「自分」を出してもいいかなと思える場 ー 彦根東高校授業レポート

D×P(ディーピー)独自の授業『クレッシェンド』は、
多くの人が想像する「高校の授業」とは、たぶん、かなりちがいます。
それは授業の内容だけじゃありません。
オトナと高校生の関わり方や、雰囲気も、全然ちがうと思います。

昨年に引き続き、2016年6月2日〜6月23日、
彦根東高校の定時制課程において、全4回のクレッシェンドを開催。
そのときの授業の様子をご報告します。

『クレッシェンド』とは?
クレッシェンドとは、「過去を受け入れ、未来を描く」プログラム。 社会人・大学生ボランティア(コンポーザー)との対話を軸にした D×P独自のあたらしい授業で、 高校生の社会関係資本の醸成をめざしています。

第1回:自己紹介!(2016年6月2日)

初回の授業、まずは少人数グループに分かれて自己紹介から。
この日は『マトリクス自己紹介』をしました。

『マトリクス自己紹介』とは?
9つのマスにいろんなお題が書いてあるシートを使います。お題は「好きなおにぎりの具」「『働く』ときいてイメージすること」「子どものころ憧れていたもの」などなど。そのお題に答える形でシートのマスを埋め、その後クラスの人とシートを見せ合い、自己紹介をしていきます。

彦根東での授業は畳の部屋で開催。
寝転びながら自己紹介をする生徒もいます。
終始スマホをイジっている生徒もいましたが、時折会話に加わり笑顔を見せる瞬間も。

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自己紹介の後は、この日のメインワーク『シゴトはっけんカルタ』。

『シゴトはっけんカルタ』とは?
一般的なカルタとはルールが違います。絵札にはさまざまな職業が描かれており、ある職業の特徴(ヒント)をスタッフが3つ挙げ、高校生とコンポーザーが、その職業、すなわちカルタの絵札を当てるゲームです。

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マトリクス自己紹介の途中でグループから抜けていた生徒に、他の生徒が声をかけて呼び戻す姿がありました。
最初は参加したくなさそうにしていましたが、カルタが始まるとみんなとしゃべりながら積極的に参加していました。

普段は学校であまり話すことのない生徒が集まったグループもありましたが、ゲームを通して会話が生まれ、それぞれが自分の意見を話しながらカードを選んでいました。

この日は約1時間半、休憩なしで授業をやってみました。
途中で教室から退出する生徒もおらず、最後までワークをやり遂げることができました!

次回の授業は、オトナの過去や現在の話を聞く時間。
ちょっとだけ真剣な空気づくりを目指します。

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第2回:失敗なんてあたりまえ!(2016年6月9日)

この日は、コンポーザーの話を聞く時間。
でもまずは、みんなの緊張をほぐすため、
『すごろくトーク』というゲームから始めます。

『すごろくトーク』とは?
すごろくのマスに「いつか行ってみたいと思っている場所は?」などの質問が書かれており、そのマスに止まった人が、そのテーマに沿って話をするゲームです。

今回も、普段一緒にいない生徒同士の会話が生まれるよう、ランダムでグループ分け。
すごろくトークがはじまると、生徒が自発的にゲームの進行をしてくれるグループもありました。

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すごろくトークでおしゃべりを楽しんだ後は、この日のメインのワークへ。
今日はちょっとだけ真剣に、オトナたちの話を聞く時間です。

コンポーザーは挫折体験や悩みを抱えながらも、
今はそれぞれ自分なりの生き方をしているオトナたち。
そんなオトナたちの過去と現在の話を聞くことで、
高校生が自身の経験と重ね合わせたり、色々な価値観を知るためのワークです。

高校を中退後、予備校で恩師と出会い、現在は動物病院で獣医として働いている人。
心と身体が壊れるまで、つらい仕事を我慢し続けてきたけど、人との出会いをきっかけに、自分が本当にやりたいことに挑戦するようになった人。
いろんなことから逃げ続けてきたけど、大学中退をきっかけに自分の人生を自分で選びたいと思い始め、今は自分で八百屋さんをやっている人。

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この日はコンポーザー1人に対して、生徒2人の少人数グループ。
コンポーザーの話をできるだけ深く聞けるようにしました。
様々なバックグラウンドを持ったコンポーザーの話に、生徒は驚いたり、静かにうなずいたり。
大学の話や家庭の話に興味を持ち、コンポーザーにたくさん質問を投げかける生徒もいました。

最初は授業に参加しようとしなかった生徒も、
コンポーザーの話が始まるとすぐに会話に入っていくようになりました。
生徒にとって、全ての話が共感できるわけではありません。
それでも、一つの生き方として、生徒たちに知ってもらえるだけでもいい。
生徒一人ひとりが少しだけ真剣に、
自分の人生に想いを馳せる時間になれたら…と思いました。

さて、次回の授業は、生徒たちの話を聞く時間です。

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第3回:これまでを振り返ろう!(2016年6月16日)

この日の授業、最初に行ったのは『ウソはっけんクイズ』というゲームです。

『ウソはっけんクイズ』とは?
「私の好きな食べ物」や「私のプチ自慢」など、テーマを一つ選んで2つの文章をつくります。そのうちの一つは事実、もう一つはウソのエピソードを書き、他の人たちはどちらがウソのエピソードなのかを当てます。ちょっとした自己開示とユーモアを織り交ぜたゲームです。

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ウソのエピソードをつくるという、生徒によっては少し難しいゲーム。
「思いつかない」と言って、手が止まる生徒もいましたが、コンポーザーが書いている姿を見て徐々に書き始めていました。

クイズの時間になると、上手な演技でグループのみんなをうまく騙す生徒もいれば、逆に素直すぎてすぐにウソがバレる生徒もいて、どのグループもとても盛り上がりました!
自分のエピソードがあまり話せなかった生徒も、他の生徒やコンポーザーの話にツッコミを入れたりしながら授業に参加していました。

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ゲームの後は、この日のメインワーク『自分史』をやりました。

『自分史』とは?
自分の過去に起きた「嬉しかった出来事」、「悲しかった出来事」を振り返り、未来に起きそうな出来事を思い浮かべるワークです。それぞれの出来事を付箋紙に書きだし、それを一枚の大きな紙にみんなで貼っていきます。

前回の授業は主にコンポーザーの話を聞く時間でしたが、今回は自分の人生や価値観について考える時間です。

同じグループのコンポーザーや生徒同士でおしゃべりしながら、過去のできごとや、これから先に実現したい未来のイメージを付箋に書き出し、みんなで大きな紙に貼っていきました。

 

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両親の離婚がつらかった、引越しが悲しかったという過去の話から、将来結婚したい、子供がほしい、保育士になりたいという未来のユメの話まで。

どのグループも『自分史』の目的通り、過去を振り返り、未来を考えることができていたように思えます。

3回目も終わり、次の授業で最終回です。
今回の『自分史』は、実は次の授業につながるワーク。
次回は自分の未来について、今日よりもっと具体的に”描く”時間です。

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第4回:みんなでユメブレ♪(2016年6月23日)

いよいよ彦根東高校でのクレッシェンド、最後の授業。
最後のワークは『ユメブレ』です。

『ユメブレ』とは?
それぞれの「ユメ」をクレヨンで画用紙に描き、発表するワーク。 D×Pでは「ユメ」の定義を、 「ちょっと好きなこと、やってみたいことも、全部ユメである」としています。 「将来こんな仕事に就く ! 」といった大きな目標から、「こんなところに行ってみたい」というようなやりたいことも、「ユメ」です。

まずは画用紙にクレヨンでユメを描く『ユメお絵描き』から始めます。
これまでの授業では少人数のグループでワークを行ってきましたが、今回は全員で大きな円になって絵を描きました。

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白い画用紙とクレヨンを渡されて、「ユメを描こう」と言われても、
いきなり描くのはなかなか難しいもの。
絵を描きたくない生徒には、「文字でもいいよ」と伝えます。

それでもなかなかユメを描けない生徒もいました。
その生徒はコンポーザーやスタッフと「ユメ」について話しながら、「自分のこれから」について考え込んでいる様子でした。
4回の授業を共に過ごしてきたコンポーザーやスタッフとだから、話せることがあったのかもしれません。

ユメお絵描きが終わった後は、みんなのユメをシェアするワーク『ユメブレ』を行います。
机を退けてみんなで円になって座り、一人づつ順番に、描いた絵を見せながら話していきました。

バイクで北海道にいく。
社長になる。
ダイビングの資格を取りたい。

中には、ずっと同じクラスだった生徒同士でも知らなかったユメもありました。

ユメブレをするときのルールは、「否定しない」。
クラスのみんなが自然とこのルールを守ってくれたおかげで、とても温かい雰囲気の中で最後までユメブレを行うことができました。

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今回のユメブレでは、自分のユメを描かなかった生徒がいました。
絵には描けたけど、みんなの前で話さなかった生徒もいました。
でもD×Pでは、その生徒に無理に描かせたり、話させたりはしません。

「今、ユメがない」のであれば、それでもいい。
皆の前で話せないなら、それでもいい。
オトナたちとおしゃべりしながら、「自分のユメはなんだろう」とちょっとだけ真面目に考えてみること。
クラスメイトの話すユメを聞いて、そのユメが否定されない空間を一緒につくることができたこと。
どれも、大切なことだと考えています。

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授業終了後にとったアンケートから、
参加した生徒の声を紹介します。

「人との新しいつながりが出来ました。いろいろな人たちと話してみて勉強になったし楽しかったです」
「広い場所で皆で輪になって話せたところが良かった」
「また学校来てな!!」
「もう少しいろんな人とも話したかったかな〜笑」

最後に、コンポーザーの感想も。

「回数を重ねるにつれ関係性も築き始めてきたので、4回で終わるのがとてももったいないと感じた」
「生徒と関わっていく中で、将来に不安がある姿勢は私自身の高校時代と違いはないと感じました」
「ずっと携帯を触ってる生徒をどうしようかとも思いましたが、それは自分の心の持ちよう次第では重要ではないことに気づきました」
「回が進むにつれて皆が自分を出してもいいかな思える場ができてきたのを感じました」

 

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※授業終了後、コンポーザーとスタッフに対して生徒たちからサプライズプレゼント。
周りに並べてあるのは生徒たちが描いてくれたユメ。^ ^
彦根東高校定時制課程4年生のみんな、先生方、本当にありがとうございました!


 

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