D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×ユキサキライター

もっと大袈裟に受け止めませんか? 若者が「私が黙っていれば済む」と諦めない社会をつくるために。

小学5年生の2学期だったでしょうか。下駄箱に置いている靴の中に砂を満杯まで入れられるということが続いた時期がありました。

ひょんなことから先日、母とその頃の話になり、彼女はこう話してくれました。

「“いじめ”だったかもしれない。そうじゃなかったかもしれない。自分の対応が正しかったかもわからない。それでもあなたが毎日、『靴に砂が入ってた! 出すのは2秒だけど詰める方は大変だよね』とか『今日は入ってなかった。風邪でもひいたかな』と私に話をしてくれていたから、きっと大丈夫だと思っていた」

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この母の言葉に、私の中で完全に忘れていた砂の音が蘇ってきました。思い返してみると、あの時の私は「混乱」という言葉がぴったりな状況にあったように思います。

苦しいこと、しんどいこと、困っていること。これらを言葉で認識し、人に説明し、助けを求めるのは簡単ではないのだと、時間差で気づきました。ままならない自分を無条件に受け入れてくれる人の存在がどれほど救いになるのかということも。

……と、いきなりの自分語りで申し訳ありません!

湯気」という会社で編集者をしている南麻理江と申します。D×Pタイムズの企画・記事作成にも関わっています。

編集の仕事とはまさに、言葉の力で、人の人生を肯定する仕事だと、私は考えています。D×Pの相談窓口にたどり着き、ドアをノックしてくださる10代20代の困りごとを解決するために「言葉」の側からできることはないか? もっと彼らの本音を世の中に届け、知ってもらうためにどんな工夫ができるのか? 模索する中で、まずは、彼らが声をあげにくい理由、本音を伝えづらい背景を知っておきたいと考えました。

そこで今回「ユキサキチャット」に登録している13~25歳を対象にアンケートを行い、「困りごとを相談する大人はいますか?」「相談できない理由は何ですか?」などについて聞きました。


経済的・心理的に何かしらの「生きづらさ」を感じている約9,000人の若者が登録しているユキサキチャット。家庭内や学校での人間関係、進路、就活、お金のことなど、困っていることについてD×Pの相談員がチャットで応じています。

長引くコロナ禍で困窮する若者の増加を背景に、2020年4月から現金給付や食料現物支援もスタートさせており、2022年12月までに現金給付は4,971万円・食糧支援は95,220食をサポートしました。

今回のアンケートは13歳~25歳のユキサキチャット登録者のうち145名が回答してくれました。68%が10代です。

結果を紹介する前に、どうしても書いておきたいのですが、彼らが書き込んでくれた言葉を、大人の皆さまには、少し大袈裟に受け止めて欲しいのです。

自分の生活を振り返ってみても、何か不安や悩みを抱えている時に、言葉を絞り出すのは平時の何倍も大変です。靴に砂を入れられた11歳の私が、自分の「傷つき」をまったく言語化できていなかったのと同様に、若い方なら尚更かもしれません。

ですから是非、ちょっと大袈裟に耳をそばだてて欲しいです。加工も編集もしていない生の言葉です。前置きが長くなりましたが、結果をシェアしていきます。

50%が、困りごとを相談できる大人が「いない」

統計的に何かを導き出せるアンケートではないという前提ではありますが、「現在抱えている『困りごと』相談できる大人はいますか」という質問に対して、50%が「いない」と回答しました。

大人が信用できない(笑)  基本的に人と深い付き合いができるタイプではないけれど、言っても伝わらないことが多い。 何度言っても理解してくれない経験があるから。
17歳・「いない」と回答
何度か親に裏切られたこと(が)あり、あんまり親に何でもかんでも言わなくなりました。 よく反抗期だからねー、思春期だからねーとか言われることが多いですが、親に原因がある可能性も考えて欲しいです。
16歳・「いない」と回答
子どもの頃学校で嫌なことがあってそれを親に話したら、我慢しなさいとか先生に言いなさいとか言ってちゃんと話聞いてもらったことがなくて、社会に出てからもなんかしら理由つけて話を遮ってきたりして、私が黙っててそれで済むならいいかって思うようになりました。
25歳・「いない」と回答

相談したくてもできないのは「どうせ言ったって変わらない」

さらに「周囲の大人に困りごとを相談したいと思って、やっぱりやめてしまうことはありますか?」という問いには86%が「はい」と回答。(何の迷いもなく「いいえ」とは答えづらい設問だったかもしれないので、こちらも統計的な評価はしづらいと考えます)

「よかったら、やっぱりやめてしまったときにどんな気持ちや事情があるか教えてください」と尋ねたところ、以下のような回答が得られました。

職員室や他の教室を開ける時緊張するからやめました。アンケートには書けるけどドアを開ける勇気がなかったです。なんというか自分は開けれないし、何から相談すればいいかわからなかったです。ノートに書けばよかったです。相談しても解決にはならないし無駄だと思いました。
19歳
大人に話して(も)忙しそうで、自分の悩みなんて小さいことなのかなと思いました。
14歳
大人というか具体的に言っちゃえば先生なんですが…やっぱり先生って忙しいし、私のせいで仕事が増えちゃったら申し訳ないと思うからです。
14歳
怖くてできなかった、辛い、死にたい、どうすればいいんだろうという気持ち。
13歳
後でねと言われ結局聞いて貰えずそのまま聞かれなかった経験があり話さないことがあります。
23歳
いじめの相談したら、嫌われたりしたし、、お母さんは、辛いと言って向こうの部屋に行ってしまったり。。父や姉は、なんて答えたら良いかわからないと。。(いじめを)されたことないから、どうしたら良いかわからない、とか。解決にならない答えを言われる。いじめを、やめさせて。これしかない。でないと、学校や教育委員会や加害者への襲撃が激しくなると予測する。
24歳
話聞いてた?と思うようなコメントが返されたり、意見の否定をされたり、ついでに自分自身も否定されたり、問題の解決に結びつかないことが多いから嫌になるため。
21歳

若者の痛みを「吸収」していくために

13~25歳のリアルボイス、どう受け止めていただけたでしょうか。

私がアンケート結果から強く痛感したのは、10代にも自己責任論がこんなに蔓延ってしまっているのだということ。結局自分で何とかするしかない、という言葉に、年長者の一人として複雑な思いがよぎりました。

記事の前段にも書きましたが、私たちはもっと、若者の声を大袈裟に受け止めるべきではないでしょうか。大袈裟に受け止めて、大人の側から率先して「お節介をやく」必要があるのだと思います。

社会全体の価値観(根深い自己責任論など)を変革していくのは途方もない作業ですが、身の回りの若者にお節介をやくことならできる。できることを怠らず繰り返すことでしか、価値観の負の再生産を止めることはできない気がします。

もしかしたら優しい人ほど、相手を尊重したいと思うがゆえに、お節介を躊躇するかもしれません。けれど「ウザがられるかも」「求められてないかも」と迷ったら、上に紹介した10代20代の切実な言葉を思い出してほしい。そして、 “お節介な先輩”に、一緒になりませんか。

社会構造の不備に引き続き異議申し立てしながら、半径10メートルの実践を怠らずにいたいです。

また、アンケート結果を見てもう一つ感じたのは、「他者に頼るのが難しい」と感じる理由の根源は、生きづらさを抱える若者であれ、周囲からは順風満帆に見えている大人であれ、大差はないのかもしれない、ということ。

「私の悩みなんて聞くに値するものなんだろうか」「結局自分の人生だから、他人に話しても意味がない」「わかってもらえないことで傷つくのが恐い」……。

私たちも日々感じている痛みが、より一層深刻に彼らに覆いかぶさっていることに、常に思いを馳せたいです。

冒頭に非常に個人的な靴の砂をめぐるエピソードを書いたのは、困難の渦中にある人がそれを言語化することの難しさと、ただ寄り添ってくれる人の存在の尊さを強調したかったからです。

しかし、さらに目を向けるべきなのは、母とのひょんな会話がなければ、私はすっかりそのことを忘れていたという事実(幸運)の方かもしれません。それは、11歳の痛みを彼女が吸収してくれたということなのだと思います。まるで衝撃を吸収するエアバッグのように。

若い人たちが苦しみを忘れて、新しい価値観を作っていける社会に。

私にできることを探り続けます。ここまで読んでくださった方も是非、それぞれの持ち場で探っていただけると嬉しいです。

ユキサキライタープロジェクト
produced by D×P,株式会社湯気

ユキサキチャットに登録する若者の声を社会にもっと届けていくためのプロジェクトです。さまざまな背景や課題意識を持つ人々(通称ユキサキライター)を軸に、仲間を増やしていくことを目指しています。

書いた人: 南 麻理江
編集者・株式会社湯気 代表取締役

1987年広島県生まれ。株式会社「湯気」代表取締役。編集者。
2011年博報堂入社。インターネット広告のセールス、プランニングに携わる。2017年5月よりハフポスト日本版にて記事や動画、イベントなどの企画・制作・編集をおこなう。「日常会話からSDGsを考える」をテーマに掲げたライブ番組「ハフライブ」ではホストも務めた。2022年6月、株式会社「湯気」を設立。“世の中を変えるかもしれない「熱」をなだらかに伝えていく”をコンセプトに社会課題に向き合う企業や組織に並走する日々。

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