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走った分だけ食糧支援。ピッチの内外で挑戦し続ける【稲葉修土選手インタビュー】

D×Pの活動にはさまざまな方が賛同くださり、応援をいただいています。
そしてその応援の方法にはさまざまな形があります。

今回は寄付という形とは別に、独自の方法で関わってくださっている方をご紹介します。
それがサッカー選手の稲葉修土さんです。
稲葉さんは大阪府のご出身で、現在はFC町田ゼルビアに所属しています。

2022年からD×Pとプロジェクトを開始しました。
なぜ稲葉さんが若者へのサポートを行おうと思ったのか。
その思いと、今後の活動について話を聞きました。

きっかけはフリースクールへの訪問

──稲葉さんは秋田のチームにいらっしゃった2022年から、1キロ走るごとに1キロのお米をD×Pに寄贈いただいています。きっかけは何だったのでしょうか?

2021年のシーズン終了後、当時所属していたクラブのイベントで、フリースクールに訪問して一緒にサッカーをしようという機会がありました。実はフリースクールの存在をあまり知らなくて、イベントに参加するまでどうやってアプローチしたらいいんだろうって緊張してしまった自分がいたんです。

でもいざ一緒にボールを蹴ってみたら、みんなすごく生き生きしてキラキラしていて、なんだか構えていた自分が恥ずかしくなってしまいました。そんなこと気にしなくてよかったやんって。

僕は5歳のとき、父にJリーグの試合に連れて行ってもらい、サッカー選手になるという夢を志しました。でも例えば、そういう機会がなかったら自分はどうなっていたんだろうとふと考えて。

夢を持つって綺麗事のように捉えられがちですけど、その夢を追いかけてきた立場から見ても、やっぱりとても大事だと思っています。だから夢を持てなかったり、境遇によってそれが妨げられてしまっている子どもたちに何かできないか。

そんなことを思っていろいろアプローチしていたら、知り合いの方からD×Pさんを紹介いただきました。僕もD×Pさんの活動にすごく共感しましたし、地元の大阪を拠点にされていたこともあって応援したいと。

そこから支援を始めさせていただきました。

ピッチでプレーする稲葉選手

──走った分お米を支援するというアイデアがとても面白いと思うのですが、どんな風に発想されたのでしょうか?

以前富山と秋田という米どころのチームに所属したことがあり、本当にお米って美味しいなと思っていました。またお米のキログラムと、走る距離のキロメートルが比例していくのもよいなと思いました。

僕のプレースタイルはがむしゃらに走るスタイルなので、そういう姿を見せることが支援になれば、自分にとってもプレーする上でのモチベーションになると思いました。

それと、根本的なところで負けず嫌いなんです。僕はあまり背も高い方じゃないし、これといった特徴がないと思っていました。何かの代表に選抜されるようなこともなかったので、いかにして自分はこの世界で生き残っていくのかということは常に考えています。自分より現時点で優れている人にどうやって立ち向かっていこうかと。

勝つためには他の人より努力しなければならないし、どんな手段を使ってでもいいものをつくり上げていきたいという思いがあります。支援活動は勝ち負けじゃないですけど、やっぱりやるからには自分自身も納得感を得たいので、どんな方法がいいだろうっていうのは常に考えています。

稲葉選手が走った距離分のお米を届けています(稲葉選手がプレイする町田地域や東京在住の方にお送りしています)

D×Pと関わるようになってから

──実際にD×Pを通じて活動するなかで何か気付かれたことなどはありますか?

まずはグリ下の存在を初めて知ったことが大きかったです。テレビでは主に東京のトー横が報道されていますが、僕の地元にもそういう場所があったのかと驚きました。

D×Pさんの支援の量や目標達成額などを知って、そんなに困っている人がいるのかと衝撃を受けました。僕が思っていた日本って、こんなに困っている人がいる国だとは思わなかったので。でもまだまだこういう状況を知らない人ってたくさんいるんじゃないかとも思います。

D×Pさんが支援される方が年々増えていると思うんですけど、毎年困っている人が増えているのでしょうか。それともD×Pさんの認知度が広まっているのでしょうか。

──その両方の理由です。リーチできる方の数は増えてきていますが、実際にはまだまだ足りていないです。

そうなのですね。サッカーのサポーターのなかでも「私も支援しました」という投稿をSNSで見かけたりしたので、そういうつながりもつくっていって支援の輪を拡げていきたいとも思っています。

──とても心強いです。稲葉さんはスポーツ界で活躍する他の選手にインタビューをするNOVATHという活動もされておられます。これもあまり他の選手がやらないような活動だと思うのですが、きっかけは何だったのでしょうか?

これは秋田で2年間チームメイトとしてプレイした、増田選手と一緒にやっています。彼も社会に対して目が向いている選手です。

いまはアスリートのセカンドキャリアをどうするのかという問題がかなり世のなかに拡がってきていますし、そういう関心を持つ団体も増えてきています。増田選手と話すなかで、選手としてのキャリアがその後にも本当の意味でつながっているのかと言ったら、はっきりイエスとは言えないよねっていうことになって。

何かしたいアスリートは多いんですけど、何をしたらいいか分からないという声もよく聴きます。僕たちは外に目が向いている方なので、こういう世界があるよとか、行動を起こすための第一歩になるような存在になりたいなと思って活動を始めました。

大学生に講演する稲葉選手

社会に目を向けるようになった

──そもそも、なぜ稲葉さんは社会に目が向くようになったのでしょうか?

理由は大きく2つあると思っています。僕は大学4年生のときに、サッカーを引退するつもりで就職活動していたんです。そのときにいろいろな企業のことも調べました。

そのなかで、サッカー業界だけでなく同じように他にもたくさん業界があることを知りました。それからシンガポールに行ったときに、シンガポールは勉強に重きが置かれていて、スポーツの価値自体があまり高くないんです。

もちろん代表の選手はいるんですけど、日本ほど注目されていません。そのとき、スポーツの価値が高くない国もあるんだと思って、他のことも勉強しないといけないなと強く感じました。

──社会に目を向けているという部分でもお聞きしたいのが、2023年から始められたYUME COME PROJECT。そして合同会社ワンステップを起業されたことです。こちらの理由もお聞きできますか?

NOVATHの活動で、オリンピックパラリンピックのスポンサーをされていたイベント企画会社の方にインタビューしたときに、社会貢献と社会課題の解決は違うよというお話をしていただいたんです。

社会が木だとしたら枝葉にアプローチするのが社会貢献で、外からは見えない部分、根っこにアプローチするのが社会課題の解決だと教えてもらって。それを聞いて自分がやりたいのはどちらかなと思ったときに、難易度は高いのかもしれないけれど、やりがいや意義があるのは後者だなと思って。

そういう話を聞いて、自分の考え方が変わったというのはありますね。それで社会課題の解決を目指して始めたのがYUME COME PROJECTです。支援の方法としてはいままでとそれほど変わってないんですけど、僕の思考であったり、今後の展開は変わっていくと思います。

起業した理由も、実はYUME COME PROJECTともリンクしているんです。社会課題の解決をする活動をさらに進めるために、法人を持っていた方が周囲の反応も違うと思って起業しました。社長になってみたいとも思っていましたし(笑)。主な活動としては、D×Pさんがアプローチされているような若者への支援活動とかフリースクールや学校の部活動への訪問をしていきたいと。

YUME COME PROJECTの今後の拡がりとして、どうしてもサッカー選手が活動できる時間は限られてしまいますが、個人の影響力はあると思っています。スポーツの力を使いつつ、僕が上のステージにいけばいくほど、活躍すればするほど、影響力が大きくなるのは、僕がJ3にいるよりJ2、J2よりもJ1というように、そのステージに比例すると実感しています。

そういう影響力を使って、子どもたちが夢を持てるようにしたいし、最終的にはその人たちが僕の試合を見に来てもらえるようにもしていきたいなと思っています。

今回取材はオンラインで実施しました

一歩を踏み出すと、新しい世界が開ける

──実際に支援活動をされてみて、何か自分もやってみたいと思っている方にメッセージをいただけますか?

多くの人は自分が持っているものや有益なスキルを、自分だけで持っていたいと思ってしまうかもしれない。でも実際にサッカーの指導をしていて感じることは、スキルとかを教えると、その分また違った形で還ってくるということなんです。時間はかかるかもしれないですけど、必ず自分の人生によい形で還ってきます。

プロになってから、大学生に講演をしたことがありました。その子が話したときのことを覚えていてくれて、あのときのお話のおかげでいま頑張れていますと言ってくれることもありました。

すごく嬉しいですよね。自分は何気なく踏み出した一歩でも他の人にとってはすごく大きなことになっていたりすることもあります。

何かしたいという人はぜひその一歩を踏み出してみると、新しい世界が開けると思います。支援活動を通じて知り合いになれた人もいますし、応援するよって言ってくださる人もすごく多いです。

──最後になりますが、以前から目標にされていたJ1昇格の達成、おめでとうございました!

ありがとうございます。ずっとそこを目指してやってきたので、不思議な感じです。でもその日は嬉しいんですけど、次の日になったらまた頑張らなあかんってなってるので、手放しで喜んではいられないですね。挑戦し続けたいと思っています。

インタビュー・執筆:青木真兵/編集:熊井かおり

稲葉選手とD×P理事長の今井が「#孤立を防ごう」というテーマでお話します!ぜひご参加ください。
▼対談生放送概要
日時:12月14日(木) 12:10〜12:55
場所:X(旧twitter)スペース
https://twitter.com/i/spaces/1YpJkwPoOvZJj

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