悩みながらも今を楽しそうに生きてる。高校生にとって、僕がそんなふうに見えたらいい – コンポーザーインタビュー第7弾 北川琢也さん

 

D×Pで活躍するコンポーザーへのインタビュー企画第7弾!

今回は、大学の通信課程で教員免許取得を目指しながら、
コンポーザーとして数多くの授業に参加してくれている
北川琢也さん(以下、きたやん)にお話を伺いました。

「あの子には幸せに生きていってほしい」

ーーまずは簡単に自己紹介をお願いします。

きたやん:北川です。大学を卒業後、会社の営業職、大学職員を経て、現在は大学の通信課程で教員免許の取得を目指しています。

 

ーーD×Pのコンポーザーを知ったきっかけは?

きたやん:大学職員を辞めて、通信制の大学で教員免許を取得しようと考えていた時に、たまたまTwitterでD×Pのコンポーザー募集の投稿を見たんです。たしか、働いていた大学の先生がリツイートしてて。

その時はすでに教育関係の道に進もうと考えていたので、「実際高校生と関わるってどんなんやろう?」って思って。先生になる前に生徒と関わる機会が欲しくて、コンポーザーの説明会に参加しました。

小・中学生と関わるなら、学習支援のボランティアとかあるんですけど、高校生と関わる機会ってあまりないなって思って。それがD×Pのコンポーザーを選んだ一番の理由です。コンポーザーは勉強を教えるわけじゃないから、今の自分でもできるので。

 

ーーなぜ仕事を辞めてまで、教育関係に進もうと思ったんですか?

 

きたやん:大学の時から、いつか先生になりたいと考えていたんですけど、きっかけは会社員時代に出会った1人の高校生です。

僕にとって、営業の仕事はかなりしんどかった。職場で上司から罵声を浴びたり、ノルマが厳しかったり。ノルマをこなすためにお客さんに無理をお願いするのも、「意味あるのかな」って思っていたし、それが一番しんどかった。あまりにもつらくて、もう仕事を辞めたかった。でも辞める勇気もなくて、いつしか「死にたい」って思うようになりました。

その高校生と出会ったのも、僕がしんどくて「死にたい」って思っていた時期でした。営業先の会社で、お客さんから預かったお金を数えてる時、道路に面したその会社の窓の向こうからチャリンコに乗った高校生が笑いながら手を振ってきたんですよ。見ず知らずのその子に、僕も何か返したかった。でもお客さんを前にして手を振り返すこともできず、なんとか変顔で返しました。そしたらその子、すごく喜んでくれて。爆笑で(笑)その子はそのまま、また手を振って去って行きました。

名前も、学校も知らない男の子だったけど、僕はその時「あの子には幸せに生きていってほしいな」って、なんとなく思ったんです。この壁一枚隔てた場所にいる彼がこっち側に来た時(大人になった時)、僕みたいに「しんどいな、死にたいな」って思ってほしくない。今のような笑顔で、楽しく幸せに生きててほしいなって、その時思ったんです。

不思議な出会いですけど、今でもあの時の気持ちが教育の道を志す一番の原動力になっています。

 

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今の自分を肯定的に受け入れている自分でありたい

ーー最初の授業はどうでしたか?

 

きたやん:定時制の高校生と関わるのは初めてだったんですけど、行ってみたら「わりと普通やん」って感じでした。自分が高校生だった時と変わらない。だから普通にしゃべっていました。

でもある時、1人の生徒が「したいことはあるけれど、自分はクズやからできひん」みたいなことを言ってたんです。そこまで自己否定するんやなって思って。「へえ、そうなん、できひんのかな」って返すんですけど。それは印象的でした。

去年、ある定時制高校の1年生の授業に入ったときは、みんなお互いあんまり話さないクラスで。初回、教室入った時の張り詰めたというか、殺伐とした空気が印象的で。「やってけるんかな」って思いました。授業始まっても、なんかしんどいんかずっと寝てる子もいたり、それまでは着席してるんですけど、僕らが来たら毎回パッと出ていく子とかいたりして。だからといって積極的にこうしたということもなくて、いつもと変わらず接したって感じですけど。でも4回の授業を通して、最初喋らなかった子も、ちょっと喋るようになったりとか。たまに顔を上げてくれる子もいたりして。

 

ーー先日ちょうど、その高校で今年度の1年生の授業がありました。今年の1年生も、去年の学年と似たような雰囲気でしたね。その時すごく印象的だったのが、去年授業を受けた生徒たちが、D×Pのスタッフとコンポーザーの控え室に次々と顔を見せに来るんですよ。

 

きたやん:へぇ~。そうなんや。それは嬉しいですね。この前もD×Pのスタッフとコンポーザーでその学校に行って、久々に会う生徒たちとゲームで遊んだり、おしゃべりできて。あんな風に授業が終わった後も関われる機会を持てるのはよかったですね。

 

ーー高校生と関わる時に心がけていることはありますか?

 

きたやん:「今の自分を肯定的に受け入れている自分でありたい」と思っています。昔ちょっとしんどいことがあったけど、悩みながらも今なんか楽しそうに生きてる。生徒にとって、僕がそんなふうに見えたらいいなって思います。

僕が高校生くらいの時に関わった大人の話の内容って、正直あまり覚えてないんですよね。でも「こんな顔で喋ってたな」とか、「楽しそうやったな」みたいなことは、ふと思い出す。僕が授業で話すことは、生徒たちにとって今すぐ役に立つことではないかもしれないし、話の内容もすぐに忘れられるかもしれない。でも、ちょっとしんどいなって思った時に、「そういえばこんな人いたな」とか「あの人ちょっと楽しそうだったな」とか、思い出してもらえるかもしれない。それは5年後でも10年後でも、もっと先でもいいんです。そうしたら、僕もすこしは役に立ったかなと思えるんです。

 

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授業後に生徒が4人くらい集まって来て、「きたやんを励ます会」みたいなのが始まって…

ーーお住まいの滋賀から大阪や京都の学校に来ていただくのは大変じゃないですか?

 

きたやん:しんどい時もありますね。授業が終わって夜10時半に高校を出て、家に着くのは0時過ぎていたりすることもある。それでも、なぜか行きたいって思うんですよ。

 

ーーなぜ行きたいって思われるんでしょうか。きたやんはこの1年4ヶ月で6回のクレッシェンドに参加してくれていて、すごい回数だと思ってます。

 

きたやん:割と楽しかったっていうのがあるんじゃないですかね。普通に高校生としゃべって、「あぁ、こんなこと考えてるんや」とか思ったりして。コンポーザーやってみたら「なんか面白かった」っていう、ただそれだけです。だから、もっといろんな学校に行って、たくさんの高校生と会ってみたいと思うようになりました。

楽しくなかったらコンポーザーは続けられないです。「支援」とか、「してあげる」とかじゃなくて、普通にしゃべるって感じだから楽しいんだと思います。授業中に僕が高校生に悩みを相談することもあります。そしたら授業後に生徒が4人くらい集まって来て、「きたやんを励ます会」みたいなのが始まって…。

 

ーー(笑)

 

きたやん:高校生が僕の恋愛相談に乗ってくれて、「大丈夫やって、きたやん!」って、励ましてくれて。

この前も、久しぶりに会った生徒に「この1年でどれだけ成長したん?」とか聞かれて、「あんまり成長してないかなぁ」って答えたら、「なんなんそれ、あかんやん!」って突っ込まれたんです。「そうかなぁ」なんて答えたりして。でも、そういう瞬間がけっこう心地よかったりして、すごく嬉しくて、好きなんですよね。コンポーザーは「してあげてる」わけじゃない。まぁ、普通の人と人の関わりかな。

 

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高校生にイラっとすることもある。でもそれはそれで、いいのかな。

ーーコンポーザーをやっていて、つらいことはないですか?

 

きたやん:つらいことはないんですけど、高校生に対してちょっとイラっとしたことはありましたね。授業で初めて一緒のグループになった生徒がいて、僕のことがあまり気に食わなかったみたいで、いろいろと言われて。「なんやねん!」って、ちょっとイラっとしたことがあります(笑)でもそれはそれで、いいのかな。

 

ーーそれ、面白いですね。支援者の立場というか、大人モードで高校生と関わっていたら、それでイラつくことはないんじゃないですかね。

 

きたやん:なるほど~。そうかもしれないですね。年齢も少し離れていて、お互い環境も違うけど、若干つながっているというか。相手と対等でいられる、そういう時間が好きですね。

僕は今、教員免許を取ろうとしてるけれど、先生と生徒の間にはちょっと隔たりがあるように感じます。だけど、先生と生徒という立場の問題はあっても、基本的には1対1の人間同士じゃないですか。実際に先生になると、コンポーザーと生徒のような関係を築くのは難しいのかもしれない。それでも、お互いのことを分かり合えるようにしていくのは大事なのかなって感じています。

 

ーー今のきたやんにとって、D×Pはどんな場所ですか?

 

きたやん:一つはいろんな高校生と関わることができる場。だから毎回参加しています。もう一つは、自分自身が社会とつながれる場所です。いろんな生徒もいるし、いろんなコンポーザーとも出会えて、そこで得るものがある。特に僕は通信制の大学生ということで、人と関わる機会、社会と関わる機会が少ないんですよ。だから僕は、ちょっとずつでも自分が社会とつながっていることが嬉しいんです。

 

 

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インタビュー:荒木雄大・西村美穂(D×Pインターン広報スタッフ)
文責:荒木雄大


インタビューは以上です。

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