことも問題なんですけど、食べるものがないっていうのが1番心配で。

ユースセンターで提供した豚バラ白菜鍋
(メニューは他にも色々。中華丼とたまごスープ、炊き込みご飯と豚汁、目玉焼きのせ豚キムチ丼とワカメスープ、牛すき焼き丼と椎茸の含め煮、キクラゲの酢の物など)

ご飯を食べると安心する

食べるものがあって、その後に屋根がある場所がいいとか、そういう順番だと思うんですね。最初にお腹が空いたっていう状態が続いてしまうと、絶対に安心することができない。おいしいご飯を食べて安心して、その後にゲームできたり寝れたりできる。しかも酔っ払いが来たりとか、大人が来たりとかして、排除されない場所が重要なんです。

だからテントで若者と接していた時より、今センターで接している時の方が彼らの子どもっぽい側面をみることがあります。警戒心がだいぶ和らいでいるんです。テントの時は観光客とかいろいろな人からの目がありました。それがなくなった途端、こんなにも変わるのかって驚いています。

テントの時、僕はガードマンだったからたぶん怖かったと思うんですけど、センターでご飯つくって出すようになったら「そうし、今日のご飯なに?」みたいな感じで、フランクに声をかけてくれるようになりました。

この前ネギが嫌いな子がいて、ご飯を提供する時に「あ、ネギ嫌いだったね」って言ってネギを抜いたものを出したんです。そしたら「え!覚えててくれたの?」って、見たことのないような明るい表情になって。こういう時は嬉しいですよね。そういう風にして、できるだけ苦手そうなものは取り除いたり、食べやすいようにしてはいるんですけど、そこが難しいとこで。例えばナスが嫌いな人が多いから、ナスの料理を出さないようにしてしまうのは、逆に彼らの選択肢を狭めることになってしまう。むしろいろんな機会を提供して、それをどう受け止めるかっていうのをみんなに考えてもらうことが大切だなと思っていて。

──仕事をするなかで、そのような考え方になってきたのでしょうか

そうですね、D×Pと関わるなかで福祉にも興味が出てきて、いろいろ勉強することは増えました。元気な人と病気の人とか、男と女とかもそうだと思いますけど、線引きってされやすいですよね。病院に行くと医者と患者だし。どうしても対等な関係じゃないから、できるだけセンターでは対等な関係でいたいですよね。

センターに来る子でもヘルプマーク※をつけてる子がいたり、家庭や学校に居場所がなかったりする子も多いと思います。SNSがこれだけ流行っている今の時代に自分が生まれていたら、ちょっとしんどすぎるなって思います。でも僕の思いを投影して、みんなしんどいなかで無理して生きているって思いすぎるのも違うんでしょうね。

※ヘルプマークとは赤色の下地に白色のプラスマークとハートが書かれたデザインで、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など「外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々」が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで援助を得やすくなるよう作成されたマークのこと。

我々が勝手に想像するのも違う

しんどいことはしんどいのかもしれないけど、我々が勝手に想像して「しんどいでしょう」っていうのも何か違う。彼らが生きやすい場所を選んだ結果、センターにたどり着いた。彼らは彼らで楽しいことを見つけているんだろうなと。自分にとって楽しいことを探していたらここに来ちゃっただけで。

でも繁華街で被害に遭うこともあるし、そういう危険性もあるけど、刺激を求める年齢でもあったりする。承認欲求の出し方も、今の時代と僕らの時代では変わってきてます。SNS上の自分と、実生活の自分が乖離してしまって、自分のなかで混乱していることもあるかもしれない。

以前そうしさんが撮影した写真で、大阪十三のホテルのロビーに展示されていた

最近、ユースセンターで写真の企画を始めました。日常の好きな時間、場所、ものなどのテーマを提案し、「写ルン」で撮影してもらい、出来上がった写真をセンター内に展示するというものです。後々、二十歳のころの写真が全くないっていうのは、僕としては寂しいんですよね。僕がもともと写真をやっていたことが関係していると思うんですけど、思い出とか記録ってあった方が人生が豊かになるかなって個人的には思っています。他の人はどうかわからないんですけど。

褒められて悪いことなんてない

僕は10代の時に引きこもりだった経験があって。でも大学に進学して、写真のお師匠さんにすごく褒めてもらえたんです。それがすごく嬉しかった。それまでは先生とかに下手だとか言われてきたんですけど、すごく褒めてくれて、認めてくれた。いいところを伸ばしてくれる人の存在ってやっぱり重要だなと。自分をそうありたいし、人を腐すような人間にはなりたくないと思ってます。 褒めて悪いことなんてないですから。

それで写真の企画を始めたんですけど、ユースセンターではちょっとキッチンに入り浸っていてなかなか余裕がないのが残念なのですが。

──そうしさんの今までされてきたことが、全部詰め込まれてますね

そうですね。センターには本当にさまざまな若者が来ていて、なかにはすごくハードな背景をもった子もいます。今はハードじゃなくても、これからハードになる可能性がある子も多いだろうと思うんです。そうなる前に、もしくはそうなった時に、普段からご飯を食べに来てくれたりしていたら、関係性ができていますよね。そうしたら、何かある前段階で相談してくれるかもしれない。

自分が困っていても、相談できない人って絶対いると思うんですよね。自分もそういうタイプなので。自分としては困ってないって思っていても、外からみたらそれはヘルプを出さなきゃいけない状況かもしれないし。そういう関係性を築いていけるといいなって思っています。

インタビュー・執筆:青木真兵/編集:熊井かおり

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