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2022年高校生の就活、大阪で「併願」可能に!10代が可能性を発揮できる就活とは?

2022年、大阪の高校生の就活が「併願」可能となりました。これまでは、多くの地域で取り入れられている「1人1社制」でした。1人1社制は、同時応募ができず1社ずつ就職試験を受ける制度です。

大学生の就職活動では、何十社も同時に応募することができます。しかし、多くの企業を比較検討できる反面で就職活動の長期化や学生にかかる負担が課題に上がっています。高卒就職の仕組みである1人1社制は、就職活動の長期化を防ぐための制度でした。一方で、あたらしい仕事が増え、高校生のニーズが多様化するなかでは選択肢が得づらい制度にもなっています。

1人1社制とは

同時応募は原則認められず、1社ずつ応募し内定がでればその会社で働くことになります。もし不採用だった場合は、不採用通知を受けてから2社目の応募の検討を始めます。就職活動に追われて学業に支障が出てしまうことを防ぎ、就職活動にかかる高校生の負担を減らすことがメリットにあげられます。企業側も採用が辞退されづらい制度です。一方で、検討が不十分なまま内定となり、早期離職につながっているという指摘もあります。

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」

「ほとんどが1ヶ月以内で辞めてしまうんです」 ある定時制高校の先生の声

D×Pは、2017年より高校生の就職について課題感を感じていました。関わる定時制高校の高校生は、卒業後の進路に「就職」を選ぶケースが多いです。しかし、就職希望者は多いものの就職までに至らないケースも多いという現状がありました。また、就職しても「ほとんどが1ヶ月以内で辞めてしまうんです」という先生からの声も聞かれました。

ヒアリングを重ねるなかで、高校生の就職に関する課題は、高校生本人や学校に課題があるというよりも、高卒求人の仕組みに課題があることがわかりました。1人1社制の慣行や、成績順によるマッチング、先生の多忙さ、求人票の情報量の少なさなど、さまざまなハードルがあることがわかりました。

2017年度からD×Pでは、定時制高校内での進路相談室(2019年度終了・現在は居場所事業のなかで相談を受けています)、起業やフリーランスなど就職以外の働き方を模索する高校生コワーキング(2020年度より感染症対策をうけ休止)、仕事体験ツアー、プログラミングキャンプなど、10代が進路や生き方について考える機会を提供してきました。

「自分が働くイメージはあんまり湧かない」10代の声

日々出会う定時制高校の高校生は、仕事経験がある生徒も多く、それぞれに才能に溢れていて社会で活躍していけそうな生徒もとても多いです。一方で家族など身近な大人の仕事や働き方しか知らなかったり、アルバイトの経験がなかったりと仕事に対するイメージを持ちづらい生徒も多いです。

欲しい物もそんなにない。みんなが言うようにがんばって働く必要あるんかな?
働くなら自分に合った仕事がしたいけど、やりたいことも分からない。周りの人に相談してもみんな言うこと違うし、その人の言うことが自分に合ってるとは限らないから、結局どうしたらいいんだろう?
色んな仕事に興味はあるけど、自分が働くイメージはあんまり湧かない。

10代の進路選択の幅を広げる。D×Pの取り組み

定時制高校での進路に関するプログラム

定時制高校で行なっているD×Pの独自プログラム「クレッシェンド」。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。2・3年生では、進路につながるプログラムを実施しています。

働く・学ぶについて、コンポーザーが自分の経験を話します

クレッシェンドは、総合的な学習の時間などの出席に関わる授業の枠組みで行ないます。自由参加ではなく、授業の枠組みで行うことでサポートを必要とする高校生にも出会いやすくなります。

経済的な理由で卒業後は就職だと考えているAさん

Aさんは、映像に興味があり、現在も動画制作で仕事をしながらお金を得ています。卒業後は、動画制作だけでは食べていけないと感じているようで、「しばらくは他の仕事もしながら続けていく必要があるのかな」と話していました。経済的に進学は難しいと考えており、進路は就職で考えていました。進学しても、授業とバイトの両立をするのであれば、体を壊すだろうと考えている様子でした。コンポーザーの「働くと自分」の話を聞き、奨学金について質問したり、奨学金で進学したスタッフと話をしていました。授業後、スタッフに「進路のことまた話したい」とメッセージを渡していました。現在は、進学も考えているそうでオープンキャンパスに行くと話しています。

映像に関わる知識も幅広く得たい。誰かに言われた仕事を時間内に淡々とやるというよりは、自分が窓口になって自分のペースで進める事が楽しい。

仕事体験ツアーの拡充

D×Pの仕事体験ツアー先は26件。コロナ禍で実施を見合わせていた時期もありましたが、今年度よりさらに多くの生徒と仕事体験ツアーに出かけられるように居場所事業のなかで告知しています。

「株式会社ヒューマンフォーラム」様での仕事体験ツアーの様子

仕事体験ツアーは、高校生ひとりひとりの希望や状態に合わせた「働く具体的なイメージを持てる機会」として、パートナー企業の方々と一緒につくる職場見学やインターンシップ企画です。

アルバイトなどで経験する身近な仕事以外はなかなかイメージがしづらく、「働きたくない」「やりたいことがない」と感じている生徒にとっては就職活動自体も進めづらいという課題があります。D×Pは進路を決める時期になるまでに、働く大人に出会う機会や自分の適性を知る機会が必要だと考えています。また、本人が興味を持っている仕事を体験するだけでなく、スタッフの目線で生徒が興味を持ちそうな仕事やツアー先も提案しています。

飲食店の仕事を体験したAさん

「人と話すのが苦手」「なんとなく(アルバイトに)応募するのが怖い」と話していたAさん。仕事体験ツアーで実際に経験するなかで、「皿洗いならできるかも」と自分に出来そうな仕事を見つけていました。また苦手意識を抱いていた接客に対しても、「できるかもしれない」と話していました。後日、実際に飲食関係のアルバイトに応募しました。

自分が思ってた以上に大変だった。小規模なんやろうけどめっちゃ忙しいなと思った。こんな忙しいことあるんやってびっくりした。たまに自分も外食行くけど働いてる人たちすごいなぁと思った。店とか働いてる人の雰囲気とか大事やと分かった、これからバイト探す時は1回見に行ったりしてもいいかも。

アパレルの倉庫の仕事を体験したBさん

3年生のBさんは服が好きで、卒業後は一旦就職してお金を貯めて服飾関係の専門学校への進学を検討していました。服飾業界の仕事について知ることや卒業後の仕事について考えることを目的に仕事体験ツアーを実施しました。仕事の間にも「この作業はどれぐらいの時間で終わらせるものですか」「どんな年齢層の人がいるんですか」「何人体制でやってるんですか」「何時から何時で働いてるんですか」と業務内容や働き方について質問していました。後日、大阪にあるアパレル関係の仕事を自ら探して応募し、働くことになりました。

音楽流しながらやるとか聞いたことなかったからいいなと思った。こういう(仕事や働き方ができる)ところが大阪にあったら、働きたい。接客とかより裏の仕事の方が続きそう。

株式会社アッテミーとの協働

仕事体験ツアーだけでなく、株式会社アッテミーが運営する高校生対象のインターンプログラムにD×Pが関わる定時制高校の生徒を紹介・つなげることができるようになりました。生徒本人の希望があれば、株式会社アッテミーより求人の紹介や就職活動のサポートも受けることができます。今後生徒に案内し、進路や仕事に触れる機会を提供していきます。

10代が可能性を発揮できる機会を

1人1社制が緩和され2社まで応募できるように選択肢が広がったことは、高校生が他の企業と比較したり考えたりするよい機会となります。その上で若年層の就労についての課題解消には様々な視点での取り組みが必要だと感じています。

D×Pで出会う生徒も、ロールモデルとなる大人が親や家族だけの場合、見知った働き方・仕事以外が選択肢に上がりません。高校生の場合、アルバイトで経験できる職種も限られているため、インターンシップや職場見学など多くの職業に触れる機会を作ることも重要です。

D×Pが関わりサポートして就職した10代は、ITエンジニア、ゲームライター、外資系の在宅ワーク、製造業や清掃業、一般廃棄物業などさまざまな職種で活躍しています。過去、不登校や高校中退・ひきこもりなどを経験していたり、人と話すことにハードルがあった若者たちです。働くことにハードルがあっても、その人に合ったサポートが得られるとひとりひとりが持つ可能性を発揮することができます。

1人1社制が合う生徒も、合わない生徒もいます。また、学校だけで高卒生の就活を支えるには先生の負担増大も懸念されます。現状は学校斡旋がほとんどで自己開拓の道が示されていません。生徒にとっては、学校に届く求人が全て。IT企業などに興味持っていたとしても就職先が「ない」ように見えてしまいます。

より自己開拓の機会を広げられるためには就職ルールの緩和は必要です。サポートステーションや民間の就職サポートも使いながら、高校生が自分の進路を考えていけるようになるのが理想のかたちだと考えています。経験の浅い若年層は、挑戦し経験を重ねるなかで自分の適性を知ることができます。早期離職を失敗とせず、再挑戦を応援できる社会をつくっていきませんか?


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