「助ける/助けられる」の関係性を超えて。企業とNPOがつくる「循環」のかたち|株式会社ゲットイット 代表取締役 廣田優輝さん
認定NPO法人D×P(ディーピー、以下D×P)は、多くの方からの寄付によって活動するNPO法人です。
今回は、以前よりご支援いただいている株式会社ゲットイット (以下、ゲットイット)代表取締役の廣田優輝さん(以下、廣田さん)と、D×P理事長 今井紀明の対談をお届けします。
ゲットイットは創業以来、サーバーやネットワーク機器といったITハードウェアを取り扱い、現在は買取り・販売・保守・レンタル・データ消去までを一貫して手がけている会社です。
まだ使える機器を捨てず、次の使い手へつなぐ。その考え方を「Sustainable Computing®」と呼び、機器を循環させる仕組みづくりを事業の柱に据えています。
企業の社会貢献を「事業の一部」と捉え直したとき、企業とNPOの関係はどう変わるのか。D×Pとの関わりを振り返りながら、お話を伺いました。
なお、今回の記事の執筆には、株式会社ストーリーテラーズさんにご協力いただきました。
とにかくまずはやってみた、社会貢献

今井:廣田さんと最初にお会いしたのは、コロナ禍の2021年でしたね。テラ・ルネッサンスの鬼丸昌也さんからご紹介いただいたのがきっかけでした。
廣田:そうでしたね。懐かしいですね。
今井:廣田さんは2001年にゲットイットを創業されましたが、障害者雇用をはじめとする社会課題への取り組みは、当初から意識されていたのでしょうか?
廣田:いえ、最初から意識していたわけではありません。「障害者雇用」や「社会貢献」といった分野に関心を持ったのは、本格的に経営を学び始めてからです。
もともと私はビジネスが大好きで、まだ社員が少ない頃は「お客様の困りごとを解決してお金をいただく」こと自体がとても楽しかった。
でも社員が増えると色々な葛藤が生じ始めました。
私はお客様満足のために、絶え間ない「変化」を求めますが、社員は「安定や決まったルーティン」を求める場合も多いからです。
そのギャップに直面した頃から、経営の勉強を始めました。
まず読んだ本が、坂本光司先生の『日本でいちばん大切にしたい会社』です。そこに「会社は業績をあげるだけではなく、関わる人みんなを幸せにするためにある」と書いてあり、ハッとしました。
そこから坂本先生のゼミで学ぶため大学院へ進み、様々な企業を訪問する中で、障害者雇用など社会貢献の大切さを実感するようになりました。
今井: 現地で学んだことを、そのまま自社で実践されたのですね。
廣田:はい。ただ、最初は「いいことだからやってみよう」と始めた感覚でした。ですから、どこかで「やってあげている」という感覚や、儲け主義と思われないための「免罪符」のような気持ちもあったと思います。
切実な思いで活動している人たちと自分を比べて、違いを感じることもありました。
とはいえ、「応援したい」という純粋な気持ちもありましたから、様々な思いがグラデーションのように混ざり合いながら、手探りで始めていったのが本音です。
自社の事業は循環している、という気づき

今井:最初は手探りで始められたという社会貢献への取り組みですが、今日まで続けてこられたのはなぜでしょうか?
廣田:自分たちの事業を見つめ直したときに、実は社会課題と自社の事業に深い「つながり」があることに気づいたからです。
当社の事業を書き出してみると、買取り・販売・保守・レンタルと、IT機器を循環させるサーキュラーモデル(循環型モデル)になっています。
そこでIT機器の原料調達段階における紛争鉱物(※1)の問題や、廃棄段階における電子廃棄物(E-waste※2)の問題といった業界の課題に目を向けたとき、知り合いの鬼丸さんがコンゴで支援している活動と、完全に本業がつながっていると知ったんです。
今井:まさに事業そのものが、社会課題と結びついていたことに気づかれた、と。
廣田: はい。「いいことだからやる」というよりも、「事業戦略として必要だから取り組む」。そう整理できるようになることで、会社としても意思決定がしやすくなり、社員にもその意味をきちんと伝えられるようになりました。
(※1)紛争鉱物:コンゴ民主共和国をはじめとする紛争地域で採掘され、武装勢力の資金源となっている鉱物資源(スズ、タンタル、タングステン、金)の総称。スマートフォンやパソコン、自動車の電子部品など、多くの工業製品に使われています。
(※2)E-waste:使用済みとなった電子機器の廃棄物のこと。適切に処理されないまま途上国へ輸出され、現地の健康被害や環境汚染につながることが問題視されています。
あげる側と、もらう側に分かれない関係性

今井: これまでクラウドファンディングをきっかけに、D×Pに継続的なご関わりをいただいています。廣田さんがこうして応援を続けてくださる背景には、どのような思いがあるのでしょうか?
廣田: まず、今井さんの活動に深く共感していること。その上で、私たちの事業にとっても相乗効果(シナジー)があると整理できているからです。単なる慈善活動にとどまらず、新しい企業とのつながりや認知にも広がっていきます。
結果として私たちの事業にも良い影響をもたらしてくれる活動なんです。
今井: パソコンもこれまで100台以上ご寄贈いただきました。受け取った高校生からのメッセージを御社の社員の皆さんにお伝えした際も、すごく関心を持って受け止めてくださいましたよね。
廣田: はい。私たちの主力事業はサーバーや通信機器などで、普段はBtoBのインフラを支える仕事です。24時間365日つながって当たり前の世界なので、エンドユーザーから直接「ありがとう」とお声をいただく機会はあまり多くありません。だからこそパソコンの寄贈は、自分たちの仕事が直接誰かの役に立っていると、社員自身も実感できる貴重な機会になっているんです。
今井: パソコン寄贈の際、廣田さんから「若者に一度倉庫へ来てもらい、一緒にパソコンを組み立て作業をするのはどうか」とご提案いただいたのがとても印象的でした。
廣田: 私は「あげる側」と「もらう側」に分かれてしまう関係性にはしたくないんです。ただ品を渡すだけではなく、そこから自立へ向かうきっかけになる仕組みが理想です。一方的な「助ける/助けられる」という構図を超えていきたいですよね。
だからこそ現場で作業に関わってもらい、その一環として若者にパソコンを持ち帰ってもらう形を希望させてもらいました。
今井:お互いの「循環」にしたいという想いですね。
廣田: その通りです。そう考えるようになったきっかけのひとつが、ドン・キホーテを展開されているパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスさんの給付型奨学金の取り組みでした。支援を受けた学生さんが成長し、やがて自社に興味を持って入社してくれるかもしれない。
若者に成長の機会を提供し、それが巡り巡って自社や次の世代へつながっていく循環型のモデルに感銘を受けたんです。
多くの企業は広告費には大きな予算を投じますが、社会活動への寄付となると慎重になることがあります。それは寄付が事業と切り離されて捉えられているからだと思うんです。
私たちが継続して関われているのも、単なる寄付ではなく「未来への投資」として捉えられているからだと感じます。
D×Pさんを通じて、若い世代の方と接点を持てること自体が私たちにとって大きな学びです。若者の中には適切な環境や機会に恵まれれば大きな力を発揮できる方がたくさんいます。実は採用に悩む企業は多く、私たちも例外ではありません。そうした出会いも大切にしたいと思います。
今井: 若い人たちにとっても、「自分たちを応援してくれる企業がある」と知ることで、将来の選択肢や社会とのつながりが大きく広がっていきますね。
廣田: そうして知ってくれた方の中から、「ゲットイットで働いてみようかな」と思ってくれる人が出てくるかもしれません。 応援される立場だった人が、今度は事業を動かす側になり、また次の誰かを支えていく。
「助ける/助けられる」という境界線をなくし、人も機会も巡っていく。
そんな社会をめざしていきたいですね。
企業だからこそ届く声、NPOだからこそ取れるリスク

今井: 私はNPOの役割について、社会への「啓発」でもあると考えているんです。現場で活動するだけではなく、社会に課題を知ってもらい、関わりを促すところまでやり切るのが私たちの役割だなと。
D×Pは大阪の繁華街にユースセンターを開設するなどして、若い人たちへ直接アウトリーチしています。加えて、社会への情報発信や応援の輪を広げる取り組みも大切です。
この両軸を進めるうえで頼りになるのが、法人企業の皆さんのお力なんです。
廣田: おっしゃる通りですね。今井さんたちの「社会に課題を知ってもらって、巻き込んでいく力」は、私たち企業にとっても非常に勉強になります。
私たちはどうしても「事業として継続できるか」という視点で考えてしまいます。一方で今井さんたちは、採算という物差しだけでは測れない領域にも真摯に挑戦されていますよね。
大阪で運営されているユースセンターも、純粋なビジネスの観点から見れば、維持費がかかる場所への投資は判断に迷うところだと思います。
今井: 行政の制度の狭間に落ちてしまい、頼れる大人も身近におらず、居場所がない若者たちにとって、ユースセンターは大切な場所です。ですから「私たちがやる」と決断しました。実際に関西だけでなく、中四国エリアからも居場所を求めて来られる若者がいるんです。
そして、こうした活動を利益目的ではなく「寄付」で運営しているからこそ、果たせる役割もあります。リスクを取ってモデルケースを作ることで、国に提言したり、他県の自治体に参考にしてもらえるような仕組みへ発展させることができるからです。
法人企業は「事業として継続する仕組み」を構築していく。一方で私たちは「今、目の前で必要なこと」だからこそリスクを取って先に動く。
お互いのアプローチは違いますが、社会にとってどちらの役割も欠かせないものだと感じています。
まずは、自分の枠の外へ

今井: 企業とNPOは視点が異なるからこそ、ご一緒できることがたくさんありますよね。実は今後、取り組んでいきたいことが2つあるんです。
ひとつは、「支えてくださっている企業様の存在が外にも伝わるようにしていく」こと。 もうひとつは、「企業の皆さんに私たちの現場へ足を運んでいただくこと」です。
実際に現場に足を運んでいただいて、初めて見えてくるリアルな現状がありますから。
廣田: 当社の社員にも、ぜひ参加させていただきたいですね。当社には、ボランティアの費用を会社が負担し、有給で参加できる制度を用意しています。ただ、実際に行動に移す機会は、意識して作らないと難しいのが現状です。
社内にいると、どうしても限られた視野で物事を捉えてしまいがちです。人の成長とは、「視野が広がっていくこと」だと思うんです。そのためには一度「自分の枠」を出てみることが大切ですが、日常の中ではそのきっかけを得にくいですから。
今井:私たちは毎週、食糧発送の作業を行なう日がありますので、ぜひお越しいただきたいです。以前、別の企業様が来てくださった際も、「自分たちの寄付がどのように役立っているか実感できた。非常に有意義な機会になった」とおっしゃっていただけました。
廣田: ぜひ、うちの社員と一緒に伺わせてください!
今井: 企業とNPOが手を取り合うことで、生み出せる可能性はまだまだ広がると感じています。これからも、ぜひご一緒させてください。
インタビュー・執筆:株式会社ストーリーテラーズ/編集:熊井かおり
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