「先生は、偉くないんです。〝世の中〟と〝生徒〟を結ぶことが、僕の仕事だと思っています」 – 京都市立塔南高等学校教諭 飯島弘一郎先生インタビュー

D×Pが通信制高校や定時制高校向けに開催しているプログラム「クレッシェンド」。
さまざまなバックグラウンドを持つ大人と高校生の関わりを大切にするこのプログラムは、
数は少ないものの、全日制高校でも実施しています。 

D×Pは、2014年度に引き続き今年度も、京都市立塔南高等学校(全日制普通科系高校) と共同で、
総合的な学習の授業を行っています。

先生方は、どんな思いでD×Pの授業に臨んでくださっているのか。
D×Pが全日制高校でできることは、どんなことなのか。
2014年度、D×Pと塔南高校の間を取り持ってくださった、塔南高校の飯島弘一郎先生にお話をうかがいました。 

 

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飯島先生(写真右)と、インタビュアーの今井(写真左、D×P共同代表)。 

 

「実際に社会に出たらこうなんだよ」って言っても、生徒からすれば、「先生は社会出てへんやん」っていう話になるんですよ。

 

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今井 :

今日はよろしくお願いします。

 

飯島 :

京都市立塔南高校で3年生の担任をしています、飯島弘一郎です。よろしくお願いします。

 

今井:

僕と飯島さんがはじめて会ったのって・・・

 

飯島:

2014年の1月です。

最初は朴さん (D×Pの共同創業者) と会って、D×PというNPOがあるということを知りました。
朴さんから、中退の問題とか、引きこもりの問題とか、すごく厳しい問題なんだっていうのを力説してもらいました。そのとき、「近々イベントがあって、代表の今井っていうのが話しますから来てください」って朴さんから言われて。で、行ったら今井さんと会った、という感じです。

お話を聞いた当時は、D×Pは定時制や通信制高校でしか授業をやっていないと聞きましたけど、塔南高校でも授業をやってほしいと思って、「とにかくお願いします。お願いします」って、ダメ元で今井さんにお願いしました。

その頃、塔南高校自体が総合的な学習の時間の使い方を非常に困っていたんです。色々試行錯誤はしてたんですけど・・・。 まさか本当に授業が実現するなんて思っていなかった。(笑)

教員というのは、「学校の先生」という職業しかやった事がないが人が多くて、外の世界を知らないことが多いので、教員が「実際に社会に出たらこうなんだよ」って言っても、生徒からすれば、「先生は社会出てへんやん」っていう話になるんですよ。そこで、たくさんの大人が学校に入ってきて、いろんな話をしてくれるっていうD×Pのプログラムが必要だなって思いました。

 

先生は、全然偉くないんです。

異分野のいろんな大人や知識と生徒を結びつける仕事をするっていうのが、これからのというか、今すぐ求められている教員の姿だと思っています。

 

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今井 :

でも、実際にD×Pの授業を学校に導入するのは、学校の中での調整が大変だったんじゃないですか?

 

飯島:

そうですね。こんな若い教員が外部の人間を学校の授業に入れたいって言い出したのを、よく許してくれたなぁと思います。
ありがたいです。

ちょっと大きい話になるんですけど・・・

「教員はたくさん知識を持ってて、偉くて、教える」っていうスタイル、それ自体がいまはもう崩壊してると思うんです。
すぐ何でもネットで知識を得られるし、ちょっとお金を払えば、プロの授業の動画が見られるし。知識を得る方法は先生に聞く以外にもたくさんあるじゃないですか。教科の知識だけじゃなくて、実際の社会の現状、動きみたいな事について教員より詳しく知っている人が世の中にいっぱいいる中で、全然偉くないんです。先生は。

じゃあ教員は何をするかっていったら、そういう、専門的な立場の人や異分野にいるいろんな大人や知識と生徒を結びつける仕事をするっていうのが、今求められている教員の姿だと思っているんですよ。それを僕はやっているつもりです。

D×Pはキャリア教育の専門家で、実績もあるし、学校に合わせてプログラムを組んでいる。そこをちゃんと認めた上で、専門の方にちゃんとお任せしてお願いする。僕ら教員は、それがうまくまわるようにコーディネートする役まわりなんじゃないか、と。教員は全部を担うことは出来ないんです。

 

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※昨年度の授業の様子。「否定しない」姿勢を全員が大切にしています。

 

「生徒が住んでいる世界の狭さっていうのが、進路について考える事を妨げているな」という感覚があります。

 

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今井:

多様な大人と高校生が関わることを、なぜ飯島先生は大切だと考えているんですか?

 

飯島:

そういう事が求められる社会だからだと思います。

同年代の15〜18歳の生徒と、あとは、教員っていう特殊な職業の人としか普段しゃべらないっていうのは、極めて異常な事だと思っているんです。そんな人たちが急に社会に出てうまくいくわけがないですよね。

気心知れたもの同士のコミュニケーションじゃなく、初めて会った人とか、異分野の人とか、異国の人とか、そういう、多様な人との対話っていうのが大事って言われている中で、高校がこのままでは絶対にダメだって思っているんです。

 

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あと、高校生たちが進路を決める時に、たとえば「どこの大学に行きたいの?」って聞いたら色々大学の名前が出てくるんです。でも、「なぜそこの大学で、こっちじゃなくてそこなのか」という事を突き詰めて聞いたらすぐ答えられなくなる。多分、本当に手に届く範囲の人たち、身の回りに普段いるような人達が口にしている大学名を言っているだけなんですよね。

生徒が住んでいる世界の狭さっていうのが、進路について考える事を妨げているなという感覚があります。

 

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今井:

D×Pの授業は、実際に先生が望んだ結果になっていましたか?

飯島:

うーん。

はじめから具体的な結果をイメージしていませんでした。「いろんな人が学校に来て、授業をやる」っていうのが大事なんだと思っていたので。それはもう、皆さんが教室入ってこられた時点で達成してたってことです。

僕、こういう教育の評価ってすごい難しいと思ってるんです。というのも、僕はたとえD×Pが塔南高校に来ていなくても、生徒たちに、「いまみんなが知っている職業だけが全てじゃないよ」とか言っていると思うんです。だから、どこまでが具体的にD×Pの影響なのか?は、正直わからないところがあります。

でも、D×Pが来てくれたことで、より、生徒たちに話しやすくなりました。「先生はああ言ってるけど、そんなこと言ってるのは先生だけだよね」と、生徒に受け取られてしまうことがなくなりました。「そういえば、キャリア教育で来てくれた◯◯さんが、先生と同じようなこと言ってたな」と受け取られる。説得力が増したというか。これは授業後の良い影響だと思っています。

 

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今井:

去年授業を受けた高校生が、いま3年生になって進路を具体的に決める時期だと思うんですけど・・・3年生の様子はどんな感じですか?

 

飯島 :

生徒の変化としては・・・

いま、AO入試の準備をしてる生徒が増えてきて、そこで志望理由書とかを書いて持ってくるんですけど、スポーツ系の学部を目指している生徒が、「スポーツを指導する際に、技術面の指導、成長だけはでなく、間性の成長を図る為にどのような指導が必要だと考えるか」というようなお題で小論文を書いたのを見せてもらったんです。

そこに「いろんな大人の体験談を聞く」って書いてあったんです。しかも失敗体験談(※)の事が書いてあった。
「うまくいった事じゃなくて、うまくいかなかった話をたくさんしてもらって、社会の厳しさとか、それを乗り越える、克服する事の大切さを学ぶ事で人間性が高まる」と書いてあったんですね。

※「失敗体験談」・・・大人たちが、過去の失敗やトラウマについて高校生に話すプログラムのこと。塔南高校での授業でも行われた。

 

今井:

面白いですね。

 

飯島:

彼自身、失敗体験談を聞いて、社会についてちょっとだけ知って人間性が高まったという気持ちになったんじゃないかなと思いますね。 

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大学を出ても職がない、職を得てもすぐ失う、これからはそんな時代かもしれない。

もしそうなった時に、彼らは自分の軸で判断ができるのか、何のために生きていくのか、意思を持って、主体的に人生を設計することが出来るのか、とても不安なんです。

 

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飯島 :

もう1つだけ、いいですか。

目立たないけれども、実は重大な問題を抱えているのは「真ん中」だと思うんです。

「真ん中」っていうのは、トップ層でもなければ特別な支援も特にない、そこそこ苦労して、そこそこ楽しんで、そこそこやってきたっていう感じの高校生のことで、僕はそういう生徒が、全日制普通科の高校生に多いと感じています。

社会がそこそこ豊かであれば、そこそこの人間が、そこそこに生活して、そこそこに年を取っていく事ができると思うんですけど、きっとこれからはそうじゃない。大学を出ても職がない、職を得てもすぐ失う、これからはそんな時代がくると思う。

もしそうなった時に、彼らは自分の軸で判断ができるのか、何のために生きていくのか、意思を持って主体的に人生を設計することが出来るのか、とても不安なんです。だから、「真ん中」にいる高校生たちを多く抱える全日制の高校でも、D×Pの授業を通して自分の将来を考えてもらうことは、大事なことなんじゃないかなって思います。

 

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飯島先生へのインタビューは以上です。

D×Pのプログラムの導入を考えている先生・学校関係者の皆様は
こちらをご覧くださいませ。お気軽にD×Pにご相談くださいね♪

ECC学園高校(通信制高校)教員の小林先生へのインタビューはこちらより。
合わせてお読みいただけると嬉しいです♪

 

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