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「ピンポンとチャイムが鳴って、ごはんが届いた日」物価高の中で暮らす学生が語る、安心とこれから

「ピンポン」というチャイムの音が鳴って、扉を開けるとそこには段ボールいっぱいの食べ物が届いていました。

「あ、食べ物だ」と、安心感があったと話すのは美術大学3年生のえりさん(仮名)。

D×Pは日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金を受け取る学生を対象に、3ヶ月間の食糧支援を行ないました。その支援を受け取ったひとりが、えりさんです。親に頼れない中で学業と生活の両立を続ける日々。えりさんに食糧支援が届いた時の気持ちや、今の暮らしについて話を聞きました。

ひとり暮らしの中に見つけた自分の「好き」

今、美大に通っているんですけど、自分の好きなテーマで作品を作るという課題があって。最初は自分の「好き」がよくわからなかったんです。でも、ひとり暮らしを始めてから、インテリアや料理など、生活に自分なりの工夫をすることが好きだなと気づきました。

安いけどおしゃれな家具を探したり、調味料にこだわって料理をしたり、日々の暮らしの中でセンスを活かせることが増えてきたのが嬉しいです。

頼れない中で、ひとりで暮らすという選択

ひとり暮らしは大学2年生の途中から始めました。親とはうまくいっていなくて、あまり頼れなくて、奨学金を多めに借りてでも、ひとりで暮らそうと決めました。

今は奨学金と、大学が休みの日にデザインのアルバイトを入れることで生計を立てていますが、それだけでは足りず、他のバイトも探しているところです。

あと去年は学業が思うようにいかず、今年は給付型奨学金が止まってしまいました。今は貸与型だけで生活しています。

精神的には前より落ち着いていますが、でもお金のことで今もすごく不安定ですね。精神面にはまだ影響は出ていないけど、目をそらしてるだけかもしれません。

チャイムとともに届いた安心のごはん

食糧支援のことを知ったのは、高校時代に参加していたグループLINEで「ユキサキチャット」の情報を見かけたのがきっかけでした。

ダメ元で申し込んだところ、本当に届いて……特にお米がありがたくて、今も少しずつ大事に食べています。お米が高いので、お米を使わないレシピで工夫したり、できるだけ長持ちさせています。

チャイムが「ピンポン」と鳴って届いた時の、「あ、食べ物だ」という安心感。翌日のお腹の心配をしなくていいというのは、本当に心強かったです。

※食糧支援とは? 
親など周囲に頼れない若者へ、安心できる環境を整えるために実施しています。1箱には約30食(2週間分)、入れる食品はお米、レトルトカレー、パスタ、パスタソースなど。必要な場合は食糧支援のほか、現金給付も実施しています。ユキサキチャットでの継続した相談サポートと食糧や現金での支援を掛け合わせ、福祉制度につなぐなど相談者が他にも頼れる先を増やしていきます。

大阪の事務所から全国の若者に発送しています

高くなった食材、なんとか暮らす工夫

今、食材は本当に高いですね。スーパーに行っても前はけっこう買えたけど、今は野菜2〜3種類と卵とお肉を買っただけで1,000円を超えます。お米1袋買うだけでも4,000〜5,000円かかるのはきつい……。

だから節約と言えるか分からないですが、冷凍肉や玉ねぎ、じゃがいもは安い時にまとめ買いしています。比較的安く買えるえのきや豆腐もよく使います。スープはお腹にたまるので重宝しています。

朝ごはんは食べないことが多いですが、夜はちゃんと食べるようにしています。お昼は前日に余裕があればお弁当を作って、無理な時は学食ですが、ワンコインだと少ししか食べられないですね……。

そんな状況ですが、落ち着いた休日に手のかかるごはんを作るのが大好きなんです。最近はせいろを使って、肉まんを生地から作りました。冷凍保存もできていいんですよ。茶碗蒸しとかも簡単で、楽しいですね。500円で譲ってもらったホームベーカリーもあるので、いつかパン作りにも挑戦してみたいです。

えりさん作、手作りマンドゥ・豆腐チヂミなど(本人提供)

生活も気持ちも安定できる、そんな仕事がしたい

将来のことは、まだ答えが出ていません。大学の専攻はプロダクトデザインで、今のバイトでも広告を作ったりしています。でも「これを一生やりたい!」という感覚はまだもてなくて。

とりあえず奨学金を返せるくらい収入が安定していて、そして苦痛じゃない仕事、何かしらの生きがいを見つけられる職に就けたらいいなと思ってます。

正直、働き詰めになりそうな社会人生活には不安があります。できれば就職してから独立して、自分のペースで休めるような暮らしがしたいです。

えりさんがデザインした課題作品(本人提供)

安心して声をあげられる社会に

もっと声が通る社会になってほしい。
困っている人が、自分の言葉で状況を伝えて、行政や制度がそれを受け止めて応えてくれる。

今回の取材も、その第一歩になればと思って受けさせていただきました。支援が必要な人たちが安心して声をあげられる社会。余裕があってお互いを思いやれる社会。

そうした社会に近づけるよう、寄付というかたちで支えてくださっている方々の存在は本当に心強いです。

皆さんも、きっと余裕があるわけではない中で、こうして私たちの暮らしを支えてくださっている。そのことが、とてもありがたいです。

旅行に行ったときの写真(本人提供)

インタビュー・執筆:芳本良輔/編集:熊井かおり

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