私にとっての”否定しない”とは、「人として認め合う」ということ -D×Pインターン 中村しおりさんインタビュー

D×Pのインターン生のひとり、中村しおりさんはD×P初の「休学インターン生」!
大分にある立命館アジア太平洋大学を休学し、大阪にあるD×Pでインターンをしてくれました。

授業の企画運営だけでなく、営業・イベント運営・広報・寄付まで幅広く業務を担った中村さんに、
D×Pでインターンを始めた経緯や、仕事内容を詳しく聞きました。

日本は先進国だけど、こんなに問題がたくさんあって。
そんな自分たちが発展途上国に教育支援するって、どうなんだろう?と。 

1

(D×Pのボランティア研修会に参加する中村しおりさん ※写真中央)

 

— 今日はよろしくお願いします。

中村さん:立命館アジア太平洋大学3回生 の中村しおりです。2014年3月から2014年12月まで、大学を休学してD×Pのインターン生として関わりました。よろしくお願いします。

—どんなきっかけでD×Pを知りましたか?

元々は日本の教育問題に疑問を持ったことがスタートでした。
大学1回生から3回生まで、発展途上国に対し教育支援活動をしている学生団体に関わっていました。活動を進めるうちに、その団体のリーダーに近い立場になって、渡航などの運営をしていたんですが、「自分たちがしていることは、発展途上国のためになっているのかな?」という疑問が湧いてきました。日本はいわゆる「先進国」で環境は豊かなはずなのに、いじめや不登校など、教育や学校に関わる問題が多い。そんな日本という国の中で考えたプログラムを海外に持っていくことに違和感を感じました。そこでもう一度日本に戻って、どうしてそういう問題が起きているのか、日本の教育現場がどんな状態になっているのかを実際に見たいと思いました。私自身、日本の公立校で殆ど学んだことがなかったので、実際に高校生と実際に話してみたり、先生と話して、日本の学校がどうなっているのかをもう1回見直したかった。

—中村さんは、一般的な公立の学校には通っていなかった?

私は小学3年生から高校3年生までの10年間、京田辺シュタイナー学校※という学校に通っていました。公立の学校には小学2年生までしか通っていなかったので、日本で行われている公教育が「普通」という意識はなく、「日本では公立の学校に行くことが一般的みたいだけど、シュタイナーのような教育もある。世界にはもっと色んな教育や考え方があるんだろうな」という感じで過ごしていました。
※京田辺シュタイナー学校は、ルドルフ・シュタイナーという哲学者の思想を基に創られた学校。受験のための勉強ではなく、身体や感覚を使う体験や芸術系の授業が多く、それらを通して生徒が主体的に学びを深めることを大切にしている学校です。

シュタイナー学校を卒業したときに、興味を持っていたことが2つあったんです。一つは不登校生やいじめを受けてしまった子に対するカウンセリングで、もう一つは海外の子どもに関わるボランティア活動でした。当時は「とにかく海外に行ってみたいな」と思っていて、留学生も多い立命館アジア太平洋大学に入学し、発展途上国でボランティアをする団体に入りました。でも結局、海外での活動がまわりまわって、日本の教育問題に興味の矛先が戻ってきたなと感じます。

―どんな経緯でD×Pを知りましたか?

2013年12月頃に大学で偶然共同代表の朴さんの講演を聞いたことがきっかけです。ほんの15分ぐらいの講演だったんですが、D×Pの事業内容やビジョンについて説明してくれました。その時に団体の雰囲気や考え方が、自分の中でもやもやしていることを言葉にしてくれているような感じがして、「あ、これや、これ行ってみたい」と直感で思いました。講演の後で朴さんに「興味があるので話を聞かせてください」と直接話しかけました。

 

1回ものすごく気持ちが落ちたこともあります。
「自分なにしてんねやろ」とか思ってしまって。

2

―中村さんは、授業運営にもD×Pの事務局運営にも関わっているインターン生ですよね。授業運営だけに関わっているインターン生が多いなか、中村さんはマルチに活動されていましたが、そもそもどうしてそういうインターンをされようと思ったんですか?

今のD×Pでは、「教職インターン」と「広報・寄付インターン(事務局インターン)」というくくりで募集していますが、私が関わった当時のD×Pでは、そういった分類がありませんでした。「高校生と関わったり、授業の運営の方法や、プログラムがどういう風に作られているのか知りたい」と朴さんに相談したところ、「授業運営だけのインターンだと週2日で足りちゃうよ。その授業を運営する土台となっている学校への営業や調査といった仕事もあるし、そっちは人員が必要だから、やってみない?」と言われました。その時に、「確かに授業をつくるためにはそういう仕事も必要だよな」と気づいて、授業を運営しつつも、活動の土台となる営業活動などの仕事もすることになりました。

―インターン中はどんな業務をしていましたか?

クレッシェンドなどの授業運営や、授業後も生徒に関わり続けるための企画の運営をしました。通信制高校だけでなく、全日制高校・定時制高校の授業運営にも関わることができました。また、講演と学校営業の同行もしました。インターン初期は先生との話を記録としてまとめるために議事録を作成したり、通信制高校に対する調査事業にも関わっていました。インターン後半は公開型勉強会と活動説明会などのイベント運営を担うようになりました。インタビュー記事の作成をすることもありましたね。

―業務がたくさんですね…!一週間のうち、どんなスケジュールで仕事をしていましたか?

木曜日と祝日に休みをもらっていて、土曜日授業があるときは週5日で関わっていました。週1.5〜2日分ぐらいが授業運営に関する業務で、週3~4日ぐらいが、広報・寄付に関する業務をしているイメージです。最初、仕事の違いをあまり考えず仕事をしていたところ、途中からわけがわからなくなって、10月に気持ちがすごく落ちたことがあります。「自分なにしてんねやろ」とか思ってしまって。

―「仕事の違い」って、具体的にどういうことですか?

授業運営では、「高校生に対してどんな価値を提供できるか?」を考えますが、勉強会や活動説明会は「寄付者さんやボランティアさんなど、協力してくれそうな人を集めること」が目的です。それぞれ目的が違うから、そこを意識して頭を切り替えないといけない。でも、その頭の切り替えが私は上手くできてなくて・・。

10月に気持ちがすごく落ちた時は、スタッフの川上さんが「仕事減らそうか」って言ってくれました。でも、その時は「仕事減らす」で自分は満足するのかな?と思って、インターン中に学びたいことがそれで達成できるか?と考えたときに、やっぱり仕事は減らしたくないなって思った。「やっぱり減らすのは嫌です」って言ったら、川上さんに「ほんまにできるんか」と3回ぐらい確認されたけど、「やります」って伝えました。その後はどうやったら実際にできるかを考え、業務内容を時間で分けたりして頭の切り替えがしやすいように工夫したりしました。

―インターンの業務のなかで、「これは楽しかった」と思うものはありましたか?

コンポーザーさんやインターン生へのインタビュー記事作成が結構好きでした。人の話を聞くことが純粋に楽しかったので。完成した記事を見て、みんなが褒めてくれたのも嬉しかったです。

▼中村さんが関わったインタビュー記事
インターンインタビュー:立命館大学4回生 小川麻綾さん
インターンインタビュー:龍谷大学4回生 近藤紗恵子さん
・コンポーザーインタビュー第2弾 : 北井祐子さん
・コンポーザーインタビュー第3弾 : 田中雅美さん

今までそんな業務をしたことがなかったから、「それが好き」ってわからなかったんです。人の話を聞くのは元々好きだったので、その人の話を聞いて、その人が言いたいことを伝わりやすい形で文章にするというのが楽しかったです。

 

悩みつつも、ただ同じグループにいて、その子の隣に一緒に座っていました。

3

―授業中は、生徒とどのように関わっていましたか?

最初は緊張していましたし、「高校生に合わせないといけない」と思っていました。それをやめて「私のペースでいよう」って思ってからは、生徒と関わるのが楽しくなりました。

最初に授業に関わった時に、D×Pのスタッフの川上さんに「しおり、存在感ないよな。授業中、しおりが何してたか記憶がないんやけど」って言われて。結構グサッときたんですけど、目の前の生徒に合わせようとし過ぎてしまったからなのかなと思いました。普通の人と会話するときに、相手にばかり合わせてしまっていたら不自然ですよね。他のスタッフを見ていても、その人のまま生徒と横にいて、無理して喋らない。「自分のペースでいたらいいか」と思ってから、変わったんだと思います。そうしたら、相手も気を使わなくなる感じがしました。こっちが気を回しすぎるとお互いに気を使ってしんどい。ただ、一緒の空間にいれるようになったらいいなと思います。

―今まで関わった生徒で、印象に残っている生徒はいますか?

先日、定時制高校で授業を行ったときに、全3回授業があるんですが、最後の3回目の授業にだけ来てくれた生徒がいたんです。その子はマスクと帽子を付けていて表情が見えなかったから、「どう話しかけたらいいかな」と思って様子を見ていました。

その日のプログラムは「ユメブレスト」というプログラムで、自分のちょっとでもやってみたいこと(=ユメ)を絵に描いて発表するものでした。でも「やってみたいこと」は、1回目と2回目の授業を経ることで描けるようになるものなので、いきなりその回だけに来てくれた生徒にとってはユメを描くのは難しいだろうと思い、「名前だけ書いて、やりずらかったら絵は描かなくてもいいよ」と伝えました。

何回かクレヨンを手に取ってはいましたが、描かずにそのまま置くというのを何回か繰り返していました。その様子を見て「描けたら描いてなー」と声をかけながら、その子の肩にぽんぽんって軽く触ったんです。そしたら、その生徒に低い声で「触るな」って言われて。一瞬ビックリしたけど、確かに初対面だし、いきなり触られたら嫌な子もいるよなと思って、「ごめんな」と謝りました。でもその後どう接したらいいかわからなくなって、「どうしよう?」と焦りましたが、その時は生徒を受け入れ続けるしかできないなと思いました。悩みつつも、ただ、同じグループにいて、その子の隣に一緒に座っていました。

授業では、席を立って他の人の絵も見に行く時間もありますが、その時に、その生徒は1番に立ち上がって他の生徒の絵を見に行きました。そして、授業の後半に、自分のスケッチブックと学びシートに一気に自分のユメを描いたんです。

どうしてその子が最後にユメを描いたのかはわかりません。嫌々描いたのかもしれないし、他の生徒の絵に触発されたのかもしれないし、わかりません。ただ、「授業を抜けださずにそのまま座っていて、最後に一気にユメを描いた」という事実があって、その時に自分は「そこにいていいよ」という空気を出し続けることはしていました。その結果かどうかはわからないけど、彼はずっとそこにいた。このことは、自分の心に残っている出来事です。

―普段授業に関わるなかで、楽しい仕事はありましたか?

全日制高校の授業で進行をしたときは楽しかったです。私はこれまで公立高校に通ったことがなかったので、初めてその高校に訪れた時は、自分の通っていた学校とのギャップに驚いてしまって。「みんな同じ制服を着ていたら、誰が誰かわからへん!」と思いました

全9回の授業の2回目から授業の進行をするようになったんですが、自分がクラスの前に立つと、生徒も私のことを認識して、話しかけてくれる。そうすると、私も生徒一人ひとりと話す機会が増えます。最初は「自分 対 クラスのみんな」という感じだったのですが、最後には一人ひとりと関われるようになって楽しかったです。
私は頼りない感じだったので、授業中に生徒が助けてくれるんです。クラスにムードメーカーのような高校生が2人いて、教室で皆が騒いでいると「はーい、みんな静かにしよ」って言って。私より影響力あるやんか!と。

 

私にとっての、”否定しない”とは、
まず「受け入れる」「人として認め合う」ということなんです。

5

―D×Pに関わるなかで、成長できたなと思うポイントはありますか?

そんな難しい質問(笑)
「自分が今後何をしたいのか」がわかってきたことでしょうか。前は自分のやりたいことがぼんやりとしか見えていなかった。「何をしたいのかがわからないけど、色んなことをやってみながら、自分に合うものを見つけていこう」というような形で仕事をしていました。そのなかで、インタビューが好きだったりとか、生徒一人ひとりとゆっくり話すのが好き、ということに気づくことができました。

仕事をするときの姿勢も知ることができました。極論、学生は「これってなんですか?」と学びの姿勢を見せていれば、教授も満足してくれます。でも、社会人は価値を生み出し続けないといけない。最初はD×Pで働き出した時は「わかりません」とよく言っていたけど、朴さんから「あんまりわかりませんって言わない方がいいよ。自分はどう考えるとか、ちゃんと言ったほうがいいよ」と言われて、「そうか、学生と違うんだな」と気づきました。D×Pで働く周囲の大人の仕事ぶりを見て「仕事ってこういう風にするんや」というのを知ることができましたし、知った上で、「じゃあ自分はどういう働き方をしたいかな」と考えることができたのは、すごく大きいなと思います。

―インターン後、何をする予定ですか?今後したいことや、夢があれば教えてください。

夢は、D×Pに関わりだす前とあまり変わっていないですね。
もともと人の心やカウンセリングに興味があったと言いましたが、それは、様々な事情により自分のことを上手く出せない子が、もっと生きやすいようになればいいなと思っていたからで、今もその人がその人らしく生きることができたらいいなと思います。以前も今もその夢は変わっていないけど、D×Pに関わることで、実現するための具体的な道筋が見えてきたのかなと思います。

実際にD×Pを通じて興味のある企業にも出会えたし、生徒と実際に関わることで気づいたこともあります。それってもしかしたら、D×Pじゃなくても、他の団体でインターンしたって見えたことなのかもしれない。でも、D×Pの「否定しない」という姿勢や価値観に自分はすごく共感していて、そういう自分が共感できる場の中で、実際に高校生にも関わって、さらにスタッフの話を聞いて…という、相乗効果があって、ものすごい学びになったのかなと思う。この環境にいたからこそ学べたことがすごくある。

―ぶっちゃけ、休学してよかったですか?

うん。(笑)

―最後に、どのような人にD×Pのインターンをオススメしたいですか?

D×Pの「否定しない」という価値観を理解してくれる人であれば、誰でもいいんじゃないかな。

「否定しない」という言葉は、私にとっては「受け入れる」ということなんです。
私が通う立命館アジア太平洋大学は、留学生の多い大学なので、すごく色んな人がいました。色んな文化が混ざり合った状態で生活をするので、ときには「やめてくれ」と思うような出来事に遭遇することもあります。例えばベトナムから来た人がキッチンでベトナム料理を作ったりする。でも、ベトナム料理って日本人からするとすごく独特な匂いで(笑) 「やめてほしい…」と思うけど、それもその国の文化。最初は理解できなくても、異なる文化や価値観をまず受け入れてみないと、何も進まない。友達にもなれない。だからまず受け入れて、その上で考える。そういう姿勢は大学にいた時から大事にしていました。

「否定しない」って色んな言葉で言い換えることができると思うんですが、自分にとっては、まず「受け入れる」、「人として認め合う」ということでした。人によってしっくりくる言葉は違っても「否定しない」に共感できて、「そうしよう」って思える人だったら、誰でもいいのかなと思います。


 

インタビューは以上です。
中村さん、ありがとうございました!

認定NPO法人D×Pでは、一緒に授業づくりをしてくれる、
「D×Pインターン 企画運営スタッフ」を募集しています。
教師を目指す前に、高校生の授業に関わってみませんか?

 

詳細はこちらから。

intern_A5_0411

 

 

ページトップへ