「”難民高校生“の居場所をつくる」ーD×P第19回公開型勉強会レポート

 

2014年10月16日に開催された、D×P公開型勉強会。

第19回のこの日は、女子高生サポートセンターColabo(コラボ)の仁藤夢乃(にとう ゆめの)さんがゲストでした。

仁藤さんが立ち上げた「女子高生サポートセンターColabo(コラボ)」では、
居場所のない高校生や性的搾取の対象になりやすい女子高生を”難民高校生”と定義し、
社会との関係性作りや、居場所作り、少女の自立支援活動等を行っています。

colabo(コラボ)は「全ての少女に衣食住と関係性を」という理念を掲げ、2013年3月より活動を開始。
『難民高校生』『女子高生の裏社会』等というご著書も出版されるなど、
自立支援活動以外にも、女子高生に対する様々な活動をされています。

仁藤さんは、まずはご自身の生い立ちについて話してくださいました。
今はこうして”難民高校生”に対する支援をされていますが、
実は仁藤さん自身が”難民高校生” だったと語ってくださいました。


 

■仁藤さんの生い立ちと、活動のきっかけ

私はcolabo(コラボ)という団体を立ち上げて、主に10代の女子高校生を中心に、困っている女の子のサポートをしようという活動を始めました。

高校生時代、私は渋谷の街で一ヶ月のうち25日を過ごす”難民高校生”でした。中学3年生の時に父が単身赴任をすることになり、そこから家庭崩壊が始まりました。当時私と小学6年生の妹と、娘2人を母親が共働きで仕事をしながら生活をするという家庭だったので、夫婦でお互いにぶつかり合う日が多くなって、喧嘩もするようになってしまって。母は母で頼れる人が身近におらず、ストレスが積み重なり、鬱になってしまいました。

そんな家庭環境で過ごしてきた私にとって、”街”での友達たちは、精神的に最後の砦でした。”街”での友達同士の関わりというのは、色んなところで傷ついてきている子が多く集まっていたので、本当に困っている子が多かった。誰かに相談したところで、どうしようもないような問題を抱えている子が多かったんです。そんな街での生活をしばらく続けていたんですが、当時はやりたいことも夢もなくて、高校に通っていたものの、2年生の夏に中退することになりました。

中退後に、高校を卒業せずとも受かれば高校卒業資格がある認定される、”高卒認定試験”という仕組みがあることを知って、それを取得しようと思ったんです。恵まれていたことに、資格を習得するための予備校の学費をおばあちゃんが出してくれたので、習得への道が開けました。その予備校で、私を変えてくれた出会いがありました。それが阿蘇(あそ)さんという、”あるおじいちゃんとの出会い”でした。予備校の中には色んなゼミがあり、阿蘇さんはその中で農園ゼミという、農業をやるゼミを担当していたんです。

私はそれまで土に触れたり、太陽の日を浴びたりする生活なんてしていませんでした。化粧が崩れたり、ネイルに土が入るなんて絶対嫌でした。だけど農園は毎週土曜日に開催していて、泊まることができた。朝までいることが出来たし、居場所がない私にとっては絶好の場所だったので、通い始めました。

阿蘇さんは、ありのまま自分と向き合ってくれた初めての大人でした。高校を中退するだとか、見た目に関係なく、そのまま人間として受け入れてくれたんです。農作業を通して、私と向き合ってくれました。「何をしている時が楽しい?」とか、「将来どうなりたいの?」とか、そういう何気ない会話の中で、自分は今何に立ち止まっていて、将来どうしたらいいのかを一緒に考えてくれました。

農園での出会いを通して、視野が広がり前向きになっていきました。しかし未だにやりたいことも夢もなく、みんなが受験をする高校3年生の時に、私は受験をしませんでした。それを阿蘇さんに相談したら、なんとフィリピンに連れていってくれたんです。その時、18歳の私は初めて海外に行きました。その中で色んな貧困の現場を見てまわったのですが、一番印象的だったのは、日本人向けに接客している風俗店に立ち寄った時でした。中で話を聞いてみると、15歳とか18歳の子が働いていて、しかも日本語を話すんですよね。でも日本の相場と比べると非常に安いお金で体を売っていて。

わざわざ日本語まで勉強をして、なぜそんな少額のお金で体を売っているんだろうと疑問に思ったんです。実際に海外の性産業で搾取されている現場を見て、「これは途上国の問題だけではなく、日本の若者も同じ問題を抱えているんじゃないか」と気づいたんですね。世界にも同じ問題があるんだと気づけたけれど、何ができるのかわからない自分がいて、初めてそこで自分の無力感を感じました。社会について勉強したいと思い、結果的に大学へ通うことになりました。

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■衣食住と関係性がある社会を構成する

私達は、全ての女の子に「衣食住と関係性がある社会」にしたいと思っています。

高校生は、社会的に孤立しやすい存在です。学校と家庭の往復しか関係性がなく、その場での関係が崩れたときに頼りにできるような大人、”第3の関係”のようなものがない子たちは一気に孤立してしまいます。そこに手を差し伸べる大人は、大抵その隙に漬け込むような人たちが多いです。そうやって居場所を失い、少女たちは街へと繰り出していきます。

路上で女の子たちに声をかけるような男性というのは、”少女を買いたい”目的が大半です。だから少女からすれば、「周りにいる大人は自分のことを性の商品として、体しか価値がない」と思っている。周りに助けてくれる大人なんていないと思っています。そうやって、街へと繰り出す少女になくてはならないのに、実際は満たされないでいるもの。それが、団体の理念としても掲げている「衣食住と関係性」です。

衣食住は普通の生活において使用される言葉です。ですが、あらためてどういう意味なのかを考えて頂きたいと思っています。

まずは衣食住の「衣」についてお話します。
私は今の女の子たちは”社会に裸で放り出されているような状態”だと、実際に関わっていて思います。単純に着用できる衣服がないという意味だけではありません。社会的な”衣服”という意味も含まれています。普通に社会で生活をしていると、学歴、知識、教養、マナー、言葉遣いなど、いわゆるコミュニケーション力や、社会的信用を身につけることになります。それらは社会で生きていくための、自身を保護する”衣服”の役割を果たします。きちんと学歴があれば職にありつけることができるし、逆にマナーや教養を身につけていなければ、人と接するようなお仕事は出来ません。しかし、家庭の経済的環境等から学校へ入学すら出来ない子や 大人と接する機会がなく、当たり前と言われるマナーすら習得できていない子もいる。私たちは、少女が社会で生きていくための衣服を着用できる状態にしたい、というのが1つ。

次に「食」について。
実は、今日食べるものがないという子が非常に多いです。家庭の経済状況が厳しい状態にあり、1日1食、コンビニのおにぎりしか食べていなかったり、そもそも誰かと食卓を囲んだことがないという子もいます。そうやって、その日を生きていくのもままならないくらい、「食」の面で追い込まれている子がいます。

そして「住」について。
これはホームレス支援をされている方の間ではよく言われることですが、”ホームレス(家庭喪失)”と”ハウスレス(住居喪失) ”は違います。どういうことかと言うと、一応家族はいて、[箱]としての施設はあったとしても、ネグレクト状態にある子たちの場合、自分を保護してくれるような、その子にとって心から帰れる場所だと思えるホーム(家庭)がない状態では、自立することができません。先生に相談しても「帰れる場所があるでしょ」と一蹴されてしまうことがある。本当は施設にすら入居したいと思っている子でも、「保護未満」という烙印を押されてしまうんです。

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最後に「関係性」について。
「誕生日を祝ってくれる人がいない」とある日気づいた女の子がいて、誕生日パーティーを開いたことがあります。誕生日は祝ってもらうのが当たり前の私たちにとっては考えられない話かもしれませんが、幼少期からそのような体験が一切なければ、祝ってくれるものとさえわからないわけです。誕生日は祝ってくれるものだと気づけるかどうか、その関係性を作れるかどうかが凄く重要だと思います。

そのような「衣食住」と「関係性」が欠如している少女たちは、
今を生きるため、JKビジネスに関わりだしていきます。

 

■JKビジネスの実態と今後

街では、一時期「JKリフレ」と呼ばれる性的サービスを行うお店が流行したことがありました。JKは女子高校生の略で、リフレはリフレクソロジーの略です。体裁上はマッサージ店として営業しているんですが、「裏オプション」と言われるものがあり、少女たちとの交渉次第では過激な性的サービスを受けることができます。

2013年の春にJKリフレの摘発がされたのですが、翌日から「JKお散歩」という新しい業態が出てきました。これは、お散歩の名の通り”観光案内”と称して女の子とお客さんをデートさせるサービスです。これまでJKリフレでは所定の店舗内で行われていたサービスが摘発を逃れるために店舗外へと移り、大変危険な状態になりました。店舗外だとお店の人がいないので、万が一何かあっても守ってはくれないし、なかには強姦されてしまったり、写真を取られて脅されたりするケースもあります。

「今は摘発が進んだから18歳未満が働いているお店はない」と思っている人が結構多いです。だけど、まだまだ私が関わっている女の子には18歳未満で働いている子がたくさんいます。

JKビジネスに関わりだす子のなかには、いわゆる普通の子もいます。特別派手ではなく、何か問題がありそうに見えない子も最近では多く、東京だけで1年間で少なく見積もって、5,000人の女子高校生がJKビジネスで働いていると言われています。去年1年間だけで101人の女の子が補導・保護・逮捕 されていますし、一番多い時で去年、東京だけでJKリフレは80店舗、JKお散歩は秋葉原だけで96店舗ほど存在していました。

JKビジネスで働いている子は、3つの層があると考えています。
1つ目は、家庭の経済的事情があり、やむなく働いている「貧困層」。いつの時代も多いです。
2つ目は、経済的に困窮している家庭ではないけれども、「精神的に色々抱えている層」。
高校生の貧困と子どもの貧困で難しいなと思うのは、このような貧困が親の経済状況と直結していない場合もあるということです。お金には困っていないけれど、寂しくて孤立していたり、親が裕福でもネグレクトな家庭も存在します。
3つ目は、「生活安定層」です。家や学校でも大変真面目で、先生とも仲が良く、4年生大学に推薦で入学が決まるほど成績優秀な子でも、このような業態で働く子がいます。なぜかというと、この子たちは性的サービスである裏オプションがあるとか、性的な被害にあっている子がいるというのを知らない。中にはお店で強姦をされる子もいますが、そのような被害にあった子は一緒に働いている友達にも事情を話さないので、わからない。

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このような状況の高校生をなんとかしたいという想いで、『女子高生の裏社会』というタイトルの本を出版しました。しかし、家庭で複雑な状態にある子だけでなく、世間一般から見ると”普通の子”が、ネット上を通じてそのような性風俗の求人にアクセスでき、実際にアルバイト感覚で働いている。そのような状況を鑑みると、これはもはや裏社会ではなく表社会で起きていることだと言えます。

一方で難しいなと思うのが、裏社会に巣食う 大人たちは、少女をただ売り物として搾取しているだけでなく、「ニセのセーフティーネット」としての役割も担っているということです。街で浮浪している少女を見かけると、「こんな時間に出歩いていたら補導されるから危ないよ」「うちに来なよ」と言って、事務所やマンションに泊めてくれます。皆さん、そういう子がいたら少女を泊めてあげられますか?普通であれば泊めてくれないですよね。だけど、この人達は泊めてくれるんです。中には家まで借りて用意してくれる大人もいます。

さらには受験に向けた学習支援をやっているようなお店もあります。今のJK産業の実態を言うと、18歳未満の少女が街中で堂々とチラシを配っていると、東京の場合だとすぐに補導されてしまいます。そこで、予約が入った時のみ女の子が外出するという仕組みになっており、その待機時間に、”自称東大”や”自称早稲田”の大人が、学習の支援をしてくれるお店です。周囲に大学を卒業したと言う大人がいない少女の場合だと、大人の目的が労働による搾取であっても、非常に重要な関係になってくるんです。

こうした「ニセのセーフティーネット」は、他の支援活動をしている団体と比較して、もっと具体的に、物理的に少女に必要なものを与えています。そこが少女たちの居場所になっていく。このようなJK産業ビジネスの店長や従業員は、ある意味、居場所づくりのプロだと言えます。そのために居場所づくりのプロとして、またどれだけ少女たちに暴言を吐かれても諦めない「おじさん」や「裏社会」を見習い、支援に生かしていきたいと思っています。

困っている女の子に漬け込んで、そこから何かを奪ったり、その子を苦しめるような社会ではなく、支えたい、守りたい側の大人たちももっと関われるような社会にしていきたい。そこで、関係性の貧困に喘ぐ少女を救うため、女の子たちが気軽に立ち寄り宿泊できる施設をこれから作ろうとしています。とにかく日本では、そういった家出少女たちが宿泊できる施設がありません。そのような少女たちは未成年が大半のため、24時間営業の飲食店や居酒屋には入店できないことも多くあります。路上にいても危ない。だからホテルのような施設に行き、見えなくなってしまう。そういう子たちが駆け込める場を作って、そこから色んな支援に繋げていきたいと考えています。


 

 

(当日、新幹線の発車時刻が迫っていた仁藤さんでしたが、ギリギリまで参加者の皆さんと直接お話しされていました)

講演の中で、仁藤さんは、
「高校生は社会的に孤立しやすい存在であり、
頼りにできる大人がいなければ、一気に居場所を失ってしまう」
と指摘されました。

NPO法人D×P(ディーピー)で支援している通信制高校に通う生徒たちも、
まさにそのような「関係性の貧困」のなかにあります。
高校生の多くは、家と学校の往復が中心の生活を送ります。
だからこそ、家と学校に自分の居場所がないとわかると、
「生きることがつらい」と感じてしまい、
あてもなく街へ繰り出す高校生もいれば、自室に引きこもってしまう高校生もいます。

通信制高校に通う生徒たちは、「それでも高校の卒業資格はとっておいたほうがいいから」と、
定期的に登校せずにすむ通信制高校を選び入学しますが、
登校機会の少ない通信制高校で先生や同級生と信頼関係を築くことは容易ではありません。

そして、通信制高校で高校卒業資格はとれても、
卒業生の2人に1人が進学も就職もしないまま卒業していきます。

仁藤さんは、高校生を利用しようとする大人たちからも学びながら、
支援の方法を模索されています。D×Pスタッフもそんな仁藤さんの姿勢から、
日々の通信制高校での授業運営について考えさせられました。

仁藤さん、この度はありがとうございました!


 

NPO法人D×P(ディーピー)では
今後も定期的にこのような勉強会を開催していきます!
最新の公開型勉強会の開催情報は、こちらから。

■ゲストプロフィール:
仁藤夢乃さん
女子高生サポートセンターColabo代表
1989年生まれ。中学生の頃から「渋谷ギャル」生活を送り、高校を2年で中退。その後、ある講師との出会いをきっかけに農業、国際活動に触れボランティア活動をはじめ、明治学院大学に進学。在学中には高校生を対象とする国際支援のファッションショーを成功させた。
東日本大震災後、「Colabo」を立ち上げ、被災地の高校生・地元企業と開発した支援金付大福は、発売3カ月間で3万3700個売り上げた(現在も販売は続いており、計15万個近く販売されている)。
2013年3月、『難民高校生』(英治出版)を出版。
現在、声を上げることのできない少女たちの声を聴き、「居場所のない高校生」や「性的搾取の対象になりやすい女子高生」の問題を社会に発信するとともに「若者と社会をつなぐきっかけの場づくり」事業を展開し、少女たちの自立支援を行っている。

WEB:http://www.colabo-official.net/
Twitter:@colabo_official
Facebook:https://www.facebook.com/colabo.official

【著作】
難民高校生:http://urx.nu/df09
女子高生の裏社会:http://urx.nu/deZQ

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「「難民高校生」って?少女たちに手を差し伸べる仁藤さんの活動に迫る『ハートネットTV』MCは風間俊介と安藤桃子」
(日刊アメーバニュース 2014年09月01日)

 

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