“法的フレーム、社会的フレームによるセックスワークの「不安全」をなくし、労働環境を良くしていきたい”—第18回D×P公開型勉強会レポート(後編)

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2014/9/19に開催されたD×P第18回公開型勉強会のテーマは「イチから知る、セックスワーカーのお仕事」。
前回のレポート前編では、ゲストであるSWASH要さんの講演をお届けしました。この後編では、要さんとD×P共同代表の今井&朴の3人での対談をお届けします!

 


 

朴:余談ですが、D×Pの勉強会でみなさんがこんなにペンを持っていらっしゃるのって珍しいです(笑)それだけ大切なことが多かったんだと思います。僕自身も、要さんにお話を聞いて、法規制などのせいで問題がより深刻で見えづらくなってしまうこともあるのかと色々考えるようになりました。

今井:今日のタイトルが「イチから知る、セックスワーカーのお仕事」だったので、たぶん参加者の方にも様々なスタンスの方がいらっしゃると思うのですが、そもそも性産業や性風俗の仕事に入っていく動機って何なんでしょうか?なぜ近年、性産業に関わる人口が増えているんですか?

要:2000年に行った「風俗嬢意識調査」(ポット出版2005年)では、動機に関して、「自分や他人の借金」などネガティブな経済的な理由で働かざるを得ない人が3割、「こづかい・遊び」「貯金」「将来のため・夢」などポジティブな理由が7割でした。今は生活や借金など経済的困窮の動機が4割くらいになっています。

ほぼ毎年のように風俗店をまわってセックスワーカーの調査をしていますが、2013年のデータは平均年齢30.9歳、平均月収34.1万円、勤続年数3.9年でした(現在集計数150人)。2000年の調査を見てみると平均年齢23歳、平均月収が63.8万円、勤続年数は1年5か月でした(回答数126人)。いずれも関東中心の風俗店に協力してもらって、店舗型非ホンバン産業で働くセックスワーカーにアンケートをとりましたが、平均年齢が7歳上昇して収入は半減。勤続年数も2年以上延びています。2013年の調査は熟女店が以前より多かったのと、札幌の風俗店も少し入っているので、業種や地域性を加味したバイアスは考慮しなくてはならないですが、風俗参入が増えて、だいぶ稼げなくなっているのは間違いないと思います。

今井:どうしてそんなに減ってるんですか?

要:経済状況が悪くなっていることや、1999年にが合法化されて、デリヘルのお店や、働く人が増えて、さらにお客さんの財布の紐も固くなっているからだと思います。現在夜の仕事をしている労働人口は30万人いるとも言われています。

朴:以前は、性風俗って遠い世界のイメージがあって、高校生の頃などに水商売をした人が、そのまま性風俗の仕事に流れるということが多かったけど、最近は色々なキャリアのなかの1つという感じで性風俗の仕事に入ってくるという話を聞いたことがあります。

要:そうですね。本当に「普通の人」が働いていると思います。スマホやインターネットで、高収入のアルバイトを探すと、性風俗の仕事を容易に見つけられるようになりました。

朴:じゃあ、経済的な苦しさやしんどい経験を持った人たちだけがここに集まるというわけではないんですね。

要:そういう人もいるけど、それは他の職業にも経済的に苦しい人やしんどい経験をした人がいるのと同じように、風俗にもいるということです。日中は会社員や学生をして夜だけ風俗で働く兼業の人も多いし、平日ほかの仕事をして土日だけ風俗で働く人もいます。昼間しか働けない人は、シングルマザーや家に家族のいる人が多いです。14年前の兼業率は32%でしたが、今は風俗で稼げなくなっているからもっと増えていると思います。

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今井:今日の勉強会には学校の先生も多く来られているので、要さんにお聞きしたかったんですけど、教育現場にいる人間はどのように対応していけば良いのか。生徒にどう声をかけたら良いのでしょうか?

要:18歳未満の女の子の話に関しては、仁藤夢乃さんが『難民高校生』『女子高生の裏社会』などの詳しい本などを書いていたり、鈴木大介さんも『援デリの少女たち』という本を書かれています。誤解があると思うので説明しておきますが、JKビジネスといわれる18歳未満の子が関わっているアルバイトは性的接触を伴うものではないので「風俗」ではないんですね。援デリ(※援助交際デリバリーの略。業者が未成年と客を仲介し、性的サービスの提供をあっせんすることを指す)は性的行為も含まれるので、児童福祉法にも引っかかりますし、アンダーグラウンド(不可視化された領域)で行われるので数も少なく、短期的で単発的、関わる少女たちも少ない。介入もかなり難しい。

現実的に考えなければならないのは、若者たちとの親和性の高さのことです。いくら金八先生のような愛に満ち溢れた誠実そうな大人や相談員が近くにいても、そういうタイプの大人になびく若者は、同じく真面目そうな感じの若者であることが多いです。例えば、夜の世界に居場所やサバイブ先を求めるギャルっぽい子は、自分と似た感性やバックグラウンドを持つ元ヤンキーっぽい夜の業界関係者やホストとの相性がよいので、自分と種類が違うと思うまじめそうな人にはなびかないと思います。風俗店をいくつか訪問すればその傾向はすぐにわかります。店長さんや男性従業員のタイプによって、所属するセックスワーカーのタイプに明らかに傾向があります。だから、支援する人々は、「自分たちこそが救い、助けられる」と考えずに、できるだけ業界内で支援や情報提供に協力してくれる人をみつけたり、彼らに働き掛けることを探ってみることです。そして、現場の意見をよく聞くことです。業界内で働く人々の中で、支援の理解者や協力者を増やすことが鍵になってくると思います。そうしないと、いつまでたっても、業界内と外部の距離は縮まりません。また、少女のことばかりが心配されていますが、家や学校にも行き場のない十代の中には少年たちもいます。彼らは性被害に遭っても助けも求めにくく、相談先もほとんどありません。支援をする人たちは、ジェンダーバランスに配慮した支援づくり、セクシュアルマイノリティにも情報が届くような発信をしていく必要があります。

今井:SWASHにはどんな相談が寄せられるんですか?

要:SWASHの HPにも載せていますが、私たちに寄せられる相談で最も多いのは、お店に関する悩みや相談です。仕事を辞めさせてもらえない、辞めたのにHPから自分の写真を消してもらえないとか。次に多いのはお客さんからの被害ですね。ネット上で悪口を書かれたりするなどインターネット関係の悩みや、脅しを使ったストーカー被害が目立ちます。あとは性感染症や病院のこととかメンタルヘルス関係、ニューハーフヘルスにもアウトリーチしていたので、ニューハーフヘルス嬢からの相談も何件かありました。

今井:脅されるなどの問題が生徒に起きたとわかったら、先生はどうアドバイスすればいいんでしょうか?

要:脅しというのは、「風俗で働いていたことをばらすぞ」という脅しがほとんどなのですが、そういう問題が起きた時は、大抵は電話もメールも返さないように無視するとか、電話番号を変えることで問題が収まることが多いです。それでも解決しなかったり、脅しの内容が身の危険を感じるものであれば、弁護士や警察から警告をしてもらうことがありますが、相手が逆上してより危険な目に遭うことがあるので、相手に関する情報や経緯をよく調べて検討し、かつ、被害者の安全確保が完璧じゃないといけません。加害者に介入してくれる専門のNPOもあります。お店の人からの脅しの場合は、こちらでお店の名前を調べて周辺の人たちから情報収集をしたこともあります。裏風俗ややくざが関係していると対応もまた違ってくるからです。一番良くないのは説教じみて「こんな仕事してたから…」みたいな感じで生徒を責める、叱ることですね。

今井:それはそうですね。ただ、この問題って解決が難しいと思うのは、当事者が抜け出しにくいこともあると思うんですよね。勤続年数が長くなって精神的な依存を抱えてしまったりだとか…。例えば、自分の彼氏・彼女がこういう仕事をしている時などはどうしたら良いんですかね。

要:勤続年数が長くなることも含めて、デメリットやリスクやその回避策にはどんなのがあるのか、どういう支援団体や自助グループがあるのかを教えてあげることが大切だと思います。働く人が、何故そこで働こうとするのかの理由も大事です。よく、風俗以外の他の職業に就けることが幸せな選択と思われていますが、働いている人の理由をよく聞いてみると、「以前働いていた美容師の仕事では立ち仕事がきつくてしんどかったし休みがとりにくかった」とか、「アパレルや介護の仕事では給料が安すぎて食べていけない」とか、「化粧品販売員をしていたが、上下関係や人間関係が精神的に耐えられなかった」とか、風俗が他の仕事よりましだから働きはじめたという人がすごく多いのが現実です。そういう人々に対して、ほかの仕事を勧めるとか、風俗で働くことのデメリットと言ってもあまり説得力はないですよね。風俗を辞めさせたい場合は、風俗のメリットと同じ条件の仕事を用意できないと難しいです。つまり、シフトが自由で休みがとりやすい、職場を転々と変えることができる、風俗と同じくらいの給料をもらえる仕事です。

今井:僕もこの分野に関しては本当に素人なのですが、それでもこの問題ってすごく大きいというか、でもなかなか答えが見つからないので難しいなと思います。ただ労働環境を整える努力も流入の部分を整えることもどちらも必要だと思うんですよね。

要:はい。流入の考え方でとても大切だと思っているのが、“性風俗業に入ったら終わり”じゃなくて、出入りしやすいのが一番だと思うんですよね。「風俗しか働くところがない」という表現が意味するのは、悲惨で危険で絶望的なイメージです。これを将来的には、「仕事には風俗もある」という言い方ができるくらいの労働環境と条件に変えないといけない。

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要:ちょっと過激なことを言って良いですか?これはひとつのアイディアとして聞いてほしいんですけど、風俗店の中に、セックスワーク・コミュニティ・ソーシャルワーカーがいたり、産業医やメンタルヘルスを看てくれる人がいたらいいと思うんです。普通の会社なら上司がパワハラしたら相談できる産業医がいるのに性風俗産業にはいないんですよ。あるいは、ペルーには、セキュリティ・エージェントといって、元/現役セックスワーカー100人にトレーニングを行い、エリアごとに安全や健康などのことでサポートできる人たちがいたりします。長年性産業で働いてきた元セックスワーカーのセカンドキャリアを考えるなら、まさに経験を生かした社会貢献、コミュニティ貢献の仕事です。マルチセクターグループをつくって、弁護士やカウンセラー、シングルマザー支援者など、いろんな課題に取り組む専門家らが、訓練を受けた当事者らと一緒になって取り組むことで、様々な当事者の悩みや相談に対応することができるようになります。

今井:そうすれば、違う仕事がしたくなったときに、そこへのつなぎもできますもんね。

 要:そうなんですよ。だから私たちはアウトリーチ(※当事者が支援を求めたり相談にくるのを待つのではなく、支援者が現場に入っていくこと)という手法でやっています。「セックスワーカーのためのコミュニティセンター」には誰も来ない。いや、来るんですけど、そういうところに来るのは元気や勇気のある人だけなんですよ。あるいは支援者らとたまたま相性や気の合う特定の当事者だけ。だから性風俗が行われている現場に入り込んで、本当に助けを必要としている人に手が届くことが重要だと思っています。

朴:今のお話を聞いていて、D×P(ディーピー)が取り組んでいることと本質は変わらないなと思いました。うちの場合だと学校という現場の中に入って、先生方と協力しないと問題は解決できない。要さんの場合も現場に入って問題を解決しようとされてるんですね。今回、改めてじっくりと要さんのお話を聞くことができて、僕自身もとても勉強になりました。要さん、今日は本当に貴重なお話をありがとうございました。

 


 

第18回D×P公開型勉強会「イチから知るセックスワーカーのお仕事」、いかがでしたでしょうか。
ゲストの要友紀子さんが法的側面や社会的な意識の側面など、丁寧にセックスワーカーをとりまく実態についてお話してくださり、参加者の皆さまも普段は中々聞くことの出来ないお話に熱心に聞き入っていらっしゃいました。

■ゲストプロフィール

プロフィール:要友紀子(かなめ ゆきこ)さん

1976年生まれ。セックスワーカーとして働く人たちが安全・健康に働けることを目指して活動するグループSWASH(Sex Work And Sexual Health:スウォッシュ)メンバーとして、1999年から活動。性感染症予防啓発活動や、現場の相談支援に携わる。調査活動では、「風俗嬢126人の職業意識調査」(2000年)、厚生労働省エイズ疫学研究班調査「性風俗で働く人々のHIV/STDに関する知識・行動調査」(1999~2010)、国連麻薬犯罪事務所(UNODC)委託調査「日本で働く外国人セックスワーカーの人身売買とHIVに関する調査」(2006~2007)に従事。主な著作は、『風俗嬢意識調査~126人の職業意識~』(水島希との共著・ポット出版、2005年)、『売る売らないはワタシが決める』(共著・ポット出版、2000年)、「性を再考する」(共著・青弓社、2003年)、「『オネェ』がメディアにモテる理由」(藤井誠二編・春秋社、2013年)など。
web: http://swashweb.sakura.ne.jp/
twitter: @swash_jp
facebook: http://www.facebook.com/sexwork.swash

【最近のインタビュー記事】
「偏見をうまないセックスワーカー支援の可能性」
(Web Ronza、2014年4月24日)

 【最近の執筆】
「池袋出会いカフェ女子大生殺人事件 裁判傍聴記録」
「風俗の安全化と活性化のための私案 セックスワーク・サミット2013」
(ともにSYNODOS、2013年10月4日、2014年2月21日)

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