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政治家に届いていますか? 年金、物価高、同性婚…生きることに不安を抱えている若者の声【調査結果】

外国は、同性婚が認められてるのに、何故日本は認められないのか。性暴力を受けた時の罪が、外国に比べて軽すぎるのでは、ないか。(14歳)
国や行政以前に、そもそも親にすら届いていない。家庭の中で声を封じられ、声を聞いてもらえるという考えすら思いつかなくなってしまっていた。どうせ何言っても聞いてもらえない。家庭でそういうことが積み重なると、自分が何を言いたかったかすらわからなくなる。(24歳)

この国の政治について問いかけたときの、若者たちのリアルな声です。D×Pでユキサキチャットの利用者を対象に「政治に関するアンケート」を実施したところ、10代〜20代の131名から回答がありました。

多くの若者が年金制度や増税などに言及し、生活のなかで感じる不安や自分の困窮状況などが、政治の状況から来るものと認識していることがわかりました。しかし無視できないのが、そこからくる「無力感」です。

「自分の声は国や行政に届いていると感じますか?」という問いに対して、「あまり感じない」が32.8%、「全く感じない」が53.4%という結果になりました。はたして政治家たちは、子どもたちの貧困の実態、将来に不安を感じていることを知っているのでしょうか?若者、子どもたちの無力感を、どう政治と接続し直していけばいいのか。アンケート結果から考察を重ねます。

ユキサキチャットとは?
認定NPO法人D×Pが運営する不登校、中退、経済的困難など10代のための進路・就職LINE相談窓口。コロナ禍で困窮する25歳までの若者に現金給付や食糧支援も実施しています。

「年金もらえるのか」「物価高騰で食事もできず…」経済不安の声多数

まず、いま若者たちが日々の暮らしのなかでどんなことに不安を感じているのかを聞いてみました。「自分の将来に不安を感じますか?」という質問に対して、76.3%の人が「感じる」と回答しています。自由回答を見ると、その要因の多くは経済的なものです。


今の福祉体制は自分が死ぬまで続けることができるのか。 自分は年金がもらえるのか。払うだけになるのか。
17歳・「感じる」と回答
家出したいけどお金の面でどんどん物価が上がっていって、出来ないこと。働く時の人間関係、仕事内容、給料面、毒親のこと
19歳・「感じる」と回答
大学に受かったとしても進学できるか。大学に行きたいのですが父母ともに高齢で、高齢出産であるため金銭面について心配です。
14歳・「感じる」と回答
老後二千万円問題、少子化問題、 物価高騰、賃金が上がらない。 賃金格差は、よほどのことがない限り連鎖し、貧困格差につながる。 他の国とは、かけ離れた賃金格差。
22歳・「感じる」と回答
こんな家庭環境で大学に入学できるのか、入学できたところでバイトなどを始めたら全部お金を吸い取られるのではないか、自分は将来どんな職に就けばやりがいや楽しさを感じつつ人に貢献できるのか、など…
18歳・「感じる」と回答
娘が1人いてシングルマザーですが、価格の高騰を受けまともに食事もできず、先行きが不安です。
22歳・「感じる」と回答
日本に将来性はない。 今の不安定な生活も不安だが、就職先が見つかるかも不安。 若者の自殺者が増える理由と自殺したくなる気持ちが分かる。(中略)障害者や未成年だと、なにをするにしても親権者の同意が必要となるが、「親と良好な関係」が前提で物事や話が進むのは辛い。 専門的なことを学びたくて大学に進学をし、奨学金を借りようと思っても世帯年収で決められる為、世帯年収は高くても子どもに金銭が一切入らない学生や生活保護世帯は色々な手続きをしないと借りられない事に不満を感じる。 若者の売春や闇バイトが社会問題となっているが、売春や闇バイトをしないと生活ができない状況になっている。(後略)
22歳・「感じる」と回答

日本のジェンダーギャップに対する不安の声もありました。日本では異性カップルだけでなく同性カップルなども含めた婚姻の平等がいまだに実現されておらず、男女の賃金格差も大きいという状況を、若者たちは深刻に捉えています。

貧困(フリーターだが、日雇い派遣は肉体労働が多くはたらけ無い) 結婚できない(連れ合いが同性のため) など
18歳・「感じる」と回答
今日本の政治は若者ほど損をし、地位のある老年男性ばかりが得をする社会になっている。女性の地位も先進国とは言えないほど低く、男尊女卑の価値観の中で若年女性の未来は潰されるばかりであるため。
21歳・「感じる」と回答
経済面、LGBT
18歳・「感じる」と回答
(前略)同性婚が日本ではできないから、パートナー(今はいないが)がいて、一緒に暮らしてたら、急な入院やパートナーが死んだときに一緒に立ち会えない。それが不安。私は生物学的に女性で、パンセクシャル。男性とも付き合えるが、男性と付き合いたくないから、女性と付き合いと思ってる。でも、同性婚ができないことが同性パートナーを作る上で障害になっている(後略)
20歳・「感じる」と回答

日本は「努力すれば報われる社会」と感じるのは少数派

経済的・精神的に不安を抱える中で、若者たちは現状をよくしていける手応えをどの程度感じているのでしょうか?
「日本は、自分が努力すればむくわれる社会だと思いますか?」という問いに対しては、「あまりそう思わない」が約39.7%、「全くそう思わない」が22.9%でした。

精神と身体のバランスを崩して留年して奨学金がもらえなくなり、身体が回復しきっていないのにアルバイトで生活費を稼ぎながら大学生活を送ることになり、辛いなぁと感じることが続いている。 社会のメインストリームからドロップアウトした途端に社会で生きることが大変になると感じた。
22歳・「あまりそう思わない」と回答
親ガチャが全てじゃないですか?
20歳・「あまりそう思わない」と回答
物価も消費税も上がるのに給料は上がらないし、子育て政策もちゃんとしてないし、毒親について救済措置のようなものがないし、高卒の給料は1人で暮らしていくには難しいし、給料は低いのに求められることは高度。
20歳・「あまりそう思わない」と回答
生育環境によって大きな差があると思います。自分の努力ももちろん大切ですが、それ以前に大学に行くことのできる学費がなければ、私は進学したくても諦めるからです。
22歳・「あまりそう思わない」と回答
仕事(アルバイト)で努力しても認めてもらえない、怒られてしかいない 学校なども同じ。
16歳・「あまりそう思わない」と回答
私は若かったり、女であることを理由に虐げられてきた。医学部受験で女性が不当な評価を受けたりすることも起こっているし、女性の賃金やアルバイトの最低賃金は非常に低いままで、まともな生活するままならない。努力ができる地盤すら整っていない上に、頑張っても医学部のゲタ履かせのように女性であるというだけで虐げられることもある。特定の属性を持つ存在がそれであると言う理由だけで足切りをされる世の中で頑張れば報われるなんてのは絵空事だ。努力が必ず報われるというのは、努力をして報われ、この世の中で生き残ることが出来た運のいい人間の言う生存バイアスに過ぎない。
21歳・「全くそう思わない」と回答)
たとえ自分が努力したとしても子供のうちの家庭環境は変えることができない。奨学金を借りられればもっといい大学とかにも行けるのに、親が奨学金の書類にサインをしなければ借りることができず、大学にもいけない。なのでやむなく就職するほかない。
18歳・「全くそう思わない」と回答
努力したところで、勝者は家柄や収支や資格の人達だらけ。 私のような病気で薬だらけの生活を送っていて障害者で差別を受ける身分からしたら努力したって無駄って思う
21歳・「全くそう思わない」と回答

「どうせ何を言っても聞いてもらえない」 政治への諦め

家にお金がなければ勉強を頑張ったところで希望の進学先を選べないし、そもそも食べていくためのお金が必要という状況だと、勉強に集中するどころではない。格差社会の厳しい現実が浮かび上がってきます。

この声を政治にどう届けていくかが大きな課題となってきますが、「自分の声は国や行政に届いていると感じますか?」という問いに対して、半数以上の人が「全く感じない」と回答しました。「あまり感じない」という回答と合わせると8割以上という結果に。その理由を聞くと、政治への深い諦めが伝わってきます。

国や行政以前に、そもそも親にすら届いていない。家庭の中で声を封じられ、声を聞いてもらえるという考えすら思いつかなくなってしまっていた。どうせ何言っても聞いてもらえない。家庭でそういうことが積み重なると、自分が何を言いたかったかすらわからなくなる。
24歳・「あまり感じない」と回答
選挙は欠かさず行っているが、政治が変わった事がないから。
20歳・「全く感じない」と回答
学校に行けない子の対策とかいじめの対策とか全く改善?されてないし本音とか届いてないんだなって思ってます
13歳・「全く感じない」と回答
毎日のようにLGBT理解増進法や入管法改悪などの反対デモが行われていますが、政治家はそれを一切無視しています。 特定の人物の性格がというわけではなく、長い歴史から生まれた価値観や伝統的な家族観が社会に蔓延っているのが根本的な原因だと思います。
23歳・「全く感じない」と回答
毒親育ちについて救済措置がなく、カウンセリング費用は保険適用外。高齢者が多くて投票に行ってもなにも変わらない。
19歳・「全く感じない」と回答
子供たちの意見を地域や行政、そして国まで繋げる媒体がそもそも無いと思う。SNSなどのネットはどれだけ発達していれど、自分たちの気持ちや声を繋げられる環境などは一切整っていないと思うので、助けを求める子達やもっと制度などを変えて欲しいと感じる子が居ても声を上げられないのでは、どうしたら良いのか分からないのでは、と思う
18歳・「全く感じない」と回答
中学生の声が届くはずがないから
14歳・「全く感じない」と回答
俺達の話を聞いてくれないし、言ってもどうせ変わらないと思っているから。
18歳・「あまり感じない」と回答
外国は、同性婚が認められてるのに、何故日本は認められないのか。性暴力を受けた時の罪が、外国に比べて軽すぎるのでは、ないか。
14歳・「全く感じない」と回答
まず選挙をするにしても何にしても若者に政策内容が全く理解できない。 もっと分かりやすくしてほしい。
18歳・「あまり感じない」と回答
知事への手紙みたいなものを出しても、それによって行政が変化した覚えがなく、すべて向こう側で決められたレールの上を進んでいるように見えるから。
17歳・「あまり感じない」と回答
多数派の意見の方が尊重されるので数の少ない中学生の意見はあまり届いていないと感じるのと、選挙権がないから。
13歳・「全く感じない」と回答
生活保護を何回も申請に行っているけど通らないから、死ねと言われているように感じる。助けてくれたのはユキサキチャットさんとか今住まわせてくれている友達だけ。
21歳・「全く感じない」と回答

「政治に興味がない」「投票率が低い」のは若者のせいなのか?

自分たちの現在の状況を好転させるためには、政治が変わる必要があると感じてはいるけれど、それが実現するとは思えないし、何をどうすれば良いのかわからない、アンケートからはそんな若者たちの戸惑いと諦めが伝わってくるようです。

本来は、選挙のタイミング以外にも政治に対する意思表示の機会はあります。デモに参加したり、地元の議員に連絡を取ったり、請願・陳情という形で行政や国に声を届けたりすることも可能です。しかし、こうした社会的アクションは大人ですら敷居の高さを感じるものだし、そうした手法があると知らされている若者は多くないでしょう。また、「国や行政以前に、そもそも親にすら届いていない」という24歳の声も深刻です。

若者たちが絶望を感じていること。生活が苦しく、将来に希望を持てないこと。その実態を、なんとかして政治の場と接続しなければならない。困難の只中にある若者たちに寄り添いながら、その声を届ける活動がいま、求められています。

子どもたちやユース世代から悲痛な声がアンケートで届き、胸が痛んでいます。10代〜30代の投票率が低いということは指摘されてはいますが、そもそも学校のなかで主権者教育(※1)などが取り入れられいない日本の子どもたちや若者たちにとって政治などが遠いものであるということは明白です。私が子どもたちと関わりを持っていても、経済的に苦しい子ほど、投票や政治とは全く縁のない状況になっていることが多く感じられます。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/07/post-12652.php
関連している調査で、所得ではないのですが学歴別の投票率調査だと、『義務教育卒、中等教育卒、高等教育卒の3つの学歴群に分け、「国政選挙でいつも投票する」の回答比率を出すと、順に21.6%、36.5%、51.1%となる』という結果もあり、教育と政治参加の関連の高さが見てとれます。
また、選挙権の年齢は18歳に引き下げられたにも関わらず被選挙権年齢は25歳、30歳のままです(※2)。もし、10代、20代の市議会議員や町議会、国会議員の比率が高くなれば、周りの10代や20代も「同じ年代の人が選挙に出ている」と関心を持ちやすい社会になります。

そういった教育や社会的な環境の仕組み、またこども家庭庁などもできたことで声を拾い上げる仕組みなど整えていく必要があるのではないか、と改めて今回の記事を読みながら思いました。私たちもユキサキチャットのアンケートを通じて議員さんと相談者との接点をつくることなども模索していきたいと思っています。

(※1)いま、選挙権を持つことができない外国籍の子どもたちへの配慮からこの言葉の是非も問われています。海外では市民教育=Citizenship Educationと言われています。
(※2)衆議院25歳、参議院と都道府県知事が30歳、都道府県議会議員や市長(政令指定都市)、市区議会議員は25歳。各国の被選挙権は18歳が最多で、続いて、21歳、25歳という分布。

今井紀明

アンケートの自由回答全文はこちらよりご覧いただけます

アンケート自由回答全文

執筆:清藤千秋(株式会社湯気)/編集:熊井かおり

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