D×Pタイムズ
D×Pと社会を『かけ合わせる』ニュース
D×P×スタッフ

D×Pは、否定しない。ちゃんと高校生の存在を見るし、自分の存在を見てくれる。

認定NPO法人D×P(ディーピー)が、通信・定時制高校で行っている「クレッシェンド」などのプログラムの企画・運営にスタッフと一緒に携わるのが、D×Pのインターン生です。

今回は2015年4月から企画運営スタッフとしてD×Pに携わり、インターン2年目を迎えた近畿大学総合社会学部4回生の野津岳史さん(愛称:もずく)に、話を聞いてみました。

クレッシェンドとは? 
通信・定時制高校で行っているD×Pの独自プログラム。高校生とD×Pのボランティア「コンポーザー」が対話する全4回の授業です。ひとりひとりに寄り添いながら関係性を築き、人と関わってよかったと思える経験をつくります。4回の継続した授業のなかで次第に人とのつながりを得て可能性が拡がるように、音楽用語でだんだん強くという意味のクレッシェンドと名付けています

「お前なんかもういらんねん」って言われて

D×Pスタッフ:D×Pを知ったきっかけは?

もずく:最初は友人経由でD×Pの存在を知りました。友人が週末にどこか行ってたので、聞いてみたらD×Pのボランティア「コンポーザー」として通信制高校の授業に参加してたんです。別に勧められたわけじゃないけど、その日の夜ネットでD×Pのホームページを見て、すぐに「インターンに興味がある」ってメールを送りました。

D×Pスタッフ:通信・定時制高校での授業に興味があった?

もずく:通信制・定時制高校に対して特別興味があったわけじゃなくて、しんどい背景を持った生徒が多いという意味で関心を持ちました。大学で心理学を専攻しているのもあるけど、僕自身、高校生の時にしんどい思いをしてきたから。

 僕はバスケの推薦で高校に入ったんですけど、1年生の時に怪我をしてあまり部活に行けなくて。そのせいで部内で仲間外れにされたりして、もう部活が、というか学校自体が嫌になって。ちょうどその時、親との関係もすごく悪かった。学校にも家にも居場所がなくて、1ヶ月くらい家出して放浪生活をしていました。学校にも行かず、家にも帰らず、友達の家を渡り歩いたり、その辺の公園でぼーっとしてたり。 その時は親と話し合って、家に帰ることはできたんですけど、部活はやっぱり辞めようと思って。でもスポーツの推薦入学だったから、「部活やめたら学校も辞めなアカン。もう、終わりや」って思って。

それで2週間くらい学校行かずに家に引きこもってました。 でも結局、先生が話を聞いてくれて、部活を辞めても学校を辞める必要はないことを知りました。今思えば、部活辞めたからって「全部が終わり」なわけじゃない。でも高校生の自分が知ってる世界ってすごく小さくて、「終わりや」って引きこもってしまうのも当たり前やなって感じて。あのときD×Pのクレッシェンドみたいなものがあれば、そんなこと思わなかったんだろうな。 家出した時、親から「お前なんかもういらんねん」って言われて。そういう否定される経験がこれまでにも沢山あった。D×Pの存在を知って、D×Pの基本3姿勢がすごくいいなって思いました。

D×Pは否定しない。ちゃんと高校生の存在を見るし、自分の存在を見てくれる。そんなところに魅力を感じました。

D×Pの基本3姿勢とは「否定しない 」「年上/年下から学ぶ 」「様々なバックグラウンドから学ぶ」の3つ(2016年3月当時)
2019年度より、これまで大切にしてきた姿勢を受け継ぎながら「否定せず関わる」「ひとりひとりと向き合い、学ぶ」の2つにアップデートされています。

「この空間はゆるくてもいいんや」と思ってもらえる空気づくり

D×Pスタッフ:もずくにとって初めての、通信制高校でのクレッシェンドはどうだった?

もずく:想像していたものとは違いましたね。人と関わることにしんどさを感じる生徒が多いってイメージだったんですけど。確かに、そういう生徒もいたんですけど、みんなけっこう普通にしゃべるし、積極的に話しかけてくる生徒もいたりして。当たり前なんですけど、やっぱみんな普通の高校生やなって。

D×Pスタッフ:最初はどんな意識を持って授業に参加してた?

もずく:「コンポーザーがやりやすい空気づくり」を意識してました。高校生とメインで関わるのはコンポーザーさんだから、僕は企画運営スタッフとして上手くサポートができたらいいなぁって思ってました。あとは、毎回の授業でやるワークの目的はすごく意識して動いていました。「シゴトはっけんカルタ」は職業の多様性を知るため、「過去のジブン」は高校生が自分の経験を相対化するため、みたいに。今も目的は考えてますけど、以前よりは意識しなくなったかもしれません。

D×Pスタッフ:それはなんでだろう?

もずく:最初はたぶん、それだけに注意するくらいしか余裕がなかったから。その目的のためだけにしか、力を入れられなかったんやと思います。今はそれに加えて、「この生徒とどんな関わりをしたらいいか」、「どんなふうにサポートしたらいいか」、「どんなグループ分けにしたらいいか」とか、そこまで考えられるようになりました。そういう意味で、意識の割合が変わってきたかな。

D×Pスタッフ:他にも企画運営スタッフはいるけど、その中で自分なりの役割は意識してる?

もずく:まだ自分だけの役割は分からないんですけど、教室で自分にしか出せない雰囲気というのはあるのかなって今は思ってます。僕はめちゃくちゃ喋りが上手かったり、何かが得意なわけじゃないけど、なんとなくゆる〜い雰囲気を出すのが、たぶん得意なんやなって最近感じていて。高校生が話したくなければ、話さなくてもいい。だから僕から無理に高校生に話しかけたりすることもありません。「この空間はゆるくてもいいんや」「無理しなくてもいいや」って高校生にも思ってもらえるような空気を作りたいなって意識してます。

「この授業、やる意味あんのかな?」

D×Pスタッフ:インターンをやっていて、しんどくなったことはある?

もずく:最初の頃はとにかく楽しかったんですけど、2015年の秋頃から始まった定時制高校の授業でしんどくなったことはありますね。通信制高校でのクレッシェンドでできていたことが、その高校では全くできない。「この生徒とはこんな関わりをしたい」「この生徒とはこんな話をしたい」って、イメージは自分の中にちゃんとあるのに、それができなくて。まったく心が開けず、しゃべれなかった生徒もいました。授業で行うユメブレとか、自分史とかのプログラムも全然うまくいかなくて、「この授業、やる意味あんのかな」って思ってました。

D×Pスタッフ:自分の中で、その課題に対する答えは出た?

もずく:正直、その授業そのものになにか意味があったのかと聞かれると、今でもわかりません。だけど、その学校では授業を終えたあとも何度かアフタークレッシェンド※を開催したので、高校生と継続的に関わる機会を持つことができました。 授業を受けた生徒たちとコンポーザーさんと一緒に体育館でバスケしたり、たこ焼きパーティーを開いて、いろんな話をして。そんな風に継続的に関わることによって生徒たちにとって「しゃべってもいいや」って思える大人ができたことにはすごく意味があるんじゃないかなって思います。

※アフタークレッシェンドとはD×Pの授業(クレッシェンド)後の、高校生との継続的な関わりの場。たこ焼きパーティーやスポーツ大会を開催し、授業に参加した高校生とコンポーザー、スタッフが集まります。 

もずく:それでもD×Pの授業での関わりだけではやっぱり限界があると思います。1回目の授業には参加できたけどそれから来れなくなったり、2回目まで来れたのにそれから来れなくなったりする生徒もいて。「自分がやったグループ分けでその生徒にしんどい思いをさせたのかな?」とか、「もっとできることあったんちゃうかな?」っていう風に思ったりもします。でもそれは僕一人で悩んでも埒が明かないので、D×Pのスタッフとコンポーザー、先生、授業に関わるみんなで考えていきたいと思ってます。 そして、しんどさを抱えた生徒に対して、なにかできるのはD×Pだけじゃない。

以前、クレッシェンドの1回目だけ頑張って来れたけど、やっぱりしんどくなって2回目以降は欠席した生徒がいて。この前、その学校の遠足の写真を見ていたら、その生徒が写真に写っていたんですよ。その生徒が他の生徒と一緒に遠足に行って、楽しそうにしている写真で。なんか、良かったなって思いました。僕らはD×Pの授業だけでなんとかしようとしてるわけじゃない。学校には学校で、D×PにはD×Pでできることがある。お互いにサポートしあって、お互いができることをやればいいかなって思うようになりました。 

僕がD×Pでインターンを続ける理由

D×Pスタッフ:もずくはD×P以外でもいろんな活動をしていたり、学生団体の代表をやっていたりするけど、大変ではなかった?

もずく:2015年は他に2つの団体に所属していて、D×Pとの気持ちの切り替えがなかなか上手くいかず、ちょっと大変でした。でも、D×Pで学んだことが他の活動で活かされたり、その逆もあったりして、それがすごく面白くて。しんどい時もあるっちゃあるけど、それよりも学んだことが活かされる瞬間がすごく楽しいので。

D×Pスタッフ:D×Pでインターンをして学んだことってなに?

もずく:人の話を聞くようになったことだと思います。D×Pではそんなことないんですけど、所属してる他の団体では主張が強くて。基本的に「自分の意見は正しい」って思ってたんですよ(笑)

団体の代表だったから「トップが簡単に意見を曲げるわけにはいかない」って思いもあったんですけど、D×Pの会議とか授業の現場に行くようになってから、それは違うなって思うようになりました。 まず周りの意見を聞いて、自分の意見もちゃんと言って、それを踏まえてみんなで話をして、良いもんができていくってことが実感できるようになって。D×Pの基本3姿勢が他の場面でも活かされてるなって思います。

D×Pスタッフ:もともと1年間の予定でD×Pに入って、さらにもう1年、インターンを続けようと思った理由は?

もずく:やっぱり、この1年間で「授業だけじゃなんもできんかったな」って生徒がいっぱいおるし、「その後どうなったんかな」って気になる生徒もいます。それに、やりたいことがもっと増えてきたから。当初は授業の企画とか、「生徒と関わること」がすごくやりたいって思ってました。でも今はそれだけじゃなくて、授業以外での企画とかもやりたいと思うし、コンポーザーさんがもっとやりやすいような仕組みづくりをD×Pで一緒に考えたいなって思う。 たぶん去年の夏、ただただD×Pが楽しいだけだった頃は、もう1年続けようなんて思いもしなかった。

夏以降、しんどい現場が増えてきて、「何もできなかった」とか、「もっとこうしたい」って思うことも増えてきて。そんななかで辞められへん、辞めたくない。なんか、やりたいことばっかり増えてきて、もう1年やりたいなって思うようになりました。 

D×Pスタッフ:これからのD×Pでのインターン、どういう1年にしていきたい?

もずく:目に見える成果を残したいと思っています。ずーちゃん(元インターン)がつくった「女子会」だったり、さえこさん(元インターン)の「アート部」だったり、みんなそれぞれの特技を生かしていて、すごくいいなって思います。僕は何かそういう特技があるわけじゃないけど、インターン生のなかではたぶん僕が一番、D×P以外のいろんな活動をしてきてると思う。それを生かして、D×Pで高校生との関わりの場をつくっていきたい。あとは、インターンの中で僕がこれまでに教えてもらったこと、学んだこと、それを新しいインターンのみんなに伝えていきたいです。

インタビュー・文責:荒木雄大(D×Pインターン広報スタッフ)

10代をひとりにしない。D×Pで、ともに働きませんか?

D×P(ディーピー)は、10代の孤立を防ぐNPOです。

「10代の孤立」は、不登校・中退・家庭内不和・経済的困難・いじめ・虐待・進路未定・無業などによって、
いくつかの安心できる場や所属先を失ったときに起こります。

D×Pは、定時制高校での活動とオンラインでの活動を掛け合わせ、10代とつながります。日常的な雑談から、生徒の困りごとを拾いサポートにつなげる学校での取り組みと全国から気軽に相談できるLINE相談で10代の孤立を防ぎます。

ひとりひとりの若者が、どんな境遇にあったとしても、
つながりが得られる状態をつくる。これがD×Pの取り組みです。

ひとりひとりの若者が自分の未来に希望を持てる社会をともにつくりませんか?


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