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「困っているように見えなかったと思うんですが、数十円の麺ばかり食べてました」食糧や現金の緊急支援からひとりひとりのユキサキへ

2021年の夏。ユキサキチャットでつながった20代の女性がいます。若菜さん(仮名)は、児童養護施設で育ちました。社員寮がある会社で働いていましたが、体調を崩してしまい退職。アルバイトで生活費を稼ぎひとり暮らしを始めたところ、ほどなくしてコロナの影響で思うように稼げなくなりました。(※写真は、最近の若菜さん)

困っているように見えなかったと思うんですが、数十円の麺ばかり食べてました。

「周りからは困っているように見えなかったと思うんですが、ユキサキチャットに相談したときは数十円の麺ばかり食べてました。
野菜も卵も高いから」

飲食店のアルバイトは、コロナの影響を受け給料は1ヶ月で8千円ほど。1万円を超える月はほとんどありませんでした。アルバイト先に行くためのバス代は往復1,000円ほど。交通費のために節約し、別のアルバイトに応募するための履歴書も買えない状況でした。

親とは数年、話をしていません。「連絡をとれないわけではないけれど、社員寮から引っ越したことも電話番号を変えたことも言ってない。施設にいる間は、職員さんがクッションになってくれてたけど、ちょっと…ね」

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家族に頼れず、福祉制度に申請しようとしたことがあります。その時は、直近の収入が収入基準金額より1,000円高くて受理され
ませんでした。その後もう一度申請しようと役所に向かいましたが、なかなか給付まで至りませんでした。

「私、パパ活やブルセラ※もして、お金を確保してて。サイトを通してお金が振り込まれるので通帳に履歴が残っちゃうんです。『この収入は何ですか?』と訊かれたとき、素直にブルセラだと言っちゃったんです…。役所の方は『ブルセラは犯罪みたいなもの。そういったことをしている人に行政がお金を渡すことはできない』って。私もブルセラが綺麗なものじゃないってのはわかってる。だからそのときは納得したんですよ。家に帰ってから、ユキサキチャットで『再申請に行ってみたけど、犯罪みたいなものと言われちゃいました』と伝えました」

※ブルセラとは、女子高生などが着ていた体操着(ブルマー)やセーラー服の略。制服の他、下着、靴下、など着用済みの衣類を販売すること。専門のネットサイトなどが存在する。※特定の職種や収入先によって公的支援が受けられないという対応は間違いです。

コロナ禍で仕事を失った女性は多い。パパ活やブルセラサイトでお金を工面したという声は若菜さんだけではありません。「しなくていいなら、したくない」そんな言葉を聞いています。

「ユキサキチャットの相談員さんは、役所の方の対応にすごく怒ってくれて。びっくりしたんですよ。他の市町村で働く方や知り合いの社会福祉士さんにも(この対応が正しいのかどうかを)尋ねてくださったようです。役所にも連絡をとって事実確認をしてくださいました。それからもいろいろあったけど、最終的には給付金を受け取ることができました。でも、なんて言うんだろう…普通にバイトしてもお金がないから。よくなかったかもしれないけど、自分がやったことを犯罪扱いされちゃうのは…精神的にくるものがありました」

お金があってしないのと、お金がなくてできないのは全然違うから嬉しくて

ユキサキチャットで相談を受けた後、すぐにユキサキ便(食糧支援)を届けました。

「すっごい早かったんですよ〜!」と若菜さんの表情が明るくなりました。「ごはんだ〜!って思いました。届くまで1週間ぐらいかかるかと思ってたので、びっくりしました。箱一杯にレトルトとか缶詰とか入ってて、久々にお米を炊いてカレーを食べました。あと、野菜ジュースが入ってたのが嬉しかった。好きだけど買えなかったから。もともとジュースやお菓子を買わない方なんですが、お金があってしないのと、お金がなくてできないのは全然違うから嬉しくて」

食糧支援とは? 
保護者に頼れず困窮する10代が、一時的に安心できる環境を整えるために実施しています。1箱には約30食(2週間分)、入れる食品はお米、レトルトカレー、パスタ、パスタソース、焼き鳥やおかずの缶詰、フリーズドライのお味噌汁などです。必要な場合は、食糧支援のほか、現金給付も実施しています。ユキサキチャットでの継続した相談サポートと食糧や現金での支援を掛け合わせ、福祉制度につなぐなど相談者が他にも頼れる先を増やしていきます。2022年4月からはコロナの影響を受ける若者を長くサポートするため、ユキサキ支援パックとして1年間継続支援ができる体制をつくっています。

食糧支援の一例

自分に対してちょっと「いいこと」みたいなのが、増えてる

D×Pの食糧支援と現金給付を使いながら生活を立て直し、今は仕事も始めました。体調に合わせて働き方を考えてくれる上司に恵まれて楽しくなってきたと言います。「食べるのはすごく好き」と笑う若菜さん。学生の頃から料理することがストレスの発散方法です。

最近つくった朝ごはん(本人提供)

「余裕が無かったときは、全然ごはんは食べられないし、料理もできなくて。最近は、ごはんを作ったりできるようになりました。前みたいに力を入れてお菓子作りはできないけど、気が向く時にちょっとしたお菓子をつくったり。お正月には鍋をしました。鍋ってみんなでつつくイメージがあるんですが、施設ではすぐ無くなるんですよ(笑)すぐ食べちゃうから。お野菜もいっぱいいれて、鍋ができたのが嬉しかった」

つくったお菓子(本人提供)

お金がない間、病院に通うこともやめていた。働き出してから少しずつ余裕ができて、最近また通院することができるようになりました。

「駅に花屋さんがあったりするじゃないですか。それで、ちょっと花を買ってみたりして。ケーキを買って帰ったりとかも。そういうの、なんて言うんだろう。娯楽というか…自分に対してちょっといいこと?みたいなのが、増えてる」

若菜さんは、ゆっくりと、確かめるように言葉を探します。

「最近一番楽しかったみたいなことはあんまり無いけど、ちょっとしたことがいっぱいあって、楽しい。嬉しい」

こんな言葉に立ち会えたことが嬉しい。穏やかな日々のなかにある小さな幸せが、彼女のもとにこれからもたくさんたくさん訪れますように。

買って帰った植物(本人提供)

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