D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×10代

仕事も趣味も欲張りに。「就職するしかない」と考えていた定時制高校生のいま。

私が何かに行き詰まったとき、タイミングよく連絡をくれる人がいます。SNSで手軽に友達の近状を知ることができるけれど、自分の辛さを伝えることは難しく感じました。

そんな時、画面に浮かぶ「久しぶり、元気してる〜?」というメッセージ。「元気だよ!そっちは?」という軽いやりとりでも、心がすっと楽になることがあります。きっと話を聞いてくれるであろうその人の存在を感じるから、辛いことがあってもなんとか進んでいけそうな気がします。

「うまくできすぎているような気がするんですが…」と話す、高校生。彼にとってD×Pは、自分が行き詰まったときに出会う存在だったそうです。

定時制高校4年生。専門学校に進学予定のジャマネくん。

初めての出会いは、3年前のD×Pが定時制高校で行うプログラム『クレッシェンド』。

「NPOって聞いたから、お堅い人がくるのかと思ってましたね。」と笑うジャマネくんに、話をきいてみました。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています。

なんとか自分のデザインをお金にできたらいいなって。

D×Pスタッフ:ジャマネくんは、普段はどんなことしてるの?

ジャマネくん:自分はデザインするのが好きな人間ですね。最近は、コンビニとかにあるような販促物や商品を宣伝するようなポップとかを作ったりしています。

D×Pスタッフ:作ったものある?見てみたいな〜

ジャマネくん:いま、学校の文化祭の前なんです。模擬店でフライドポテトやナゲットを売ろうと思っていて。そのフライドポテトのイラストを描いたりしました。紙コップにいれて販売すると思うんですが、そのカップにイラストがあるとかわいいなって思って。

模擬店自体は、フライドポテトを希望している学年がふたつあって、抽選で負けてしまいデザインは譲ったのだそう。

D×Pスタッフ:ポップな感じのデザインが好きなんだね。

ジャマネくん:こういう感じのは、デザインしてて楽しいですね。

D×Pスタッフ:いつからデザインに興味をもったの?

ジャマネくん:高校生になって、パソコンやタブレットを買ったんです。iPad Proを使っているんですが、あれ、ごっつい高かった…(苦笑)。パソコンやタブレットがあれば、なんでもできるなって思って、作り始めましたね。中学までは、そんなに絵を描くわけではなく、ずっとバスケットボールに打ち込んでました。

D×Pスタッフ:ポップはバイトで作っているの?

ジャマネくん:自分で趣味として作っていますね。いま、なんとかお金にならないかな?って考えています。ちょうど、就職とか進学を考える時期で。デザイン系の会社に入りたいって思ったんですが、雇用条件条件見たら美大卒とかデザイン系卒とか…。

D×Pスタッフ:なかなか未経験から応募できるところって少ないもんね。

ジャマネくん:一応、デザイン系の学校に進学が決まっているんです。グラフィックデザイン学科でパッケージデザインを学ぼうと思っています。

「絵だけをやる学校があるなんて最高ですね。」というジャマネくん。同じく専門学校を卒業したわたしも当時のことを思いだし、話が盛り上がりました。

ジャマネくん:専門学校を卒業したあとに販促物を作る仕事ができたらいいなと思って。それ以外にも、なんとか自分のデザインをお金にできればと考えてたんですが、どうすれば、誰かに利用してもらえるとか誰かの手に届けられるかというところの答えがでていないですね。

D×Pスタッフ:話聞いているとやっぱり、デザイナーって感じだね 。誰かに使ってもらうところまで考えているから。

ジャマネくん:これ使ってくださいっていう押し付けならできるんですけど、どうせやるなら稼ぎたいんですよね。

NPOの人が来るってきいたからお堅いひとがくると思ってた

D×Pスタッフ:じゃまねくんとのD×Pの最初の出会いはクレッシェンドなんだよね。クレッシェンドには1、2年生で参加したって聞いたけど、なにか覚えている?

ジャマネくん:先生らが「今日は、ディーピーって人がきてあれこれやってくれます。」みたいな…(笑)最初はそんな感じでしたね。

D×Pスタッフ:そんな感じなんだね(笑)。

ジャマネくん:NPOの人が来るって聞いたからお堅い人が来ると思ってたんです。実際は、全然違って。D×Pは、D×Pやねんなって思いました。いろいろ話ができて楽しかったです。

2年生のときに参加したクレッシェンドで、自分の将来を考えるようなことをやったんです。そこからですね、やりたいことやどうなりたいかを本格的に考え出して、自分のなかで固まってきました。バスケットやデザインも、高校卒業したらやらへんのかな?って思ってたけど、デザインを仕事にしたいなと繋がっていきました。それが、自分のなかで大きな影響がありました。

D×Pスタッフ:一緒に話した大人のことは、覚えてる?

ジャマネくん:頭の中では覚えているんですが、名前が出てこないですね〜。日本一周したって人がいて。ちゃりんこだったかな?その回った先でいろんな人と会ったという話を聞いたり、LINEスタンプ作ったっていう人がいました。2年前だけど、印象の強い人がけっこう多いですね。

D×Pスタッフ:そのあとも、何度かD×Pの事務所に遊びにきているんだっけ?

ジャマネくん:1年生の頃に、他校の生徒と一緒に絵本作る企画に参加しました。クレッシェンドのときに、絵やデザインに興味があると言ったことをスタッフの人が覚えてたみたいで、声かけてくれて。2年生のときには、書き初めするよって誘われて。餅食べたり、書き初めしたりしました。その時は、他の学校の生徒はいなくて、大人ばっかりでしたね。

D×Pスタッフ:そうなんだ、大人ばっかりでびっくりしなかったの?

ジャマネくん:びっくりはしましたね。でも、そのときも話の合う人が多くて、楽しかったです。

うまくできすぎているような気がするんですが。

D×Pスタッフ:4年生になってから、ライブラボ(当時定時制高校のなかで行っていたD×Pの進路相談室)で再会したんだよね?

ジャマネくん:それが最近の話ですね。今年の春頃、就職か進学か迷っていたんです。その頃に一人暮らしも始めたので進学するためのお金がなくて。就職するしかないと考えていました。ただ、自分がやりたいと思っていたデザイン系の職種に、美大や専門卒の条件があったので迷っていたんですよね。そしたら、学校でたまたまD×Pのスタッフと会って。「水曜日に、進路相談室を開いているから、よかったらおいで」って。

スタッフといろいろ話をしたら、やっぱ進学したいなと思いました。『じゃあ、お金をどうやって用意しよう?』と思った時、新聞奨学生っていう制度があることをネットで見つけたんです。新聞配達の仕事をするかわりに、新聞社が学費を立替えますよっていう。応募期間がぎりぎりだったんですが、挑戦してみたら受かって。6月ごろまでは、自分は就職するしかないと思ってたんですが、AO入試も合格して…この4年間、自分が行き詰まったときに、D×Pがきっかけで変わっていったなあって思います。

D×Pスタッフ:なんだか、不思議なご縁ですね。

ジャマネくん:毎回、D×Pがきっかけで変わっていくから、うまくできすぎているような気がするんですが(笑)。

D×Pスタッフ:定時制高校を選んだきっかけってあるの?

ジャマネくん:自分が、中1のときにテレビで定時制高校のことをやってて。そこで定時制って学校があると知りました。調べたら、行く時間も夜間だし。昼は働けるなって思って。それで、中2ぐらいから、定時制高校に行くことを決めてました。

D×Pスタッフ:働きたかったんだね。

ジャマネくん:たぶん、その頃から家を出たかったんですよね。家に居場所がないと感じることがあって。一人暮らしは、楽しいです。やっぱり自分の居場所があるっていうのは最高ですね。

D×Pスタッフ:落ち着ける場所があるのは、大事だよね。ご飯もつくったりするの?

ジャマネくん:バイトが、コンビニの夜勤だけだったときは作ったりもしてたんです。新聞の配達を始めてからは、ほぼ外食ですね。一人暮らしを始めて気づいたんですが、お腹いっぱい食べようと思うと外食の方が安く済むんですよ。もやしで生きていくとかならその方が安いと思うんですが、1日3食お腹いっぱいになろうと思ったら、定食屋に行ったほうがいいなって。それから、初めて知ったことがあるんですが…キャベツとかぜんぜんもたへん。すぐ、しなびちゃって(笑)。食器とか鍋とか買い揃えたんですが、最初の1ヶ月ぐらいしか使ってないので、思ってたのとちゃうなあって感じはあります…。

「気がついたらあっという間に時間がすぎています。」というジャマネくんの生活。 昼に起きて、ご飯や学校の準備。夕方の配達から、学校に直行、その後夜勤のバイトへ行くのだそうです。

自分は、欲張りな性格なので(笑)。

D×Pスタッフ:忙しい生活なんだね。どうやって自分の好きなことをする時間をつくるの?

ジャマネくん:コンビニの夜勤って、深夜2時から5時頃は暇なんです。その間に頭の中で考えたりとか。土曜日は夜勤は休みで、夕刊の配達だけなんですよね。日曜は夕刊は休みなので、土日は時間があるんです。ハードに見えると思うんですが、慣れてしまうと働いているって感覚も消えますし、趣味に生きてます。

D×Pスタッフ:そうなんだ…!(驚)ジャマネくん、時間の使い方上手だね。

ジャマネくん:それはよく言われます(笑)。でも、友達と遊んだり、ご飯食べに行ったりとかそういうのは、ほとんどないですね。頭の中では自分の趣味のことでいっぱいなんです。学生として有意義に過ごしているかというと…どうかわかんないですね。親元でお小遣い稼ぎしながら友達と遊んだりすることが有意義なのかもしれないので、あんまり自慢できるとは思えないですね。

D×Pスタッフ:有意義だと思うけどな〜。文化祭でも、しっかりデザインしているし。

ジャマネくん:そう言われると報われますね。自分がひとりで販促物使っても広まらないけど、文化祭の中でなら好き勝手できる。それがなかったら、こんなに積極的に関わらないと思います(笑)。

文化祭ではインスタ映えする壁を作るので、そのポスター。映えと羽がかかっています。

D×Pスタッフ:周りの人が認めてくれて好きなことを追求できるって、すごくいい場だよね。これから先、ジャマネくんはどんなふうに生きていきたいと思っているの?

ジャマネくん:仕事はデザイン系。食品とかのパッケージができたらいいなと思っています。それプラス、自分は人に伝えるのが好きなので。絵本でも漫画でも作っていけたらな。面白い販促物とかも。そんなふうに生きていけたらいいですね。仕事は仕事、でも趣味もデザイン系。自分は、欲張りな性格なので(笑)。

「就職するしかない。」と考えていた、ジャマネくん。理想の生き方に向けて、専門学校への進学を決めました。

行き詰まっているときは、「こうしかない。」というふうに考えてしまうことって多いのかもしれません。悩みを言葉にすることが難しいこともあります。

クレッシェンドを実施する学校では「久しぶりー!!」という声を聞くことがよくあります。高校生とスタッフがどちらともなく始める近状報告のなかで、生徒の悩みごとにつながる話を聞くこともありました。

D×Pは、生徒が行き詰まったときに出会える存在となるためにも、学校で実施する取り組みをもっと、広げていきたいと考えています。そして、これらの取り組みは全て、D×Pに共感してくださる方の寄付で運営しているんです。

よかったら、あなたも。ぜひ、D×Pのサポーターとして寄付で応援してください。

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D×P(ディーピー)は、10代の孤立を防ぐNPOです。

「10代の孤立」は、不登校・中退・家庭内不和・経済的困難・いじめ・虐待・進路未定・無業などによって、
いくつかの安心できる場や所属先を失ったときに起こります。

D×Pは、スタッフやボランティアの大人が定時制高校へ行き、授業や校内居場所事業で高校生ひとりひとりと「つながり」をつくっています。そして、高校生の好きなことや興味などをきっかけに仕事体験を企画し、進路を考えるきっかけやまだ見ぬ世界と出会う機会をつくっています。

そして、これらの取り組みは全て、D×Pに共感してくださる方の寄付で運営しているんです。よかったら、あなたも「寄付」を通じて、この取り組みに参加しませんか?


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