お知らせ

【日本語訳つき】「否定しないチカラ(The Power of Acceptance)」共同代表朴のTEDxAPUでの講演動画が公開されました。


2014/6/22に、共同代表の朴基浩(ぱく きほ)が
TEDx(テデックス)APUにて講演を行いました。
その講演時の様子が、動画共有サイトYoutubeに公開されましたのでお知らせします! 

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講演のテーマは、「否定しないチカラ」。 

※英文は”The Power of Acceptance”(直訳は「受け入れることの力」)

「否定しない」は、NPO法人D×P(ディーピー)が
最も大切にしている価値観です。

幼少期から否定され生き続けてきた共同代表の朴と、
イラク人質事件をきっかけに大量のバッシングにあった共同代表の今井が
それらの「否定」すら、「否定してはだめだ」と考え、
D×Pは団体として「否定しない」ということを大切にしていこうと決めて
通信制高校生に対して授業を始めました。

それから、D×Pのボランティアやスタッフが増え、
授業できる場が増えていっても、
この言葉は変わらずD×Pのそばにあります。

 でも、この「否定しないチカラ」とは一体何なのか?
「否定しない」によって、一体何が起きるのか。
「否定しない」なんて単純なこと、誰でもできるのではないか?

 朴が15分のスピーチで自身の経験を踏まえ、語ってくれました。

 

実はこの時、朴は英語でスピーチをしました。
「日本語訳がほしい!」というご要望にお応えし、以下に日本語訳を掲載しました。
よろしければ、動画とセットでお読みいただけたら幸いです。 

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みなさん、こんにちは。みての通りこの会場もすごく緊張の糸が張り詰めているのと思うのですが、心配しないでください、スピーカーの待合室もここと同様にすごく緊張の糸が張り詰めていました。(笑)

そんなことはさておき、私は朴基浩(ぱく・きほ)と言います。日本の大阪にあるNPO法人D×P(ディーピー)の共同代表をしています。このD×PはDream(夢)とPossibility(希望)という意味があります。私たちの団体は、若者支援と呼ばれる分野で特に高校生の支援をしています。

ひょっとしたらお気づきかもしれませんが、私はこの素晴らしい大学APU(立命館アジア太平洋大学)を2011年に卒業しました。一方で2010年に今の団体の活動を始めました。そうです、大学在学中にNPOの活動を始めたのです。たぶん、ほとんど毎日ある山の霧と時々ある晴天がこの活動を始めるアイデアをくれたのかな、なんて思っています。(※注:APUは山の上にある大学で、日々霧が立ち込めています)

さて、今日皆様に、とあるアイデアをシェアするためにここに立っている訳ですが、そのアイデアをシェアする前に皆さまに一つ質問をしたいと思います。

「みなさんにとって最も印象の強い幼少期の思い出はなんですか?」 

ちょっとご自身で考えていただいてもよいですか?
たぶんそれはご両親と遊んだかけがえのない思い出だったり、友人といつも遊んだりした素晴らしい思い出だったり、時には勉強をたくさんしないといけなかったという辛い思い出もあるかもしれません。

私にとって、もっとも印象の強い幼少期の思い出は、他人に否定されたことでした。

私はこの日本という国に在日朝鮮・韓国人3世として生まれました。それは、私自身が日本も韓国もどちらの社会にも属さないという立場でした。そのような歴史的な背景があったからか、当時の周りの大人はいつも私にこういいました。「基浩(きほ)、この社会を信じちゃだめだよ(自分の頭で考えるんだよ)」その時なぜ彼らが私にそんなことをいうのか全く理解できませんでした。ショックすぎて信じることができませんでした。

そんな中でも、私は自分自身の未来に対してとても好奇心旺盛な小学生でした。ある時、私はこんな風に思いました。「そうだ、国と国の間にある問題を解決するために外交官になろう」と。そしてそれを小学校の先生に伝えると、

「基浩、それは無理だよ。だってあなたは日本国籍を持っていないじゃないか。」

否定されたのです。私が日本の国籍を持っていないから外交官になれない、その事実にただただショックでした。こうして私の夢は一瞬にして壊れたのです。でも当時の私はそんなことであきらめるくらいヤワじゃなかった。だからまた先生に聞いたんです。

「先生、僕は哲学を教える先生になりたいです」と。

すると、先生はまたもや

「基浩、それは無理だよ。だって、日本の国籍を持っていないじゃないか。」

私はこの時も完全に否定されたのです。この会話で私が得たものはなく、自信と希望を失い、自分自身がどのように進めばよいかわからなくなったのです。私はこの時初めて「否定」のチカラを経験しました。

こんなふうに多くの大人に「否定」され続けたのですが、それでもこの社会で「成功」するために私は私立の高校(進学校)に入学しました。みなさんもご存知の通り、日本では「成功」するためにはたくさん勉強することが当然だとされています。で、問題はここでもまた「否定」のチカラを経験したということだったんです(笑)幼少期と変わらず自分の未来に対して好奇心旺盛だった僕はかなり早い段階から自分のキャリアについて考えていました。そしてある時、高校の先生に、とある大学に入りたいと言ったのです。

すると先生は、
「ありえない。無理だよ。君には入れないよ。そもそも今の自分の成績をわかってる?君はそんな頭がよくない。」
と一蹴されたのです。

一蹴されたものの私はあきらめず、また先生にこんな風に尋ねました。「先生、僕はアートの感覚にたけているとおもう。だから、アーティストになろうと思っている。」

すると先生は、
「あぁ、ならないほうがいいよ、アーティストには。だって、アーティストになってもまともなお金を稼げやしないんだから。」 

“アーティストは稼げない“なんて事実は僕にとってはどうでもよかったのに。周りの大人たちは、どんなときも否定することから始めていることに気づきました。そんな会話と経験からどんな大人も信じることができなくなり、一方で全く私とちがう新しい人に出会いたいと思い始めました。そして、自分自身で高校を中退する決断をして、アメリカに留学しました。

素直に、アメリカでの生活は素晴らしいものでした。私は決して「(日本が最悪で)アメリカが最高だ」なんて言うつもりはないですが、アメリカでの生活は可能性を感じることができて、自信をもつことができるものでした。

それはすべて「否定しないチカラ」によるものでした。

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アメリカにいたときの「否定しないチカラ」を象徴する出来事を紹介しましょう。私はアメリカの高校でアメリカ政治の授業を履修していました。すごく難しい授業でした。そして、そのクラスである出来事がおきました。

アメリカ政治を履修しているクラスメイト全員は、教師の教え方に不満を持っていて、ある時その不満を教師にぶつけるという行動をとりました。もしこれを日本でやっていたら結果は容易に想像できます。もし日本でそんなことをしたら先生は怒るでしょう。だからこの時アメリカ政治のクラスメイトがとった行動を信じることができませんでした。日本だったら、「誰にそんなことを言っているんだ。ここから出て行きなさい」なんてことを言われるかもしれません。

でもこのときアメリカ政治の教師は違っていました。

「わかりました。あなたたちの提案を受け入れます。」

「じゃあどうすれば私たちはクラスを変えることができますか?

来週までにクラスを変えるための代替案を持ってきてください。」

教師がそのように言ったのです。私はこのとき「否定しないチカラ」の強さを経験しました。私たちはクラスを変えるための代替案を提示しただけではなく、この一連の出来事で自分たちが成長できたことに気づきました。

アメリカの生活を経て、私はある気付きを得たのです。私は今まで人から否定され続けたことで、私は、自分に自信を持つことができませんでした。そして、幸か不幸か、私は否定される経験を、他の人にも与えていたということに気づいたのです。(その気付きは、高校時代のうちに気づくことができて幸せでもありましたが、当時の私にとっては悲しい気付きでもありました。)私は「否定するチカラ」を他人に使っていたのです。それに気づき、私はまずは自分が人を否定しないことから始めようと行動し始めたのです。

そんな素晴らしいアメリカでの経験を経たのちに、私はこの素晴らしいAPUという大学に入学しました。おおげさではなくて、APUという大学は本当に素晴らしく、いつも新しい人に出会え、山のてっぺんで友人と会話ができる(笑)、そんな素晴らしい大学だったんです。多様性にあふれていて、この大学ではお互いがお互いを尊重していました。 

そんな素晴らしい大学でも、ある問題に出会いました。ある時、私は4年生の友人と話していたのですが、会話の中で彼がこんなことをいったんです。

「基浩、今年の1年生をみた?なんか今年の1年生、微妙だよね。」

これって普通の会話でよくあると思うんですが、僕は違和感を感じたんですね。「え?それどうやってわかったの?全然話したことないのに、なんで彼らが微妙だと言えるんだよ。」と。

そんな会話があってからか、私は1年生が主役になって自分のやりたいことや目標や夢をシェアできる場をつくりました。そのイベントが始まったばかりの頃は、1年生は全く話すことをしませんでした。なぜなら彼らは今までの人生で「否定のチカラ」を経験し続けていたからです。(自分のやりたいことを話しても、否定されてきたんですから。)でも私たちは彼らを勇気づけ、否定しないことで彼は少しずつ自分の夢や目標を話すようになりました。

そんなイベントの経験から僕はこんなことを考えたのです。

「たぶん、この日本社会ではこの【否定しないチカラ】が必要だ。

私たちは否定するという行為にあまりも慣れてしまっている」

その想いが今のNPOの活動を始めるきっかけになったのです。

ところで、今日僕が着ているこのTシャツが見えますか?あ、心配しないで、このTシャツは今日の話と関連がありますから。笑 見えますか?これおしゃれでしょ?これ誰が作ったかわかりますか?え?僕じゃないですよ。もし僕が作っていたら言いませんよ。笑 誰が作ったかわかりますか?高校生がこのTシャツを作ったんです。いいでしょ。

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(そのTシャツがこちらです。2014年5月に期間限定で販売されました)

以前に、私たちNPO法人D×P(ディーピー)のプログラムに参加してくれた高校生が作りました。私たちは普段はキャリア教育プログラムを高校生に届けています。そのキャリア教育プログラムは、高校生が自分に自信を持ってもらうためのものです。このTシャツを作った生徒の話をしましょう。初めて私たちの授業に参加してくれたとき、彼はいつも下を向いていました。彼は中学のときに不登校でした。そんな彼がプログラムの最中にぼそぼそっとこんなことを言いました。

「絵をかくのが好き」と。

 そんな彼の言葉を私たちは見逃さず、「お、本当に?じゃあ来週絵をもってきてよ。」と言いました。そして彼は実際に絵を持ってきて、私たちは彼が描く絵がプロのものと見紛うほどのクオリティであることに驚きました。私たちは、彼に勇気づけ、そして絵の能力を認め続けました。結果として、彼はこのTシャツをこのように作ったのです。信じれませんよね。

もしあなたが日本で生まれ、育っていないのであれば、こう言うかもしれません。
「なんで、学校に行かないことがそんなに問題なの?」と。

日本社会は私たちに「正しい道」を求めます。もしあなたが学齢期でありながら学校にいっていない場合は、社会の一員としてみなされず、時には欠陥のある人だとみなされることさえあります。

このTシャツをつくった高校生が、ただ学校に行けないだけで、社会によって否定されるというのは非常に残念なことです。だから私はより強く感じたのです。この「否定しないチカラ」は高校生に自身を与え、自分自身の未来に希望を持つ力を与える、と。そうです、これが「否定しないチカラ」についてのお話です。 

みなさんはこの話を聞いて、「基浩、あなたのアイデアはわかったよ。でもそれってあまりにも非現実的で単純すぎない?」と思うかもしれません。そうです、これは非現実的で単純なものであると同時に、実践するのは非常に難しいものでもあります。

だから、ここで私はみなさんに実生活で使うことのできる「否定しないチカラ」を実践する方法をお伝えしたいと思います。あなたがまずできることは、他人から受け取ったものを否定せずにまずは受け取ってみることです。それは普通の会話においてでもできるかもしれません。

皆さん、この「否定しないチカラ」を今から24時間使ってみませんか?

このチカラを使って、まずは他人を受け入れるということを

まず今この瞬間から24時間やってみませんか?

 

このチカラは自信のなかった高校生に自信を与えました。

そしてこのチカラは私たちの社会に大きな変化をもたらすことができます。

 

最後にひとつ皆さまにお伝えしたいことがあります。

私たちが自分たちにとって共に助け合う社会を創っていくためには、まずは私たち一人ひとりが、誰かを受け入れることからはじめることです。まず、今この瞬間からやってみませんか?今こそこの素晴らしい「否定しない」のチカラを使うときだと思います。

そうです、次はあなたが始めるときです。

 

 

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