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D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
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ごはんを通じて関わりを作っていく。D×Pの食糧支援、ユキサキ便が10代の手に届くまで。

2021年度、D×Pが困窮する10代に届けた食糧支援は合計47,040食。508名の手元に届けました。目の前の生活が不安でも「ひとまずごはんを食べて」という気持ちで食糧支援を続けています。

このサポートの対象となるのは、15歳〜25歳の若者たち。さまざまな理由で親に頼れず暮らしている人です。1箱には約30食(2週間分)、入れる食品はお米、レトルトカレー、パスタ、パスタソース、焼き鳥やおかずの缶詰、フリーズドライのお味噌汁などです。

食糧支援とは? 
保護者に頼れず困窮する10代が、一時的に安心できる環境を整えるために実施しています。食糧支援のほか、現金給付も実施しています。ユキサキチャットでの継続した相談サポートと食糧や現金での支援を掛け合わせ、福祉制度につなぐなど相談者が他にも頼れる先を増やしていきます。2022年4月からはコロナの影響を受ける若者を長くサポートするため、ユキサキ支援パックとして1年間継続支援ができる体制をつくっています。

選択式のアンケートを送り、生理用品や歯ブラシなどの日用品の有無や、自宅にある調理器具について尋ねてひとりひとりに合わせて中身の変更も行なっています。発送個数は増え続け、現在では週に30箱(900食)ほど送ります。今回は、食糧支援を支えるスタッフに話を聞きました。

D×P職員:たまさん(玉井:左)、食糧支援スタッフ:そうしさん(中央)、みっちーさん(右)

まだまだ利用したい人はいるんだろうと、必要とされていることを感じます。

まずは、食糧支援の仕事を委託しているみっちーさんとそうしさんに話を聞きました。

D×Pスタッフ:どんどん発送個数が増えていますが、どんなふうに感じていますか?

みっちーさん:2021年の8月頃から関わっていますが、その頃は10〜20箱で軽作業という印象でした。いまは、肉体労働という感じになってきています。多いと言ってもそんなに多いというふうには思っていないです。まだまだ利用したい人はいるんだろうと、必要とされていることを感じます。

2021年度には、3ヶ月間で21,840食の発送。一箱あたり30食なので、728箱になりました。

そうしさん:僕は、この仕事を始める前に一度見学に来たことがあります。そのとき、若い女性が事務所にいて、一緒に作業を手伝ったんです。最後に「いつもありがとうございます」って言われて、あとで尋ねると食糧支援を利用している相談者の方でした。自分の仕事の先には彼女のような人がいる。こういう方に届けられるんだなと思いながら仕事しています。

みっちーさん:僕は、自分自身が10代、20代のときにいろいろと大変でした。現在は、精神障害や発達障害を持っている方が集まるバスケットボールチームに参加しています。僕の周りにも、さまざまな理由で生活に不安を抱えている人がいます。僕自身も当事者なので、似た悩みをもつ存在として相談を受けたり、役所に同行したりもしてます。この仕事も「困っている10代に食糧を届ける仕事」だと知り、手を上げました。

ひとりひとりに合わせたカスタマイズ

D×Pスタッフ:通常の食糧支援のセットから中身を変更したコロナ療養セットについてたくさんの反応をいただきました。このセットに関してもお二人の発案で実現したと聞きました。どんなふうにこのセットができたんですか?

そうしさん:その時は、「コロナに感染されていて、急いで食べ物を送りたいから1箱追加で準備してほしい」と依頼がありました。それを聞いて、ゼリー飲料やドリンクが多いほうがいいんじゃないかとふたりで考えて。

みっちーさん:もともとtwitter(ツイッター)などで情報を追っていたんです。感染された方が役所から送られてきた食品の写真をアップしているのを見たり、そこについているコメントなども。自分の経験でも40度近い熱が出たときには、栄養ドリンクのようなものがありがたいなというのがあって。それで提案したんです。

みっちーさん:D×Pの食糧支援は、とてもきめ細かいなと感じます。アレルギーとか、苦手なものなどにひとつひとつ対応している。作業するときは、確認して抜き出さないといけないので大変だけど、確実にひとりひとりに届くという実感があります。

D×Pスタッフ:そういう作業のひとつひとつがユキサキ便や相談員への信用につながっていくので、ありがたいです。効率よくやるなら同じものを入れる方がいいと思うのですが、ひとりひとりに合わせていることで「あなたのことを気にかけているよ」ということが伝わるといいなと思います。

みっちーさん:そうですね。尋ねることで相談者さんと話が広がるとも思います。食べ物の好みとかも個性が出ますし、アレルギーがあるんだとか、嫌いなものとか、話のきっかけになるんじゃないかなと。

リストをみながら、入れ替える作業をするみっちーさん

鬱(うつ)のときは事務的な連絡も取れなかったりする。受け取る方の気持ちも想像しますね。

D×Pスタッフ:ほかにも、工夫されたことなどありますか?

そうしさん:ギリギリに発送個数が増える場合があるんです。できるだけ対応できるように、最初から予備のセットをいくつか用意するようになりましたね。

みっちーさん:僕も当事者なので経験があるのですが、鬱(うつ)のときは事務的な連絡も取れなかったりするんですよね。だから、ギリギリに連絡があることもそういうものだろうなと思います。受ける方の気持ちも想像しますね。

D×Pスタッフ:食べるのもしんどいときは、連絡するどころじゃないですよね。

みっちーさん:でも食べなかったらエネルギーが出ないからどんどん動けなくなるし、胃が小さくなってさらに食べられなくなってくる。ヘルプの声も出せなくなるので、まずは食べ物からというのはすごくいいと思います。

僕たちが作業をするときは、いつも昼の12時ぐらいに焼き鳥の缶詰を並べ始めるんです。美味しそうだなって思うんですよね(笑)D×Pの食糧支援は、いろんなものが入っているし、お腹空いてたら食べたいという気持ちも生まれるんじゃないかな。

受け取れてよかったな、うれしかったなって気持ちが、次の相談につながっていく

次は、ユキサキチャット事業部の職員たまさん(玉井)に話を聞きました。

D×Pスタッフ:D×Pの食糧支援が大切にしていることはどんなことですか?

たまさん:「ごはんを送って終わりではなく、ごはんを通じて関わりを作っていく」ということを大切にしています。ある相談者さんから、「他団体からも食糧の支援を受けたことがあるけれど、そのときは災害用のアルファ米でちょっと食べにくかった」「いただいたもののなかに賞味期限が切れているものがあったのだけど、文句は言ってはいけないと思っていた」という声を聞いたこともあります。

受け取る相談者さんが過ごしているのは「日常」なので、普段の暮らしの中で目にするようなものを送ります。受け取れてよかったな、嬉しかったなって気持ちが、次の相談につながっていくんじゃないかと思います。だから、アレルギーや食べれないものも聞くし、持病で食べられるものが少ないという人には現金に変更するなど、ひとりひとりの事情に寄り添うようにしています。

希望があった場合すぐにお送りできるように生理用品、シャンプー、歯ブラシなど日用品のストックも準備しています。

ご飯を送ってくれたからまだ頼ってもいいんだなって思った。

D×Pスタッフ:ごはんが次の相談につながったエピソードはありますか?

たまさん:「もうどこにも頼らない方がいいと思って、最後に連絡しました」という、メッセージが届いて。状況を尋ねると、ヤングケアラーの状況にある10代でした。学校、バイト、家族のケア、家のことなどでいっぱいいっぱいになっているようでした。まずは、1箱すぐにごはんを送ろうと決めて、送ったんです。その後、「ユキサキチャットは、ごはんを送ってくれたから。自分はまだ頼ってもいいのかと思いました」と連絡がありました。やりとりを続けると学費が足りず、このままいくと学校を辞めざるをを得ないという状況にあることを聞きました。現金給付で補える範囲だったので、すぐ給付を決定しました。ごはんを届けることができたからこそ、つながり続けることができました。

D×Pスタッフ:頼ってもうまくいかなかった経験が多かったり、我慢を続けるしかなかったり。いろんな背景があって、それでも「最後に」と頼ろうとしてくださっている方がいるんですね。

たまさん:連絡してくださる方は、ごはんが食べれていない人もいるし、稼ぎが減ってしまって生活が立ち行かなくなりそうな人もいる。食糧支援で「ごはんが確保できている」ということが安心感につながっているという声も聞いています。いろんな不安を抱えている人とのコミュニケーションのひとつとして、これからもごはんを届けていきたいと思っています。


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