D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×スタッフ

自分が素直に楽しんで、そのままで関われば、生徒も心を開いてくれるのかな。

認定NPO法人D×P(ディーピー)が、通信・定時制高校で行っている「クレッシェンド」などのプログラムの企画・運営にスタッフと一緒に携わるのが、D×Pのインターン生です。

今回は、龍谷大学4回生の近藤紗恵子(こんどう さえこ)さんに、インターンとして活動するようになった経緯や活動を通じて考えたことについてうかがいました。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています

教師を目指す人同士で話すよりも、学生ではない人と話をして視野を広げたかった。

近藤さん:龍谷大学英語英米文学科4回生の近藤紗恵子です。よろしくお願いします。2014年4月からD×Pのインターンとして関わり始めました。

D×Pスタッフ:先生になりたいと思ったきっかけは何だったんですか?

近藤さん:小学校のときから高校まで、地域の子ども会の活動でリーダーをしていたので、地域の行事を企画・運営するなかでよく小学生と接していました。この活動から何かを教え、教えた相手がそれを理解してくれることに喜びを感じました。

けれど高校生の時はなりたいものがなかったんです。その時に私の中では大きな存在だった当時の担任(英語教諭)が「近藤、先生ならへんか?」と聞いてくれたこともあって、先生になるのもいいかなと思いました。あとはとにかく英語が好きだったので、英語嫌いな人に英語の楽しさを伝えたいと思っていました。

D×Pスタッフ:D×Pに入ろうと思ったのは何故だったんですか?

近藤さん:D×Pの理念「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会」っていうのにすごく共感して、この団体に入ってみたいと思いました。あと、私は教師を目指す人同士で話すよりも、学生ではない人に会ったり、話をして視野を広げたいと思っていました。だから教師塾のような教師を目指す人だけが集まる場よりも、もっと様々な人に会える場に行きたいと思っていて…。その時に今井さん(D×Pの共同代表)に「インターンやってみない?」って言われて応募しました。D×Pのコンポーザー(D×Pの社会人・大学生ボランティア)さんの多くは社会人の方でしたし、大学や教師塾では出会えない人に出会えると思いました。

あと、自分の能力を試してみたいっていうのもありました。D×Pの教職インターンは、ただ授業に参加するだけじゃなくて授業の事前準備含めた運営全般が仕事なので、事務的な仕事も多くあります。会議で発言することとか、仕事でPCを使うことなど、事務的な仕事を自分がどれくらい出来るのかも試してみたかったです。

D×Pスタッフ:実際にD×Pに入ってみたら、どうでしたか?

近藤さん:それまで私は会議で発言することとかがそんなに難しいことだとは思っていなかったんだけど、D×Pに入ってから考えをまとめて話す難しさに改めて気づいたり、PCもあまり使えなくて自己否定に陥ってました。(笑)でもやっていくうちに、問題が起きても自分で解決できるようになったし、「わからないことは尋ねる」という姿勢が身につきました。

最初はほんとに周りのスタッフに助けてもらったな。

自分が素直に楽しんで、そのままで関われば、生徒も心を開いてくれるのかな、って。

D×Pスタッフ:クレッシェンドで、印象的なことはありましたか?

近藤さん:最初は私自身の戸惑いや気の弱さから、どう生徒と接すれば良いかわからないことが多くありました。イヤホンをしているとか携帯をいじっているという行為を見ると、なんとなく話しかけてほしくないのかなというように見えたり…。けれど、自分がそのままに生徒と関わろうと思っているうちに、そういう戸惑いも消えていって、生徒にも積極的に話しかけられるようになりました。「これを生徒に伝えたい!」と意気込むのでもなく、生徒に気を遣って何かをしなかったり何かを言わなかったりするのではなく、ただその授業を自分自身が素直に楽しんで、そのままで関われば、生徒も心を開いてくれるのかなと思ったりもして。

クラスの中に、1人静かで自分の世界にいるような感じの生徒がいました。最初は授業の自由時間になってもすぐにイヤホンをつけて音楽を聞いてしまうから、「あまり話しかけない方が良いのかな」と思って声をかけずにいました。でも、次の授業の時はイヤホンをつけていても話しかけてみたら、ちゃんとイヤホンを外して、普通に色々と話してくれて。最後には笑顔も見せるようになってくれたから嬉しかったです。話をきいてみると、静かそうに見えたその生徒は家ではそんなに静かじゃないんだと教えてくれました。

授業は先生だけがつくるんじゃない。

D×Pスタッフ:クレッシェンドを終えて、次に向けてこうしたいなと思ってることはありますか?

近藤さん:生徒やコンポーザーさん一人ひとりを見て、みんなで授業をつくっていけるような場にしたいと思ってます。例えば生徒やコンポーザーさんのなかにムードメーカーの役割を担ってくれる人がいたら、自分はその役割を無理に担わず、その人に任せても良いかなと判断したりとか。自分で無理に全ての役割をやろうとしたり、この場づくりを担うんだと意気込まずに、生徒やコンポーザーさん一人ひとりをよく見ながら、その場に「足りていない役割」を見極めて、自分はそれを補完していけばいいかなと思います。

私がインターンや6月の教育実習で気付いたのは、授業は先生だけがつくるのではなく、生徒も含めみんなでつくるものだと言うこと。生徒からのツッコミとか、生徒の授業に対する真剣さに支えられて、やっと授業が成立するんだなと思うようになりました。だから、みんなが授業に関わるために、一人ひとりがどんな人なのかを観察することを大切にしたいと思います。

D×Pスタッフ:先日教員採用試験があったかと思うのですが、試験勉強とインターン活動はどうやって両立していたんですか?

近藤さん:実は、私は絶対に常勤の先生になりたいと思っていたわけではなかったので、正直、採用試験も直前まで受けるかどうか迷ってましたが(笑)でも、最終的に受けることにしました。毎日のスケジュールは、木、金に教職の授業など大学の授業があって、土曜日にクレッシェンドがあったから、週末に結構力がいる感じでした。なので月にピアノの習い事、月火水にバイトっていう感じでゆっくりする日を作って、自分のペースを作っていました。D×Pのインターンと教員採用試験、あとバイトも、やろうと思えば並行できると思います。

D×Pスタッフ:他のインターン生は近藤さんにとってどんな存在ですか?

近藤さん:なんだろう…前に同じ時期にインターンを始めた小川さんがインタビューで言っていた、“切磋琢磨”っていうのもすごく共感できます。ただ私は他のインターンの存在というよりはD×Pっていう場自体が好きというか、その雰囲気とか場に来るとまた頑張ろうと思えるので、そういう居場所をインターンやスタッフのみんなで作れたらなと思っています。 

D×Pスタッフ:どんな人に教職インターンを薦めたいですか?

近藤さん:うーん、クレッシェンドにも色々な生徒がいるし、どんなタイプの人でもインターンに来たら良いと思う。だけど、生徒を否定しないということと、人の話を聞いて、受け入れられることは大事だと思う。それがD×Pの三姿勢を持っている人なのかな。D×Pでインターンをするなら必要だと思います。

でも、私今日色々なこと話したけど、実際全然自信ないし、インターンしてみたいって思った子はそんなハードル高く感じずに来たら良いと思う。(笑)入ってみたら自分の意外と出来るところも見つかったりするんじゃないかな^^

「あの先生こんなこと言ってたな」って、生徒がふと思い出してくれるような、絵本みたいな先生になりたい

D×Pスタッフ:最後に、将来、どんな先生になりたいですか?

近藤さん:えっと、まずどんな“人間”になりたいかということで言うと、“絵本みたいな存在になりたい”と思ってます。自分が昔読んだ本とかお気に入りの一冊って、表紙を見るだけでほっとします。そんな絵本みたいに、そばにいるだけで安心できるような優しい人間になりたい。

そして多くの絵本って教訓が刻まれていて、ふと思い出したり、あらためて読んだ時に「ああ、こんなこと教えてくれてたな」って私は思い出します。自分が先生になった時も、生徒がふと「あっあの先生こんなこと言ってたな」って思い出してくれるような先生になりたい。色々な先生がいていいと思うんだけど、自分はあまり厳格な先生ではなくて生徒の友だちみたいな先生になりたい。本当に良い友達は悪いことをしたら怒ってくれるし、嬉しいことは一緒に喜んでくれるから、先生だって生徒の良き友達であっても不思議じゃないと思います。

実は、将来絵本作家になりたいという想いもあります。でも絵本作家になって、人気になれる人なんて一握りだから、自分の中で自然とあきらめていた部分もあって…けれど以前一緒にカンボジアに行った人たちが、絵本作家になることをすごく後押ししてくれてから、また絵本作家になろうって思えるようになりました。

絵本は小さい頃からずっと好きで、何かあるたびに読んでました。絵本作家になりたいと思ってたのは本当に小さい時で、高校の頃は忘れてたんです。でも大学2回生の時にカンボジアに行ったきっかけが、『地雷ではなく花をください』っていう絵本で、それから改めて絵本作家になりたいと思ったのかな。カンボジアでは爆破現場とか地雷処理の現場を見た時に音とか威力の大きさにすごく驚きました。その小さな村で地雷撤去していたのは日本人のおじいさんで、その人は絵本の中みたいに地雷を一つ撤去するたびにキャッサバ(熱帯低木の一種)を植えていたんです。その時に「これってあの絵本と一緒だ!」って感動して、その場で私、絵本作家になりたいんです!って宣言しました(笑)

ずっと悩んでいますが、ぶっちゃけ、「なりたいもの」は絵本作家かもしれません。
ただ、以前は「先生になりたい」という思いは世間体を気にして生まれた職業だと思っていたけれど、教職の授業・教育実習を終えて、更にD×Pに関わる中で、中高生に携わっていきたいと強く望むようになりました。だから欲張りだなと思うけど、先生にも絵本作家にもどっちにもなりたい。(笑)

でも世の中には、自分の本当の想いや夢をあきらめちゃう人ってすごく多いんじゃないかな。私は一緒にカンボジアに行った仲間たちのおかげで絵本作家になりたいとも言えるようなったけれど、そうやって人を後押しする人たちこそ教育現場に必要やと思いました。だから今は、自分もそんな「チャレンジしてみなよ!」って言える先生になりたいと思っています。 

絵本作家も目指している近藤さんが、日々描いている“一日一絵”。

10代をひとりにしない。D×Pで、ともに働きませんか?

D×P(ディーピー)は、10代の孤立を防ぐNPOです。

「10代の孤立」は、不登校・中退・家庭内不和・経済的困難・いじめ・虐待・進路未定・無業などによって、
いくつかの安心できる場や所属先を失ったときに起こります。

D×Pは、定時制高校での活動とオンラインでの活動を掛け合わせ、10代とつながります。日常的な雑談から、生徒の困りごとを拾いサポートにつなげる学校での取り組みと全国から気軽に相談できるLINE相談で10代の孤立を防ぎます。

ひとりひとりの若者が、どんな境遇にあったとしても、
つながりが得られる状態をつくる。これがD×Pの取り組みです。

ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会をともにつくりませんか?


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