D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×スタッフ

その子にとって一番居心地が良いと思えるかかわりを考えたい。

認定NPO法人D×P(ディーピー)が、通信・定時制高校で行っている「クレッシェンド」などのプログラムの企画・運営にスタッフと一緒に携わるのが、D×Pのインターン生です。

今回は、小川麻綾(おがわ まあや)さんにインターンとして活動するようになった経緯や活動を通じて考えたことについてうかがいました。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています

子どもの「できた!」の瞬間に関わりたい

小川さん:立命館大学産業社会学部4回生の小川麻綾です。よろしくお願いします。小学校の先生目指して教職課程をとっています。2014年4月からD×Pのインターンとして関わり始めました。

D×Pスタッフ:早速なんですが、小川さんが先生になろうと思ったのはどうしてですか?

小川さん:先生になりたいと思うようになったのは、子どもの「できた!」の瞬間に関わりたいと思ったからです。特に小学校は学級担任制なので、1日の大半をクラスの子どもと一緒に過ごすことで様々な姿を見ることができると思います。「この子は毎日花の世話をしているな。」とか「あ、今すごくいい表情したな。」とか、勉強だけじゃないその子の素敵なところや小さな変化を感じとりやすい。

そして子どもと嬉しいや悔しい、楽しいなどの感情を一緒に味わうことのできる教師という職業に魅力を感じました。小学生って、その人の”土台”が出来る時期だと思うから、「自分のことを好きになる力」をつけてほしいし、私自身が児童から学ぶ姿勢を忘れない先生になりたいなと。

D×Pスタッフ:どんな先生になりたいですか?

小川さん:最近思うのは、”児童”や”みんな”じゃなくて”あなた”として子どもと関わる先生になりたい。今年の6月に教育実習に行ってから、先生って本当に多忙だなと痛感しました。でも、どんなに忙しかったとしても、例えば4年生を”4年生”という基準だけで判断したくないし、”みんなの気持ち”じゃなくて”あなたの気持ち”を聞くことのできる先生でいたい。

全体の中での基準も大切だけど、それだけじゃなくて昨日から今日、今日から明日、その子がどう成長したのかを見ることができる先生でありたいと思っています。

学校現場に入らず机上の勉強しかしてなかったことに気づいて、「このまま先生になっていいのかな?」と思うようになりました。

小川さん:私は1回生からある学生団体の活動に取り組んでいたんですが、3回生の終わりに代替わりになって、少し自分の時間がとれるようになりました。D×Pに入る前はちょうど、この少し落ち着いてきた時期だったので、卒業後学校の先生になるということを具体的に考える時間がとれたのですが、そのときふと自分がそれまで学校現場に入らず机上の勉強しかしてなかったことに気づいて、「このまま先生になっていいのかな?」と思うようになりました。

なので、学校現場に入る経験を今のうちにしておきたいと思いました。学校ボランティアや、学習塾、学校と連携した団体など、学生のうちから学校現場に関わることができる場はたくさんありましたが、どれもピンと来ませんでした。

その時にD×Pスタッフの川上さんから、D×Pで教職インターンの募集をしてるっていう連絡がきて。募集要項を読んでみたら、D×Pの3姿勢(※)にすごく共感して「あっこれだ!」ってピンときました。

D×Pの基本3姿勢とは「否定しない 」「年上/年下から学ぶ 」「様々なバックグラウンドから学ぶ」の3つ(2016年3月当時)
2019年度より、これまで大切にしてきた姿勢を受け継ぎながら「否定せず関わる」「ひとりひとりと向き合い、学ぶ」の2つにアップデートされています。

自分自身はそれまで「良い子街道」を走ってきたから本当に生徒に寄り添えるのかなっていう不安がありました。

小川さん:あと、D×Pのインターンでは、通信制高校にいる様々な事情を持った生徒と関わることができるところにも興味を持ちました。私は、「生徒に寄り添ってその子そのままを認められる先生になりたい」と思っていたけれど、自分自身はそれまで「良い子街道」を走ってきたから本当に生徒に寄り添えるのかなっていう不安がありました。

私はほとんど苦もなく「良い子」で小学校、中学校、高校、大学に通っていたので、自分とはまったく違う環境下で育った生徒を目の前にした時に、その生徒の気持ちが分かるのかと。だからこそ、学校ボランティアや学習塾のバイトでは関われないような生徒とも関わることができるかなと思って、D×Pのインターンに応募しました。

以前から、「子どもに寄り添い、その子どもを丸ごと認められる先生になりたい」という気持ちはありましたが、その一方で、「認めるって具体的にどういうことだろう?」っていう疑問を持っていました。

D×Pの3姿勢に「否定しない」という言葉があるんですが、「否定しない」とはどういうことなのか、「認める」とはどういうことなのか、D×Pのインターン期間を通じて自分なりにその答えを見つけたいと思っていました。

D×Pスタッフ:実際、D×Pでインターンを始めてみて、どうでしたか?

小川さん:D×Pに入るまでは「認める=良いこと」、みたいに思ってたんだけど、実際インターンを始めてみたら“認める”ということ以前に、「そもそも人に”かかわる”ってどういうことか」「相手を知るってどういうことか」から考えるようになってきました。

以前、D×Pで開催した公開型勉強会で「過不足なく関わる」っていう言葉を聞いてからはそれが自分の中でテーマになっています。「“かかわる”ってどういうことなんだろう」って。

話さない・発信しないというかかわり方も含めて、その子にとって一番居心地が良いと思えるかかわりを考えたい。

D×Pスタッフ:生徒と関わる時に何か気をつけていることはありますか?

小川さん:D×Pに入る前は、生徒とかかわる時は「聞くこと」を大切にしようと思ってたんだけど、今はその前に「その子が一番居心地が良いと思えるかかわり」を意識しています。

“聞くこと”っていうのは、相手が何かを話したり、話していなくても何かを自分に対して発信していることが前提になってるでしょ?でも、話さない・発信しないというかかわり方も含めて、その子にとって一番居心地が良いと思えるかかわりを考えたい。クレッシェンド4回の授業を通じてそう思うようになりました。でもまだ葛藤があって、自分のあり方については模索中です。

D×Pスタッフ:インターン中に出会った生徒のなかで、印象に残っている生徒はいましたか?

小川さん:はい。クレッシェンドの時に、1人の生徒が授業中ずっとうつむいていて、話をしてくれているコンポーザー(D×Pのボランティア)さんに背中を向けていました。最初はその様子を見て、「興味がないから聞いていないのかな」と思っていた。

でも、コンポーザーの人がプレゼンの最後に自分の描いたスケッチブックを見せながら「ここに描いているように…」って言った瞬間、
その生徒がぱっと振り向いたんです。それにはすごくびっくりした。「聞いてたんか!」と思って。

その時に、「あ、私は全然生徒を見てなかったな、見ようとしてなかったのかもしれないな。」と気付きました。一見話を聞いていないように見える生徒も実は大人の話に耳を傾けているんだなということを実感しました。

D×Pスタッフ:インターンをしているなかで、どういう時がやる気につながりますか?

小川さん:高校生と「近づいた!」と思える瞬間は、モチベーションに繋がりますね。最初出会った時は、高校生が緊張したり警戒したりして距離をとっているのですが、かかわりを通じて、「あっ近づいた!」と思える瞬間があって、嬉しいです。

他のスタッフやコンポーザーさんとの会話も刺激になります。バックグラウンドも職業も様々な人たちが集まっているので、たくさんの多様な人の考え方を聞けるのは面白いし、新たな発見が多いです。

純粋に高校生と関わりたいって思う人と一緒に働きたいな。

D×Pスタッフ:先日教員採用試験があったと思うんですが、教員採用試験とインターンとの両立はどうでしたか?難しかった?

小川さん:教員採用試験は、「ここまで勉強して準備すれば良い」という基準になるものがないので、自分はどこまで教員採用試験の準備に時間を使って、どこまでD×Pの業務に時間を使おうかという、バランスをとるのは難しかったです。でもスタッフやインターン生のみんなが支えてくれたので、乗り切ることができました。

D×Pスタッフ:他のインターン生は小川さんにとってどんな存在ですか?

小川さん:「切磋琢磨」かな。それぞれD×Pに惹かれているのは同じでも、その先にあるやりたい事や持っている強みは全く違う。そこから学ぶことは本当にたくさんあるし、話していてすごく刺激を受けます。お互い学び合えるこの関係性は私にとってとても大切で、「自分も頑張ろう。」って思えますね。

D×Pスタッフ:最後に、どんな人にD×Pのインターンを薦めたいですか?

小川さん:どんな人っていうのは正直ないです。自分自身で「やってみたいな」と思った人に来てほしい。ただ、少しでも興味を持ったなら一度話を聞いてほしいです。

「これまで学校以外でもバリバリ教育系の活動してました!」みたいな大学生じゃなくても、純粋に高校生と関わりたいって思う人と一緒に働きたいな。

10代をひとりにしない。D×Pで、ともに働きませんか?

D×P(ディーピー)は、10代の孤立を防ぐNPOです。

「10代の孤立」は、不登校・中退・家庭内不和・経済的困難・いじめ・虐待・進路未定・無業などによって、
いくつかの安心できる場や所属先を失ったときに起こります。

D×Pは、定時制高校での活動とオンラインでの活動を掛け合わせ、10代とつながります。日常的な雑談から、生徒の困りごとを拾いサポートにつなげる学校での取り組みと全国から気軽に相談できるLINE相談で10代の孤立を防ぎます。

ひとりひとりの若者が、どんな境遇にあったとしても、
つながりが得られる状態をつくる。これがD×Pの取り組みです。

ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会をともにつくりませんか?


Share

Top